第二章【旧迷宮の少年】 まだ15時。
「で、何で僕に死んで欲しいんです?」
俺は、「お話」したことによって、落ち着きを取り戻した神々に問うた。
神に正座をさせて話すのは俺が初めてではなかろうか。
「わしの手続き忘れのせいなのじゃ、、」
アマテラスと呼ばれていた女神は、座ったままこちらに顔を向けて言った。
座っても尚、身長の大きさを感じさせられる。
「手続き忘れ?」
答えになってないし、余計に混乱してきたぞ。
手続きって何のことだ?
「進化とか諸々の手続きじゃよ」
進化とか?諸々、、?
「んーっと、、簡単に説明させてもらうわね」
ちょこんと座った、幼い容姿の女神が話に入ってきた。
経緯はどうであれ、現状を説明してくれるのはありがたい。
「【ファーストスキル】って聞き覚えあるかしら」
「聞いたことはありますね」
持ってはないけど、、。
「恐らく、君以外の人間全てが取得したわ、「ボード」と合わせてね」
ボードって板さんのことか。
「このことを「進化」と呼んでるの」
「で、人類の身体を一度「迷宮」に移せば「進化」させることができるわけ」
幼い容姿の女神は、相槌すら打つ暇なく淡々と事を話していく。
「訳あって私たちは、人類を「進化」させたい。だから「迷宮」に転移させたの」
「これをするために必要なのが「手続き」」
「だけど、拓次くんの分の手続きを忘れてしまったから、君は転移されなかった」
俺、「個人迷宮」にがっつり落ちたけどな。
【ファーストスキル】はもらえなかったのに。
「そう、問題はそこなのよ」
どこなのよ。
というか、当然の如く考えてることに対して話してくるのは慣れないな。
、、問題っていうと、【ファーストスキル】が貰えなかったことかな。
「違うわ」
じゃあ迷宮に「落ちた」ってことが問題か。
「それも違うわね。「個人迷宮」、言い換えれば「旧迷宮」に落ちたことが問題なのよ」
旧迷宮?
「ちなみに、あなたが自死しない限り、【ファーストスキル】を取得することはできないわ」
え?
「オモイカネ、そろそろ返さねばバレるのじゃ」
「そうね」
「拓次くん。改めてお願いするんだけど、自死してくれないかしら?」
「自死したら蘇ります?」
「そんなことある訳ないじゃない」
あれぇ?
「そろそろ返す準備をするのじゃ」
「わかったわ」
「拓次くん、最後に伝えておくわね。あなたの進化は「異常」で「想定外」なの」
「まぁできる限りは直しておくのじゃ!」
これ、あんまり事情わからずに返される流れだ。
「神に通ずる我願う。古きを新たに!理に成れ!」
「改新!」
「神に通ずる我願う。あの場にかの者を!理と混じれ!」
「大穴!!」
女神はそれぞれ別の魔法を唱えた。
「また俺落ちるのぉ!?」
ーー。
落ちた先は俺の家だった。
家の周りにはなぜか人だかりができてるし、ヘリコプターが飛んでる音がする。
「天田さーーん!出てきて下さーい!!」
警察っぽい人が扉の前で叫んでもいる。
「もうわっけわからん!」
ちょっとお家にこもってたいかなぁ、、。
〈称号【家出たら負けかなと思ってる】を獲得しました。〉




