第20話 理由
すいません、めっちゃ投稿サボりました。
受験勉強との兼ね合いもあるので、これからは投稿頻度を減らそうと思います
「処分……?」
急に告げられた重大な情報に、ブレムは思わず聞き返してしまう。
確かに、『【聖女】の恋人』という特殊な立場であるブレムに対して、教会も何か行動を起こすのだろうとは、ブレムも事前に予測していた。
しかし処分とは……そこまで自分は繊細な立場なのだなと、ブレムは改めて思い知る。
「まあ結局、その判断は覆ったんだけどね」
しかし【人間】は、まるで天気の話でもするみたいに続けた。
「……覆った?というのは?」
「彼ら――上層部の面々に、君のことを私に一任するようにと、私が伝えたからだよ」
重大すぎる情報の連続に、ブレムは顔を顰めることしかできない。
「それはまた、どうしてですか?」
「私が判断したから。昨日、中庭で君と話して、君が【聖女】の恋人として、特には問題はないだろう、ってね」
「……それだけ?」
「まあ、他にも理由はあるけどね。」
ブレムは思わず言葉を失ってしまう。
自分とたった数分言葉を交わしただけで、この大陸全土に勢力を広げる教会の上層部の方針を、この少女――【人間】は、覆してしまったのか。
【人間】は頬杖をつきながら、もう片方の手で、自らの髪をいじり始める。
「一つ目は、中庭にやってくる時の君と【聖女】の様子。
一目見ただけで、君達が言葉に尽くせぬ信頼関係で結ばれていることを、私は理解した。
その時点で、君を排除する選択肢は、私の中からは消えていたんだ。
【聖女】は、教会にとっても、私にとっても不確定要素が大きく、直接的な戦闘力という面でも、【天使】を除けば群を抜いて強大な戦力だ。そんな彼女の大事な人間に変に手を出して、【聖女】の反感を買うなんて、私は絶対にごめんだからね」
ブレムが口を挟む暇もなく、少女は続ける。
「二つ目は、私の質問に対する君の答え――そして、その時の君の目。
正確には、私の質問に君は質問で返したのだけど、それは重要じゃない。
私は、君が【聖女】と親しく接することができるのは、単にその天才性から目を背けているからだろうと思っていた。
けど、実際は違った。確かに君は、彼女の天才性について完全には理解していなかった。
しかし彼女がどんな人物であれど、それを受け入れるという覚悟が確かにあったんだ。
これから先、さらに【聖女】の天才性を目の前にしても、君は動じないだろうと理解した。
以上の要素から、【聖女】における君という人間の重要性と、君の【聖女】の恋人であるという意思と覚悟を私は読み取った。
よって、君は【聖女】の恋人として、大きな問題はないと私は判断した。
同時に、上層部が下手な判断を下す前に、私が介入しておこうとも判断した」
そして【人間】は、髪をいじっていた手を止めると、視線をこちらにやった。
「納得したかな、少年」
「納得……理屈では、納得できました」
ブレムは、遅れて口を開いた。
つまり、ブレムとオリヴィアの関係は、殆ど教会に公認されたということだろう。
それだけを考えれば、素直に喜ばしい。
ただ、なんというか……。
「失礼します」
と、ここでオリヴィアが扉を開けながら、居間に戻ってきた。
手にはお盆と、その上に三つ、湯気が立つコップが置かれている。
ほんのりとした香りが、部屋に漂う。
「ありがと、【聖女】。君も座りなよ。少年の隣が空いてるし」
「いえ、私は給仕役として――」
「命令」
「……では、お言葉に甘えて」
間に置かれた机にコップを置き終えたオリヴィアは、【人間】の命令に従って、ブレムの隣に座る。
2人用のソファなのもあって、それなりに余裕をもって腰を下ろせる。
ふと、手に温もりを感じる。
見ると、オリヴィアがブレムの方に目をやりながら、安心したように微笑んでいた。
【人間】とブレムの間に何かトラブルが起こっていなかったか、少なからず心配していたのだろう。
その温もりだけで、どこかブレムの胸の中に燻っていた不安が、晴れていくような気がした。
「相変わらず仲がいいね。出会ってまだ一ヶ月も経っていないようにはとても思えないくらいだ」
その様子を、【人間】はじっと見つめていた。
慌てたように、オリヴィアは頭を下げる。
「も、申し訳ありません……つい、第一席次殿の前であることを失念していました」
「気にしなくて良いよ。別に公的な場でもないし。
……それはともかく」
そう言うと、【人間】は頬杖を解いて、言った。
「ここへ来たのは、【聖女】である君にも話すことがあったからなんだ。それも結構大事な用事だね」
「私にですか?」
オリヴィアは小さく首を傾げると、【人間】はため息を吐きながら、言った。
「――【灰の神】が、行方をくらました」
次回は1週間以内に投稿します。




