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突然ノチャンス

 


 調査書NO.012 沖野おきの ゆき

都会から季節外れにやってきた少年。

身長172cm、体重67kg、容姿端麗。

黒い瞳に黒い髪、一般的な国内人。

性格は中の上で、人当たりも良さげ。

クラスメイトとも仲良くやりはじめている。

今のところ目立った悪い行いも見当たらない。

彼の悩みは、今のところ不明。

周りには漏らしていない様子。

PS.現在の状態から察するに、仮面を被っていると見受けられる。


 以上、友明ファイルより参照


 ゆっくりとファイルを閉じる。

なるほどね、空はルーズリーフに記された内容を思い出し納得した。

彼のクラス内でのあの状態もこれで理由が分かった。


「さてと、どうするかな」


 空は教室で大きく伸びをしながら言った。

今は放課後で、教室には誰もいない。

和と友明には遅くなるからといって、先に帰ってもらった。

彼のプランは今のところ二つ。

1.雪に直接話を聞く

2.しばらく様子を見守る


「プラン的には1でいいんだけど、でも……」


 目の前の紙に書いたプランを眺めながらつぶやく。

それで友達になっても、いいんだろうか。

空は今までも何人もの悩みを聞き、解決してきた。

ヒーローに憧れていた彼は、本当にみんなのヒーローとなっていた。

しかし、悩みを解決した後は友達になった人も他人になった。

何度も経験していた、寂しい思い出。


「雪君と友達になりたいけど……」

「僕がどうかしたのかい?」


 自然と出ていた言葉を誰かの声が遮った。

慌てて振り返ると後方の出入り口に沖野雪が立っていた。

いつから立っていたんだろうか。


「あの、えーっと……」


 不測の事態に空はとても弱い。

だからプランを考え、一つ一つ確実にこなしていく。

けれどプランを決める前に、雪が来てしまった。

ここは無難に、適当な話で繋げよう。

心の中で決め、下手な笑顔を彼に向ける。


「沖野君、部活何に入るのかなー……って」


 言葉を言い終える直前に目線を雪に向ける。

扉の近くで雪がキョトンとした顔をしている。

これはまずい、明らかに振る話題を間違えた。

冷や汗がダラダラ背中を流れ始めた時、雪が唐突に喋り出した。


「僕、まだ部活見学行ってなくて」

「えっ、そうなの?」


 思わず声が大きくなる。

意外だったからだ。

あんなに人に囲まれていれば、誰かが雪を連れ出すと思っていた。

雪は静かに頷き、場所も分からないし、小さく呟いた。

――ヒーローの出番だ。

ガタリと大きい音を出し、椅子から立ち上がる。

横に掛けておいた鞄を机に載せ、教科書類を乱雑に入れる。

友明のファイルも……怒ると怖いから丁寧に入れた。

チャックを閉め、肩に紐をかける。

この間、わずか45秒。


「あ、あの……寺本てらもと君?」

「沖野君、一緒に部活見に行こう」

「えっ、でも――」

「いいから!」


 茫然としていた雪の手をとり、廊下を走りだす。

後ろから廊下を走ったらダメだとか聞こえるけど、聞こえないふり。

せっかくこの学校にやってきたんだ。

だから、だからせめて。

時刻は4時ちょっと過ぎ。

いろんな部活が始まった頃だった。

 

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