爆炎のシンセシスー1
束の間の休息を経て、ついに戦艦フリージアの打ち上げ日となった。
チャリム部隊のパイロットは、各自愛機に搭乗してE.G.軍宇宙センター周辺で待機する事になった。
アランもシンセシスー1に搭乗して待機していた。
「アラン、緊張してるかい?」
「緊張していない」
「やはり最大の障害は敵のエース、レイモンド・バージェスだよね」
「何故アイツには攻撃が当たらなかった?」
アランは前の戦闘で感じた疑問についてアーサーに問いかけた。
「考えが分からない。荒っぽい態度なのに操作は精密。好戦的なくせにあっさり退却する。存在の全てが悪い冗談のようだ」
「前の戦闘で攻撃を予測していたが、アーサーは考えを読めるのか?」
「あぁ、しぐさや目線で何となく相手の考えが分かるだろ。チャリムも同じなんだ。メインカメラの向きや操作で性格が分かるし、何を考えているのか大体分かる」
「それがアーサーの強さの秘密か……それではアイツには通じなそうだな」
「だから僕一人では苦戦しそうだよ」
「でも俺がいる。死のブルースクリーンだったか? 恥ずかしい名前を自慢げに言ってる子供相手に負けはしないさ」
「子供って……声から想像すると30才くらいだったと思うけど」
「それでも言ってる事が子供だ。アイツは俺が対処する。そして共に宇宙へ行こう」
「任せたよ。プログラマーならブルースクリーンくらい一発で解決出来るよね」
「ふっ、アーサーも挑発が得意になったじゃないか」
「みんなのお陰かな?」
楽しそうに笑うアーサー。
アランもアーサーにつられて笑う。
(もう戦いたくはない。それでも仲間を守る為なら。俺はもう少しだけ戦える)
ビィーッ!
警告音が鳴り、モニターにクラスIFのG.D.ウエイブが3機、クラスVS2が18機観測された事が表示された。
敵は戦艦3隻と量産型チャリム18機。
防衛戦力はカリバーン、シンセシスー1、アルダーン9機のみで、敵の半分以下の戦力しかない。
幸運な事にVVS2クラスの反応が無い。
どうやら今回はエースのレイモンド機は出撃していないようだ。
「さぁ、戦闘開始だ」
アーサーがカリバーンを敵陣に突撃させる。
だが、アランは止めない。
アーサーが敵を攪乱して時間を稼ぐ以外に手段がないからだ。
次々に敵機を撃墜していくアーサー。
アランも負けずに敵を撃破していく。
思った以上に善戦出来ている。
護衛のチャリム部隊に強敵がいないから、敵の戦艦を撃破する事も可能だろう。
だが深入りは出来ない。
目的は戦艦フリージアと共に宇宙へ上がる事なのだ。
深入りし過ぎて、打ち上げに間に合わなかったら意味が無い。
ビィーッ!
コクピットに鳴り響いた警告音。
それは戦艦フリージアの打ち上げが始まった合図。
アーサーのカリバーンが友軍に敬礼をした後、宇宙センターに向かって飛翔した。
アランもアーサーの後を追った。
(済まない……君たちの犠牲を無駄にはしないよ)
足止めをしている友軍のアルダーン部隊は全滅するだろう。
アーサーとアランを宇宙に送り出す為の犠牲になるのだ……
余った部品の寄せ集めのシンセシスー1より、カリバーンの方が機動性が高い。
先にカリバーンが宇宙に向かって打ち上げられている戦艦フリージアに取り付いた。
そして、アランのシンセシスー1に向かって手を差し出した。
アランはスラスターを全開にして追った……カリバーンの、アーサーの手を取る為に。
100m……50m……10m……届いた!
カリバーンの手をガッシリと掴んだシンセシスー1。
後は格納庫に回り込み艦内に入るだけ。
だったーー
突如、一筋のビームがシンセシスー1の腕を打ち抜いた。
腕を切り離されて落下するシンセシスー1。
眼下には唯の量産機であるリベレーンVEが一機。
だが、打ち上げ中の機体に攻撃を当てる実力は一般兵のものではない。
「レイモンド・バァァァジェェェェス!」
「良く分かったなぁ。E.G.の坊や!」
アラン機が残された左腕でビームソードを取り出し斬りかかったが、あっさりと防がれた。
「片腕じゃお得意の二刀流は使えねぇだろ!」
「片腕だってぇ!」
アラン機はレイモンド機を地表に向かって蹴り飛ばした。
レイモンド機が地面に激突する前に体勢を整えた。
「ちぃ、新型戦艦を撃墜する予定なんだよ。邪魔するな!」
「やらせはしない!」
「生意気なんだよ! ぶっ潰してやる! 先ずは俺を蹴とばした足からだ!」
レイモンド機が放ったビームがシンセシスー1の右足を消し飛ばした。
(フリージアにはみんながいるんだ! 勝てなくてもいい……後少しだけでいいんだ! 守れぇ! シンセシスー1!)
「お前は! お前だけは!」
「叫んだところでぇ!」
アランはシンセシスー1のスラスターを全開にして、再びレイモンド機に斬りかかった。
だが、ビームソードを受け止められ、逆に蹴り飛ばされた。
シンセシスー1が宇宙センターの施設に叩きつけられる。
急ぎ体勢を整えようとしたが、レイモンド機がビームライフルを構えているのが見えた。
放たれたビームを左腕を犠牲にして何とか防いだ。
残されたのは左足だけ、もう何も出来ない……
そう思った直後、宇宙センターが爆発し、施設が崩壊を始めた。
敵の戦艦の攻撃がE.G.宇宙センターに直撃したのだろう。
(アーサー、カーライル中尉、後は任せた……)
そして、シンセシスー1は崩れ行く宇宙センターの爆炎の中へ消えていったーー




