〇踊り食いならぬ「踊り焼き」
自分の尻尾を勝手に味付けされたサラマンダーは激怒した。
全身のマグマを再び赤熱させ、装甲を溶かしながら体当たりの構えを取る。
「グルァァァッ!!」
「お怒りだ来るぞ! 総員回避!」
オレが叫ぶが、リズは逃げない。
むしろ、中華包丁を舐め回すように見つめ、待ち構えている。
「いいえ、逃げないわ。……極厚ステーキの完璧な焼き加減は『ミディアム・レア』。そのためには、あいつ自身の暴力的な熱が必要なの!」
地響きを立ててサラマンダーが突進してくる。
リズは、足元に転がっていた巨大な平たい溶岩石(2畳ほどあるプレート)に対して足を使いテコの原理で持ち上げさらに蹴り上げ溶岩石を立てかけた。
「『鉄板防御』!」
サラマンダーの突進を、溶岩石を盾にして真正面から片足で受け止める。
「「「いや絵ズラおかしいだろ!!」」」
凄まじい摩擦とサラマンダーの体温により、石が一瞬で赤熱していく。
リズの狙いはこれだ。敵の体温を利用して、即席の超高温溶岩石ホットプレートを作り出したのだ。
「熱が通ったわね! 一丁上がりッ!」
リズは盾にしていた赤熱する溶岩石ごと、サラマンダーを押し潰す勢いで蹴倒すとサラマンダーはその倒れ込む溶岩石から逃げた。そして溶岩石のうえになんとなく尻尾を乗せた刹那、
「今よッ !!」
尻尾を分厚いステーキに切断した。
ジュワァァァァァッ!!!
鼓膜を焼くような香ばしい音。そして、暴力的なまでに食欲をそそる肉の焼ける匂いが火口に充満する。
サラマンダーは自分の尻尾が最高に美味しそうな匂いを立てて調理されていることに脳の処理が追いつかず、完全に動きを止めた。
「トドメよアッシュ! 眉間を撃ち抜いて! 尻尾以外はスジっぽくて不味いから、木っ端微塵に爆散させてもいいわ!」
「食材以外への扱いが雑すぎだ!」
俺は狙いを定め、特殊ライフルの引き金を引いた。
『徹甲氷結弾』。
シルヴィにありったけの魔力を込めてもらった特製弾だ。
弾丸はサラマンダーの眉間の鱗を貫き、脳幹と中枢神経を一瞬で絶対零度に凍結させた。
巨獣が崩れ落ち、火口に静寂が戻った。
残ったのは、赤熱した溶岩石の上でジュウジュウと暴れるように音を立てる、巨大な尻尾のステーキだけだった。




