8.王妃陛下とのお茶会
ありえない……どうして王妃様からお茶会のお誘いがあるの。美しい手紙には、久しぶりに会いたいと書かれている。
本当に権力なんて大嫌いっ!
「久しぶりね、リーゼ。来てくれて嬉しいわ!さぁ、座って?あなたの好きなお菓子を用意したのよ」
王妃陛下は変わらず美しいままだ。
厚顔だと思える殿下ですら少し窶れていたのに。
「ありがとうございます。私などをこのような席にお招き下さり感謝申し上げます」
「まぁ!そんなに堅苦しくしないでちょうだい。私とあなたの仲じゃない」
どんな仲でしたっけ。怖いわ、この方も魔法のせいだから属性なの?貴方自身は掛かっていないのに。
「懐かしいわ、少し前まではこうやって一緒にお茶を飲んでいたのに。貴方がいないととても寂しいのよ?」
「そのように仰って頂けていて光栄ですわ」
情に訴える作戦なのね。キッツいわ……
これ以上会話をしたくなくて仕方なくお菓子をつまむ。ん~、美味しい。
「ふふ、本当に美味しそうに食べるわよね。
今でも覚えてるわ。「すごく嬉しそうにお菓子を食べてて可愛かったんです!」ってあの子が目をキラキラさせながら教えてくれたの。
貴方の笑顔が大好きなのよね、昔から」
現在進行形ですか。言い間違えたのかな。
何も無かったかのようにお菓子を食べ続ける。
「リーゼ、そろそろあの子を許してあげられないかしら。だって魔法のせいなのよ?」
あらあら、失礼金髪と同じことを言ってるわ。
魔法のせい魔法のせい魔法のせい。
いいな、私もそんな最強呪文が欲しいわ。なぜ国で2番目の権力者がそんなものを手にしているの。
「申し訳ありません。私では王子妃は務まりません。
私は一年もの間、殿下の行動を諫めることが出来ませんでした。殿下の寵愛が他に移っただけで、学園中から見下されました。それを私は悲劇の主人公のようにメソメソと受け入れていたのです。それは殿下の婚約者として、あってはならないことでした。
ようするに、私は殿下に見合う人間では無いということです。王子妃教育を受けさせて頂いたのにお詫びの仕様もありません」
悲劇のヒロイン病から目覚めて気が付きました。学園中が私を貶めたのは、自分のせいでもあったのだと。
だって、愛こそすべてかのように負けを認めていたのですもの。本当なら愛は無くても婚約者として堂々と行動するべきだったのよね。それで変わったかどうかは分からないけど。
「まぁ、そんなことを言わないで。貴方はまだ若いのだし、未熟だったり間違いがあっても仕方がないのよ?」
……私が悪いところもあったと思ったけど、まったく否定されないのもどうなの。なんだか私が一人だけ悪かったみたいじゃない。
普通は、いいえ、すべては息子が悪いのよ!と言うところでは?
「……いえ、私などより素晴らしい女性はたくさんいます。良い御縁があるよう祈っていますわ」
もう勘弁してほしい。早く帰りたいです。
「ようするに、あの子を許す気はないということかしら。どうなの?はい、か、いいえ。この二つ以外の言葉はいらないわ」
……脅すの?私が殿下を許さないと言える?
「……マルティナ様に心変わりされた事ならば、許しますわ。だって魔法のせいですもの」
「まぁ、よかった!これで解決ね?」
「ですが、それ以外の事は分かりません」
「……なんですって?」
こわ!怖いです!でもここで負けたらまた婚約者にされちゃうっ!
「魔法は魅了なのですよね?だからマルティナ様を好きになった。そこまでは理解しました。だから許せます。
ではそれ以外の変化は何のせいですか?
殿下がマルティナ様を愛されてから、まず最初に私に言ったことをご存知ですか?他の人を好きになったことの謝罪ではなく、愛を望むな、姿を見せるな、話し掛けるな。そんな言葉でした。
その後は話し掛けても無視されました。マルティナ様を虐めているという噂を信じ、私を叱りつけました。
そしてあの日、空っぽの頭を地面に擦り付けて詫びろと言われました。言う事を聞かなかった私の腕を捻り上げ、頬を殴り、髪を鷲掴み、無理矢理頭を下げさせられました。あまりの勢いに私は額を打ち付け、血が流れました。それを見ながら、こうやって頭を下げるんだ、と満足そうでした。
これらもすべて魅了魔法のせいですか?
もちろんしっかり調査なさったのですよね。魔法の性質を。
教えて下さい。魅了魔法とはあんなにも人を残酷にさせるものなのですか?」




