人道的見地からプレゼンされる無人殺戮兵器
なろうイベント「春チャレンジ2026」のお題「仕事」ということで書いてみた話。
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【近年、人権問題が大きく取り上げられるようになってきたせいで満足に戦争もやってられない。国王からいったん戦争を終わらせるために研究成果を上げるように言われたから、何か結果を出さなきゃならない】
『戦争に人権も人道的見地も無いと思うんですけど』
【俺もそう思う。でもまぁ、兵士遺族からすれば身内の人権侵害ではあるだろうし、兵士だとしても自国民が犠牲になるのは正直あまり気分が良くないのも事実だ】
『相手国が一瞬で滅んでくれれば話は早いんですけどね』
【それはそうなんだが、一瞬で滅ぼすような攻撃をしたら今度は国際社会からうちの国が責められる。多面戦は情報戦に留めておきたい。やるとしても順次だな。終戦後の兵士の扱いにも困るし、あまり戦争続きでも内乱を起こされたらたまらない】
『あぁ、国王もそういう理解なんですね。だから、いったん終戦、と』
【そうだ。とはいえそう簡単に終わるなら苦労しない。とりあえずは急場しのぎで、兵士の被害を減らすか、相手国の被害を増やす方法が必要だな】
『なるほど。それじゃあ無人機を増やしましょうか。航行データもありますし、空母も戦闘機も自動化と遠隔操作で使い捨てにするつもりで』
【開発コストが既存機の流用でどこまで抑えられるかだな。よし、開発局に打診してみるか】
【タブレット端末で遊んでいる学生みたいなのが増えたが、あれってうちの新兵候補か?】
『正規兵ですよ。開発した遠隔機で紛争中です』
【ECM対策が不十分だと聞いていたが。新型でも開発したのか?】
『いいえ。単に相手国でも同じような無人機に挿げ替えが進んでいるらしく、お互いに全滅するよりも実地検証も兼ねてやり合っている感じですね』
【あぁ、それで軽量化と使い捨てに開発が偏っているのか】
『いまじゃ弾薬を積みすぎると重くて的にされるだけですからね』
【その割には科学物質の消費量が多くなったな。毒薬散布でも始めたか? 結構な毒性があるはずだが】
『まさか。単に撃墜された機体の情報を相手国に与えないように、大破した時点で主要箇所を破断するのに使っているだけですよ』
【なるほど。拿捕した機体から得られる情報精度が低いと開発局が愚痴っていたのはそのせいか】
『うちもあっちも、考えることは大差ないですからね。ただ、お互い兵士が減らない割には開発コストが高くなっている感じですね。やっぱりレアメタルの使い捨ては効率的とは言えません』
【それで第三国が潤うのも面白くないな。端末操作もおぼつかないし老兵どもに今更前線に立たせるわけにもいかない。とはいえ新兵の若年化も問題だが。万一、防衛戦になったら銃の持ち方すらわからないんじゃないか?】
『銃器製作に回る金属は概ね国が徴発して、長距離無人戦闘機にあててますからね。練習するときも射的を使い回してます。実戦演習が必須だった頃が懐かしいですね』
【全くだ。しかしうちもあっちも、攻撃に躊躇う気配がないな。ゲーム感覚というか】
『まぁ、リアルなゲームと大差ないですからね。しかもこっちはヒトガタは出てこないし、血飛沫を見ることもない。むしろリアリティはゲームの方が感じられるでしょう』
【なるほど。じゃあちょっと開発局に伝えてみるか】
【あまり変化はない感じか?】
『機体の形状をヒトガタにしただけではダメでしたが、相手国の子供をモチーフにした新型は被弾率が少し下がりましたね』
【いっときだけな。それにあっち側もうちの国の子供みたいな機体を作ったせいで、こっちの撃破率も下がった】
『いっときだけですけどね。既にコントロールも自動化されて、操作していた兵士たちもほとんどが退職勧告を受けましたから』
【どこぞの島国が似たようなeスポーツを開発したらしいな。おかげでそちらが代理戦争の様相だとか。いっそのことそっちにシフトしてもらって、このまま膠着状態が続けば良いんだが】
『仮にもスポーツですからね。一部の国では選手育成が国家事業になっているらしいですけれども、ほとんどの国はちゃんとスポーツマンシップに則って戦ってますよ。おかげで試合会場で殴り合いの喧嘩すら起きない。平和なもんです』
