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農業高校は毎日が戦争だぜ  作者: りょうさん
哲也の過去編
20/110

哲也の過去~そばにいて~

今回は、甘奈の悩みメインです

「じいちゃん、俺っちはじいちゃんのように造園屋を目指すよ、これが俺っちのやりたいことだ!・・・これでいいんだよな、じいちゃん」


哲也は小さい頃から憧れていた造園屋になることを決意した。

そして、哲也はその旨を両親へと報告をしていた。

「父さん、話があるんだけど」

「ん?どうした、哲也」

「えっと・・・俺っち造園屋になりたいんだ」

「・・・・本気で言ってるのか?」

「ああ、本気だ」

「・・・ダメだ、許すことはできない」

「!?なんでだよ!俺はじいちゃんみたいになりたいんだ!」

「お前に造園ができるわけがない、お前は家を継げ」

「俺は造園がしたいんだ!俺がしたいのは整体じゃない!」

「とにかくダメだ」

「あ、おい!父さん!」

そう言うと愛人は部屋へと帰っていった。

「なんでだよ・・・」


そのころ部屋では。

「やはり、この時が来てしまったか・・・」

愛人は机に肘を立て顎を手の上に置いていた。

「造園は危険が伴う仕事・・・あいつにあんなことはさせられない」

それは、愛人9歳の頃。


「父さん~!」

「おう!愛人!来たか!」

「うん!見に来たよ!」

「よし!そこで見とけ~!」

「はーい!」

この頃の愛人は、父鉄心の仕事をしょっちゅう見に来るまさに哲也のような子供だった。

「はぁ~父さんかっこいいな~!」

「よーし!次はその石を動かすぞー!」

「「「はい!」」」

この頃はまだ社員も少なく地道に仕事を行っていた。

大きな石を動かさそうとしたその時、


ぐらっ!


「え?」

愛人はとっさに言葉が出なかった。


ドカーーン!


鉄心の乗っていた小型クレーンが横転、石の重さに耐えられなかったのもあるが、不安定な場所で作業を行っていたためバランスが取れなかったのだ。

鉄心はすぐさま病院へと連れられた。

命に別状はなかったが、足と腕の骨を折る重傷だった。

それを間近で見た幼い愛人はその日からは父が復帰しても、仕事を見に行くことはなかった。


「あんなことを哲也にやらせることなんてできない」

このようなことから愛人は哲也に造園屋を目指させようとはしなかったのだ。

そのため、幼い頃鉄心のもとへ行く哲也を快くは思っていなかった。

「絶対だ・・・」


リビングへ取り残された哲也は、苛立ちを隠せなかった。

「なんでだよ・・・俺がやりたいことだろ・・・くそっ!」

哲也がこの話をした後からは下永家には嫌な雰囲気が漂っていた。



それから1ヶ月が経った頃、哲也は用事があり東まで来ていた。

「次は近藤さんっと・・・」

鉄心が生きている間に色々と世話になった人への挨拶回りだった。

「ここか、ごめんください!」

「はいはい~?」

家からは優しそうなおばさんが出てきた。

「どうも、はじめまして。下永哲也と申します、祖父が生前お世話になりました」

「あ~!鉄心さんのお孫さんかい!」

「はい、これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ、まだ若いのに偉いわね~」

「いえ、僕が行くといったんです、祖父には色々と世話になりましたから」

「そうかいそうかい、そういえば哲也君は藤崎のお嬢様の許嫁なんだって?」

「え?あ、ええそうですよ」

「あの子はとても、素晴らしい人だよ~いかにもお嬢様って感じでね!」

「は、はあ」

(確かにお嬢様っぽい感じはするけど、それは言われて嬉しいとこなのだろうか)

ほかにもいいとこがある、長く見てきた哲也だからわかる甘奈のいいところが山ほど哲也の中には浮かんできた。

「それでは失礼します」

「ええ、またいらっしゃいね」

「はい、それでは」

哲也は近藤さんの家を後にした。


哲也はなんとなく歩いた、そして気がつくと甘奈の家の近くへと来ていた。

「あれ・・・来るつもりはなかったんだけどな・・・ん?」

前方を見ると友達だろうか、何人かの女子と一緒に歩いてくる甘奈を見つけた。

「友達いるじゃん、よかったな甘奈」

甘奈の性格上、友達を作ることが苦手そうに見えるため哲也は心配をしていた。

しかし、人と談笑をしながら歩く甘奈を見てほっと胸をなでおろす哲也だった。

「それでは、藤崎様、失礼します」

(藤崎様?)

