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episode7

ヴィリオスが意識を失った。そのような出来事に魔塔は混乱状態に陥った。それをリリィは何とかまとめあげ、ついでにヴィリオスの様子を見に行く。


今は数人がかりで暴走しそうな魔力を抑えている。このままだと魔塔ごと自爆して死ぬだろう。


ルード・ビルダー。ヴィリオスと共に戦場で拾った人間の子ども。魔力を持たなかったから弟子ではないが、ヴィリオスと仲が良かった為共に育てていた。


思えばヴィリオスが記憶を失って帰ってきたときからおかしかった。

リリィは自分の愚かさに笑えてきた。







ヴィリオスは何もない平原に佇んでいた。目の前には女性が立っている。レティシアと同じ金色の髪と翠色の瞳を持ったエルフ。


ヴィリオスが唯一愛した女性。どうして今まで忘れていたのだろうか。


「フィリオーネ……すまなかった。」


縋るように1歩踏み出す。


「その謝罪は誰へのもの?」


フィリオーネが優しく問う。ヴィリオスはフィリオーネを見つめた。


「それが私へのものなら要らないわ。私は貴方を恨んでないもの。でももし…。」


フィリオーネは愛おしそうな顔をする。


「でももし、それがあの子へのものなら、早くあの子に会いに行ってあげて。」


レティシア。ヴィリオスはあの子の顔を思い出す。

優しい何かに押し出されるように意識を取り戻した。



リリィがヴィリオスの寝室へ着いた瞬間、ヴィリオスが数人の魔法使いに止められながら、寝室から出てきた。


「ヴィリオス?!」


リリィは驚いたが、何かを決めたような強い意志が宿る瞳を見て笑う。


「師匠、魔塔を頼みます。」


ヴィリオスがそう言って転移する。リリィは頷いた。







ルードがレティシアに触ろうとした手をヨルは払い除ける。


ルードは忌々しそうにヨルを蹴り飛ばした。


「…!」


レティシアがヨルに駆け寄ろうとするのを腕を引っ張ってルードは止める。


「離せよ…!」


ヨルは再びルードに飛びかかる。だが、殴り飛ばされてしまった。


「……傷つけないで…!」


レティシアはルードに懇願する。


「随分と物を言うようになりましたね。あの男のお陰ですか?あの男は貴女とは何も関係がないのに。」


「いや、その子は私の娘だ。」


後ろから声が響く。ルードが有り得ないと驚愕した。

レティシアが振り向くとヴィリオスが居た。ヴィリオスはルードを浮かせてレティシアから離す。


レティシアは驚きと、歓喜と、色んな感情でぐちゃぐちゃだった。

恐る恐る、確かめるように呟く。


「……パパ?」


ヴィリオスは眉を下げて笑う。レティシアを抱きしめた。


「ああ、君のパパだ…レティシア。」


レティシアの瞳から涙がとめどなく溢れる。それでも嬉しかった。外は快晴なのに雨が降っていた。






ルードを捕縛し、魔塔へ転移させる。残りの教団の者たちも一気に制圧した。瞬きする間の出来事に捕らえられていた喪失者の子どもたちはぽかんとする。


後からやってきた魔塔の魔法使い達に、レティシアを抱えながらてきぱきと指示をするヴィリオスにヨルが話しかけた。


「こいつらはどうなるんだ?」


レティシアもそれが気になり、ヴィリオスを見る。


「喪失者は本来保護対象だ。親がいる子どもは親元に返し、孤児は周辺諸国へ引き取られる。」


ヴィリオスの答えにヨルは安心したように肩を下ろした。


「魔法が使えるものは魔塔で保護するが……」


ヴィリオスはヨルの頭を撫でる。


「お前も来るか?」


ヴィリオスはヨルの寂しそうな顔を見逃さなかった。


「でも、俺、魔法は…。」


「お前、ドラゴンだろう?」


漂う闇の気配は高貴な種族、ドラゴンのものだ。


「お前くらいの力を持つものを面倒見れるのは魔塔しかないからな。お前さえ良ければ…」


「行きたい…!」


ヨルは嬉しそうに答える。もう一度ヴィリオスはヨルの頭を撫でる。


「お前は強くなれる。」


レティシアはヨルを見て笑った。


「…一緒…。」


ヨルの顔がぼっと赤くなる。ヴィリオスは途端に笑みを消した。


「娘はやらんからな。」


「ち、ちげーし!!」


ヨルは怒ったように叫ぶ。ヴィリオスはふっと笑みを零した。








レティシアが魔塔に戻ってきて数日、ヴィリオスは忙しかった。周辺諸国と協力して、教団を本格的に潰したからだ。

捕らえられていた喪失者の子どもたちの引き取り手も全員見つかり、仕事がひと段落した。


レティシアはヴィリオスの執務室で本を読んでいた。あの一件からしばらくレティシアはヴィリオスから離れなかった。今は落ち着いていても、ヴィリオスの近くにいたいらしく、ヴィリオスが仕事をしていても執務室にいる。


「レティ、仕事は終わった。おいで。」


そう言って手を広げると、レティシアは嬉しそうに本を置いた。


「パパ!」


思い切りかけてきて、胸に飛び込んでくるレティシアをヴィリオスは抱きしめる。

レティシアは膝の上に座って、机の上のものを触り始めた。


レティシアにとって執務室はまだ物珍しいようで、気になったものをよく触っている。そのため、危険なスクロールや魔法具は撤去した。


執務室のドアが開き、ヨルが顔を覗かせる。


「師匠ー、言ってた訓練全部終わった。次何すればいい?」


ヨルはヴィリオス自ら稽古をつけていた。ヨルは飲み込みが早く、どんどん強くなっていっている。


レティシアはヴィリオスの膝から降りて、ヨルに駆け寄る。


「怪我…してない?」


レティシアの問いにヨルは照れて目を逸らす。


「してない…。」


「良かった…!」


レティシアが笑うと、ヨルは湯気が出そうなほど赤くなる。


レティシアの笑顔が増えたのがいいがそれがこいつのおかげなのが気に食わない。


レティシアとヨルは仲良く執務室を出ていってしまった。代わりにリリィが入って来る。


「あの2人が仲良くしているのが不満か?」


にやにやとそう聞いてくる。別に不満ではない。ただ、娘が男と仲良くしているのが気に食わないだけだ。


表情からそれを悟ったリリィは堪えきれずに笑い始める。


「将来の義息子に辛く当たるなよ。」


「……考えたくないです。」


リリィのからかいが現実になるのを想像してげんなりする。ヨルのことも気に入っているが、レティシアが嫁に行くのは耐えられない。


ひとしきり笑ったあと、リリィは真剣な顔になった。


「ルードの処分はどうする。」


ルード・ビルダー。ヴィリオスの幼なじみで、最も同じ時を共にした人。

彼と決着をつけなければならない。





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