【退役したゲーマー兵士どもがそっちで活躍できるかと思ったが、一人も名前を見かけないな。予選すら通過できないとはそんなにハイレベルなのか?】
『ちょうど決勝戦やってますよ。開催国で開発国の島国がチーターレベルの挙動してます』
【……この島国が同じような兵装を整えて進軍してくる国でないのは幸いだったな。クレイジーだ。こいつら】
【誤射の件はどうなっている?】
『どうもこうも、最悪ですよ。帰投した機体が自国民の子供を撃ったんですから。実は設計段階で機体と人間の区別がついてなかったなんて機密がバレたら最高幹部の首が飛びますよ』
【物理的に消し飛ばされた子供に比べればマシだ。そのせいで人権団体様の御高説が毎日毎日うるさくて敵わん。世論が高まって最新機体が出撃不能にされてしまったが、また兵士募集をかけて以前の戦争形態に戻せると思うか?】
『まさか。機械が子供に見えるだけでこの騒ぎなんですから、それこそ人権侵害だと大騒ぎするでしょう』
【生きた兵士が戦闘機に乗っていた頃はもっと静かだったのにな。死んでも気にならない見た目だと主張していることに気づいているのやら】
『いやぁ、どうでもいいんじゃないですか? モラルがある自分に酔いたいだけで』
【考えたくもないな。それならせめて実戦に挑む俺たちくらいはモラルを保っていたいものだ】
『それで、どうするんですか?』
【まずは使えなくなった機体を人権団体様に下げ渡すために武装不能に改装する】
『それで黙りますかね?』
【黙るさ。黙らないようなら遠隔で自爆させて消し飛ばせばいい。それよりも相手国の出方が気になる。やけにおとなしくなったな?】
『あぁ、相手国も似たようなことになっているみたいですね。諜報局が言ってました』
【それなら今のうちに開発局に新兵器の開発を急がせておこう】
【新兵器が既に実用化されていたというのはどういうことだ?】
『開発局が言うには、どれくらい近似したものとして認識されるか検証していたらしいですよ。全く、バカにされたもんだ』
【ゲーマーもどきの新兵を相手国に送り込んだと聞いたぞ。ろくな戦闘訓練も受けさせていないのに。自爆テロでもさせるつもりか?】
『正確にはバイオテロですね。クローン兵を致死ウィルスに罹患させて、相手国に蔓延させるつもりだとか』
【相手国の捕虜がいるわけでもない。相手国からの旅行客を手当たり次第に実験材料にしたわけでもないだろうし、抗原検査も足りているとは思えん。不確実な状態で送り出してもコストの無駄だろう。だいたい相手国の兵士だって一般人に比べれば遥かに頑強な……おい。当時、入れ替えたように元いた兵士たちが集団退役したが、本当に退役だったのか?】
『あ、やっぱり気づきました? どうやらうちら現役兵で感染力と罹患率を測ったみたいですよ。なんと驚き。俺たち以外はもう墓の下です』
【開発局にはモラルがないのか? いや待て。普通に埋葬されるまで生きていたのか? 回収されずに?】
『ウィルスもテスターだったせいか弱毒化したみたいですね。まぁ、それでも当時の流感による死亡者数は過去最多を更新してますけれども』
【最悪だ。自国民を守るために開発した兵器で自国民を殺すとは。誤射の経験から何も学んでいない。あぁいや、開発は同時期に進行していたのか。だからどちらもこんな結果に】
『その自国民なんですけどね』
【……なんだ?】
『人権団体様から横流しされた子供型機体の違法改造が最近流行っているらしくって』
【おいまさか。武装撤去して兵器としてはもう機能しない筈だぞ】
『えぇ、そのぉ、改造で組み込まれているのは中古の性処理用機体のパーツらしくて』
【遠隔の自爆装置を起動しろ。いますぐに全部だ】
世の中を良くするために働いている人が実は後ろ暗いことに手を染めている、という寓話を見聞きするなぁ、とか思いつつ書いた話。
もちろん現実とは一切無関係です。現実には人的損害を避けてクローン兵を導入する国なんてないですよ。ないよね?
クローンの人権ネタってかなり昔に少女漫画で読んだような。気になる方は探してみてください。
……クローンじゃなくて漫画の方ですよ?