友人らしき女子の発した甘奈の呼称に違和感を抱いた。

「うん・・・さようなら」

甘奈の受け答えも何故かよそよそしい。

女子が去っていくと、

「・・・・はぁ」

甘奈はため息をつき、寂しそうな顔をした。

そんな甘奈の顔を見た哲也は話しかけずにはいられなかった。

「今日は学校だったのか?」

「え・・・て、哲也様!?」

「久しぶり、甘奈」

「お、おお、お久しぶりでございます!」

「落ち着けよ・・・で、質問の答えは?」

哲也は甘奈を落ち着かせる。

「あ、は、はい・・・えっと、今日は生徒会の集まりがございまして」

「そうか、甘奈は生徒会だっけか」

「は、はい・・・」

甘奈はここらでも有名な私立の金持ちが通うような学校に通っている。

その中で、実力をかられて1年生ながら生徒会へと所属している。

「あの子達は友達か?」

「・・・そうですよ、友達です」

何故か俯く甘奈。

「甘奈にそんな顔をさせる人間が友達なのか?」

「・・・!」

「なにか、悩みでもあるんじゃないか?」

「そ、そんなこと・・・」

意地でも話さない気でいる甘奈。

「はぁ・・・こんな手を使うのはずるいとは思うが・・・甘奈」

「は、はい・・・」

「俺っちは甘奈にとってなんだ?」

「えっと・・・許嫁・・・ですよね」

「そうだ、許嫁だ。将来を約束された俺っちたちに隠し事なんてアリか?」

「うう・・・ほんとにずるいです・・・」

甘奈の性格ではこう言えば答えるだろう。

「・・・まあ、あれだ、長く見ている俺っちとしては甘奈のそんな顔よほどのことがない限り見たことがない・・・から」

「哲也様・・・」

「よし、甘奈!明日は休みだよな?」

「そ、そうですけど」

「よし、今日は泊まりに来い、いいな?」

「ええ!?」

「よし!決まりだ!急いでじゅんびしてこ~い!」

「ええええ!?」

哲也は強引に押し切った。


そして哲也と甘奈は荷物を家に置き、鉄心の墓の前へと来ていた。

「哲也様・・・なんでここに?」

「甘奈、じいちゃんの前だ、嘘言ったら殴られるぞ~?」

「あぅ・・・」

「さあ、ここからは真面目な話だ」

「はい・・・」

「甘奈の悩みはなんだ?」

「・・・・」

「言いにくいか?」

「はい・・・」

「じゃあ、「俺」から質問する」

「は、はい」

哲也は真面目な話になったりすると必ず一人称が俺になる。

そのことを知っている、甘奈は構える。

「友達が甘奈のことを藤崎様と呼んでるな?」

「はい・・・」

「それはなぜだ?」

「・・・」

「・・・なるほど、そのことが関わってるのか」

「・・・!哲也様・・・」

「なんだ?」

「なぜ、急に私の話を聞こうと思ったのですか?」

「質問返しか・・・」

「哲也様は私を避けていらっしゃったのでは?」

「ばれてたか・・・んっとな、そうだな・・・中1の時にふと思ったんだ、許嫁って本当にいいのだろうかって」

「・・・・」

「本当は甘奈が自分を押さえつけてるんじゃないかって思ったんだ、だけど、避けていることに負い目を感じていたのかもしれない、正直言うと、それをこのことでうやむやにしようとしてたのかもしれないな」

「・・・哲也様って、本当に鈍感さんです」

「え?」

「わかりました、お話します」

「いいのか」

「はい」

それから、甘奈は自分の抱えている物を吐き出した。


「あの子達はお父様の会社の系列会社の社長令嬢なんです、私が入学した時に近づいてきて、そのまま私にひっつくようになりました、最初こそ友達だって思ってました、でも・・・」

