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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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それぞれの決断

「以上でシニチが残したデータは終わりだね」


 (さい)大佐がモニターの電源を切った。


「簡単には信じられない内容だよ。でも、あの恐ろしかった福山少佐が本気で残したデータだから、本当の事なんだろうな……」

「どうするんだ? 聞いたところで何も出来ないだろ? 今度はE.G.軍と戦うのか?」


 アーサーとカーライル中尉は福山少佐が残したデータを見て、E.G.の不正を信じ始めていた。

 だが、カーライル中尉の言う通り、どうする事も出来ないのも事実だ。

 既に始まっているファングとの戦闘を止める事は出来ないし、E.G.の上層部と戦う事も出来ない。

 どう対処してよいのか戸惑いを見せるのも当然だ。


「場合によってはE.G.軍と戦う事もありうるね。でも、出来るだけそういう事態は避けたいのだけどね。反攻作戦の指揮を執っているのはブレナン大将と聞いているが、ファングと真剣に戦う意志がある様に見えるかい?」


 (さい)大佐がアーサーとカーライル中尉に質問をした。


「ブレナン大将は真剣に戦っている様に見えます。僕の意見を取り入れてくれて、月面都市タロースに駐留していたファング第一艦隊を撃退しています。わざと敗北しようとしている様には見えないです」

「俺も同じ意見だな。ブレナン大将だけじゃねぇ、第二艦隊のパウエル中将からも凄い気迫を感じる。わざと負けようとしている様にはみえないぜ」

「なるほど、危機を感じますね」


 二人の意見を聞いた(さい)大佐の意見は、アランにとって意外なものであった。

(大佐が聞いたのは裏切者を探すのが目的ではなかったのか? 何故危険なのだ……大佐なら即答してくれるだろうから、聞いた方が早いな)


「大佐、何故危険なんだ?」

「俺も気になるな。仲間の危機は見逃せねぇからな」

「僕もです。わざと負けようとしていないなら問題ないのでは?」

「もしもアースガバメントそのものがE.G.軍の勝利を望んでいないのであれば、今の反攻作戦に参加した将兵は、政府の意向にそぐわない目障りな存在という事になる。だから何らかの方法で一掃する事を考えているだろうね。ファングを使って壊滅させるか、罪を着せて排除するか……」

「罪を着せる? どうやって? 俺には想像出来ないな」

「嫌な言い方をするが、君なら経験あるよね?」

「くっ」


 カーライル中尉が眉を顰め、歯を食いしばる。

 過去に所属していた部隊での経験を思い出したのだろう。

 知らない内に悪名を背負わされた過去を……


「僕達が罪を着せられるかどうかは分からない。だけど、ファングを使って壊滅させるのは不可能だよ。ここには僕達がいる」


 カーライル中尉が醸し出す暗い気分を振り払うように、アーサーが明るい声で宣言した。


「大した自信だね。シニチですら戦死したのに。君はシニチより強いというのかい?」

「強いと言わせてもらうよ」

「傲慢だね。戦場は君一人で御しれるような甘い物ではない」


 (さい)大佐にとってアーサーの宣言は不快であったようだ。

 アランから見ても、アーサーの考えは甘いと思うものだった。

 それでも、その気楽さが本来のアーサらしさであり、好ましいものだとも思っている。


「傲慢だって分かってますよ。でも、その傲慢を押し通す。僕は英雄なんかじゃない。それでも、僕とカリバーンはE.G.軍の希望だって事には変わりない。だからE.G.軍のエースパイロットとして勝利をもたらす。それが僕の軍人としての仕事です」

「俺も一緒に戦うさ。軍人の先輩としてね。俺には守りたい人達がいるんだ。E.G.軍に疑念があっても、戦う事から逃げらんねぇんだよ」

「そうですか。無謀だと思いますが、覚悟は伝わりましたよ。で、アランはどうするね?」

「俺は大佐と行動を共にする。アーサーとカーライル中尉と再会出来たのは嬉しいけどな」


 アランにも戦艦フリージアに戻りたいという思いはある。

 だが、福山少佐が残したデータと、ウォルフ技師長に聞いた秘密の謎を調査するには(さい)大佐と行動を共にした方が効率が良い。

 だから、(さい)大佐と行動を共にする事を選んだ。


「また僕達と一緒に戦って欲しかったんだけどな。元気でねアラン」


 アーサーがアランに向かって敬礼した。


「戦艦フリージアには戻らないけど、ファングとは戦う予定だ。だから、これからも一緒に戦おうアーサー」


 アランも敬礼をした。


「あぁ。これからも宜しく、アラン」

「でもさ、凛ちゃんには何て言えばいい? 信じてるって言ってたけど、彼女も心配してたと思うぞ」


 カーライル中尉がニヤニヤしながら言った。


「凛なら問題ないだろ? 心配しているなら生きてるって伝えといてくれ」

「おいおい、そんな冷たい事を言ってると捨てられるぞ?」

「凛が何を捨てるんだ? 凛がいらない物を捨てても、俺には関係ないと思うが? 捨てるなら分別を忘れるなとでも言っておけばよいのか?」

「あー、とぼけてる? それとも天然?」

「オリヴァーさんが無駄に恋愛に結び付けようとするから混乱するんですよ。そんなに恋愛の話がしたいなら自分でやればいいのに」

「俺はそういうのいいんだよ。さて、帰るとしますか。門限過ぎてるから怒られるだろうけど」

「そうですね。特にオリヴァーさんは艦長から叱られそうですね」


 カーライル中尉が落ち込んだ振りをした。

(門限を過ぎているか……門限など無いけどフィオナ艦長には叱られるのだろうな……)


 アーサーもカーライル中尉がフィオナ艦長に叱られる姿が想像しているのだろう。

 カーライル中尉の隣で笑いを堪えている。

(後はウォルフだな。そろそろ捕虜との話を終えている頃だろう)


「そうだ。帰るときにウォルフを連れて行ってくれ。息子同然の整備班と再会したいって言ってたからな」

「分かったよ。俺が乗せてく。護衛は任せたよアーサー」

「頑張りますよオリヴァーさん」

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