◯鮮度が命、加熱厳禁
地下4階、旧大江戸線のホーム。
そこは完全に地底湖と化していた。天井の蛍光灯跡には発光するイソギンチャクが張り付き、幻想的かつ不気味な青い光を落としている。
「おーっと、レアアイテム発見!」
それまで静かにしていたピエロ野郎、ジョーカーが声を上げた。
彼は水没した自動改札機の上に乗り、何かを引っ張り出そうとしている。
「ジョーカー、何を見つけた? どうせロクなもんじゃ……」
「見てよボス! 『駅長室の鍵』だ! これがあれば隠し宝物庫に行けるぜ!」
ガコンッ!!
ジョーカーが鍵を引き抜いた瞬間、駅構内にけたたましいブザー音が鳴り響いた。
『不正乗車を検知しました。排除プログラムを起動します』
「お前なぁぁ! なんで鍵抜いただけでセキュリティが作動すんだよ!」
「バグだね! クソゲーにはつきものさ!」
ゴゴゴゴゴ……!!
地響きと共に、ホームの水面が大きく盛り上がった。
現れたのは、電車数両分はあるであろう、長大な影。
透き通るような白い肌。鋭い牙の並ぶ口。そして、電気を帯びて発光する触手。
『メトロ・リヴァイアサン』のお出ましだ。
「ギャアアア! ヌメリ! 最悪のヌメリ系モンスターよ! 粘液の中に細菌が何億個いると思ってるの!?」
シルヴィが発狂し、杖を突き出した。
「近寄らないで! 『アブソリュート・フリーリーズ(絶対凍結)』ッ!!」
カキィィィン!!
シルヴィの放った冷気魔法が、リヴァイアサンの表面を一瞬で凍らせる。
だが、巨大すぎて全体までは凍らない。怪物は怒り狂い、帯電した触手を振り回した。
「ナイスよ、シルヴィ!」
リズが叫んだ。
「お刺身は温度管理が命! 表面を瞬間冷凍することで、身を引き締め、寄生虫(アニサキス的なサムシング)を殺菌する! 完璧な下処理ね!」
「ちげーよ! あいつはただ細菌が怖かっただけだ!」
リズは俺のツッコミを聞かず、凍った水面をスケートのように滑走した。
「いい? みんな! 今回のオーダーは『お造り』よ! つまり――」
彼女は中華包丁を逆手に持ち、巨大な怪物の懐へと飛び込む。
「――絶対に『火』を通すな! 爆発魔法も禁止! 斬撃と打撃のみで、生きたまま解体るわよ!」
「無茶言うな! あいつ、全身から高圧電流流してるぞ!」