「普通の友達みたいには接してくれなかった・・・か」

「はい、私のことは藤崎様と呼び、敬語で話す、ただただご機嫌取りをしているだけでした」

「なるほどな」

「それに私は、昔からお手伝いさんにも、近所の方からもお嬢様なんて呼ばれて特別扱い・・・私はそんなもの望んでいないのに・・・」

「それであんな顔を」

「はい、挙句の果てには年上にもお嬢様、藤崎様と呼ばれる始末です」

「だれも普通の友達にはなってくれなかったか」

「そういうことです」

「でも、そんな私でもがんばれたんです」

「がんばれた?」

「はい、ある人は私に分け隔てなく接してくれました、その人がいてくれたから私はがんばれました」

「へぇ、そんな人がいたのか」

「・・・はい、いましたよ」

(あれ・・・なんか不機嫌?)

「でも、その人はいつからか私を避け始めました、私はそれを感じました、私は何かをしてしまったと思って・・・」

「・・・」

「でも、避けられた理由が私が自分を押さえつけてるなんて思って避けていたんです」

「・・・」

「私ショックでした、そばにいて欲しかった、近くにいて欲しかったのに、私がこんなことになってしまったのはあの人のせいでもありますね!」

「・・・あの・・・」

「まったく!あの人は!まったく!」

話を聞いてくれない甘奈。

「あの~甘奈さん~」

「はい!なんでしょう!」

「その人って・・・誰ですか?」

「・・・・・あなたに決まってるじゃないですかぁああああああああああああ!」

「や、やっぱりぃっぃぃぃいいい!!??」

「大体!哲也様は鈍感なんです!もう!まったく!・・・まったく・・・」

「か、甘奈?」

「うわああああぁぁぁぁああん!!!!」

「か、甘奈!?!?」

「ばかぁぁ!哲也様のばかぁぁぁ!」

「ばか!?そ、そこまで!?」

「そこまでですよーー!!この鈍感!意気地なし!」

「意気地なし!?」

「直してください!全部!」

「は、はい!」

赤く目を腫らして、涙を溜めながら言う甘奈に反抗することのできない哲也。

「じゃあ!そばにいてください!避けたりしちゃやです!」

「お、おう、わかった!」

「ほんとですね!」

「ああ!」

「神に誓って!?」

「仏様に誓って!」

「ほんとですね!?」

「サーイエッサー!」

「うわああああああああ!」

「まだ泣くのかよおおおおおお!」


それから、30分、同じような問答が続きました。

そして、二人共疲れたのか地面に座り込んでいた。

「・・・」

「・・・」

「なあ、甘奈」

「・・・はい」

「ごめんな」

「もう、避けませんか?」

「ああ、甘奈が望むならな、でも、許嫁ってのはもう少し考えさせて欲しい」

哲也は鈍感だが、耕太ほど鈍感ではない。

そばにいてと言われればその意味はわかっている。

「私では嫌ですか?」

「そういうわけじゃない、でも、もっと考えたいんだ、すぐに決めていいことじゃないだろ?」

「はい・・・軽いのは嫌です」

「ああ、だからいまは友達で、分け隔てなく接する本当の友達でいてくれるか?」

「はい、いまは・・・それでいいです」

「ありがとう」

二人は笑い合う。

「ところで、哲也様」

「ん?なんだ甘奈」

「私の問題はあなたがいて下さることで解決しました」

「それはよかった、何か問題があるのか?」


           「哲也様の悩みはなんですか?」


「・・・そうだな、俺の悩みは・・・」


続く

どうもりょうさんです!哲也の過去~そばにいて~をお送りしました!

今回は甘奈の悩みがメインのお話となりました。

ほかにも、父愛人の葛藤などもありましたが、伝わりにくくてすみません。

さて、次回は哲也の悩みである、夢の事へと入っていきます、この過去編ももうすぐ終了となります、あと何話とは言えませんが、とにかくもうすぐです。

これが終われば、元の物語に戻っていきます、耕太だけでなく哲也も甘奈もそのほかのキャラクターも愛していただければと思います!

それではまた次回お会いしましょう!


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