第4話 3日目 ― 告白
「――っっ!!」
言い終えた途端、オリヴィアは自分が何を口にしてしまったか気づいてしまい、耳の端まで真っ赤に染めて顔を伏せた。
何か言おうとしているようだが、言葉にはならない。
そんなオリヴィアのいじらしく可愛らしい様子を見て、ブレムは、
「あ、いや、気にしないでいいよ、俺も好きだ……から」
咄嗟にそう返してしまった。
そして。
ブレムはオリヴィアと同じように、顔を覆うようにして俯きながら、心のなかで叫んだ。
なんで俺は今、好きなんて言ったんだ――
ふと視線を感じて、ブレムは顔を上げる。
オリヴィアがこちらを見つめていた。
その綺麗な顔は相変わらず真っ赤に染まっていた。
視線が合った、その一瞬。
オリヴィアが、まるで瞬きを忘れたように固まった。
「……え」
かすれた声が遅れて漏れる。
「い、いま……ブレム様……」
言葉を探すように、途切れ途切れに続く声。
確かめるような視線が向けられているのに、まっすぐこちらを見ることができていない。
「……お好き、だと……」
問いかけの形なのに、語尾がかすかに震えていた。
オリヴィアがほんの少しだけ身を乗り出す。
その距離の近さに、ブレムは思わず息を詰めた。
オリヴィア自身も気づいたのか、はっとしたように動きを止める。
「……それは、その……」
視線を逸らしたいのに逸らせない、そんな様子だった。
「……同じ、意味……なのでしょうか」
その問いに、ブレムは答えることができなかった。
ほんの数秒だけあたりを支配した静寂が、ひどく長いように感じられた。
口を開こうとしても、言葉が出なかった。
静寂を突き破るように、混乱していたブレムは考えるよりも先に行動を起こした。
ブレムは、オリヴィアを抱きしめた。
「……え……?」
オリヴィアの身体が、ぴたりと固まるのが分かった。
小さく零れた声が胸元から伝わり、ブレムは息が詰まりそうになる。
「ああ、同じ意味だよ……」
「俺は、オリヴィアが好きだ」
だが、震えそうになる声をなんとか抑えてブレムはオリヴィアの耳元で告白した。
「――っっ!!」
オリヴィアの体が、さらに強張ったことがはっきりと分かった。
表情は見えない。
それがたまらなく不安で、ブレムは抱擁を少しだけ崩す。
ほんの僅かに霧散した温もりを惜しむように、オリヴィアの真っ赤に染まった顔は、ほんの少し寂しさのようなものを含んでいた。
「そのさらりとした髪も、俺を否定せず受け入れてくれる優しさも――全部、好きだ」
だから、安堵させるようにゆっくりと、想いを綴る。
「――!!……わ、私、も……」
その想いを受け取ったオリヴィアは、さらに顔を真っ赤に染めて、声を震わせながらも、噛みしめるように言葉を零していく。
「……ブレム様の、見るだけで安心するような優しい顔立ちも、話すだけで安心する温かい雰囲気も……全部…………好きです」
そして――
「ブレム様の、恋人になりたいです」
オリヴィアは先程までのように頬を染めながら、しかしその顔に柔らかな微笑を浮かべて、囁いた。
その表情が、やけに胸に焼き付いた。
「――っ」
返事は、言葉によるものではなかった。
ブレムは熱を帯びた顔で、小さく頷いた。
オリヴィアの顔が瞬く間にぱあっと、喜びと幸せで彩られた。
その顔が、またあまりにも可愛くて。
ブレムは両手を広げた。
オリヴィアの顔に少し戸惑いが浮かんで、ブレムは気恥ずかしさで腕を下ろしたくなる。
だがすぐにブレムの意図を察したオリヴィアは、その顔にさらに喜びを浮かべて。
ブレムの胸に飛び込んだ。
二人の温もりが、一つとなった。
互いに抱きしめる力は強くない。だが、それは好意の弱さ故ではなく、相手を傷つけないようにするためだと、言葉を交わさずとも知っていた。
2人はそうして、夕刻を告げる教会の鐘が静かに鳴り響くまで、抱擁を交わしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第四話、ブレムとオリヴィアの告白でした。
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結ばれはしましたが、話はまだまだ続きます。むしろここからが本番です。
次回は明日の21:00に投稿予定です。




