ヒーローノ日常話
鏡に向かって、笑顔を作る。
上手く笑えているか分からない。
指先で口角を無理矢理上げる。
うん、これならなんとか。
ヒーローに笑顔は欠かせない。
小さい頃から憧れてたヒーローに、今からでもなれるだろうか。
Ⅰ
僕は一人、いつもの通学路を歩く。
幼馴染たちは既に集合場所に居るんだろう。
そして、僕は怒られるんだろうな。
そんな光景が脳内で繰り広げられる。
少し遅れ気味だったから、自然と急ぎ足になる。
ヒーローは遅れてやってくるものだろう?
でも、ヒーローが遅れてきたら待ってる人達はどうなるんだろう。
犠牲者が増えるだけじゃないかな。
そんなことを考えながら、晴天の下走っていった。
「遅いぞ、空」
予想通り、幼馴染一真面目さんな友明に怒られた。
鏡で練習した笑顔を友明に向ける。
「ごめんごめん、笑顔の練習してた!」
「笑顔を浮かべながらごめんと言われても、悪気を感じないんだけど?」
友明はそう言い、やれやれと首を振った。
一応、悪いとは思ってるんだけどね。
「また、ヒーローごっこか……」
「ごっごじゃないよ! 僕はいつか、ヒーローになる男だよ、和君」
笑顔からドヤ顔に変え、隣に居る目つきの悪い和君に言い放つ。
溜め息を吐かれた気がするけど、僕はそんなことは気にしない。
幼馴染の数を確認する。
友明に和、あともう一人足りない。
「あれ?悠君は?」
「桐沢さんの所だよ」
「……そっか」
「ほら、遅刻するから早く行こうぜ」
「そうだね、ほら行くよ空」
僕らは再び、学校へと向かう道へ歩き始めた。
学校の前まで来ると、予鈴が鳴り始めた。
HRが始まるのは、あと5分。
「やべっ、走れ二人とも!」
和の呼びかけに駆け出す。
下駄箱に急いで靴を入れ、校内を歩くための物に履き替える。
もう他の生徒は教室に入ったらしく、廊下には人一人も居ない。
慌ただしい一日がこれから始まろうとしてた。
「セーフッ!」
本鈴が鳴る前に教室に滑り込むことに成功した。
クラスメイトは教室の中で騒がしかった。
いつも通りの風景。
けれど、その日はなんだか様子が違っていた。
夕ちゃんが飛び降りたあの日のように、どこか様子が違ってた。
言ノ葉ナイフの続きにあたる話です。




