哲也の過去~許嫁、そして仲間~
クライマックスです
「哲也様の悩みはなんですか?」
「・・・そうだな、俺の悩みは・・・」
「悩みは?」
「聞いてどうする?」
「うぅ・・・哲也様、そこはいうところですよ?」
「そんなことはしらないよ~」
「うぅ・・・哲也様」
「なんだ?」
「哲也様と私は友達ですよね?」
「そうだな」
「友達に隠し事なんてアリですか?」
「友達ならアリだな」
「う~・・・なら・・・許嫁では?」
「それは別かもしれないな」
「・・・では、下永哲也様の許嫁、藤崎甘奈としてお尋ねします」
「なんだ?」
「あなたの悩みはなんですか?」
「・・・聞いてもどうしようもならないかもしれないぞ?」
「聞きたいです、聞かせてください」
「わかった・・・」
それから哲也は自分の夢、父との対立を甘奈に話した。
「なるほど・・・哲也様もそんなに悩んでいらしたんですね」
「俺っちだって悩むことはあるぞ~?」
「哲也様・・・私は真面目な話をしているんですよ?」
「わかったよ・・・俺だって悩むこともあるさ」
甘奈の少し怒ったような言葉に口調を直す哲也。
「そうですよね、哲也様だって人間ですものね」
「なんだと思ってたんだお前は・・・」
「人の気持ちも知らないで勝手な理由を押し付けて私を避けてた人」
「ごめんなさい!」
哲也は土下座した。
それから甘奈はしばらく目を閉じ考えるような格好をしていた。
そして目をゆっくり開いた。
「哲也様は本当に造園がしたいんですよね?」
「ああ、本気だ、絶対に造園がしたい。でも俺には肯定者がいない、味方がいない、唯一の理解者のじいちゃんが死んじゃったからな・・・」
「・・・・哲也様はひどいですね」
「え?」
「私はずっとあなたのことを思っていたのに、あなたを否定するなんてことは一度たりともしなかったのに、あなたはどこまでも私を見てくれないのですね」
「か、甘奈?」
「哲也様、いいですか?よく聞いてください」
「は、はい」
甘奈の強い意志のこもった目に、はいと答えることしかできない哲也。
「私はあなたのことをお慕いしています、ずっとあなたの味方でいたい、あなたをずっと見ていたい」
「・・・」
「だから」
優しく語りかけるように、哲也を包み込むように甘奈はこう言う、
「私はあなたの夢を応援します、あなたのそばにいます、私があなたの肯定者となり、あなたの理解者になります、それではダメですか?」
誰もが見とれるような笑顔を浮かべながら。
「・・・!」
哲也は胸が締め付けられて、何も言うことができなかった。
やがて、やっとの思いで口を開く。
「甘奈は・・・そ、それでいいのか?」
「そうじゃないと嫌なんです」
哲也の言葉は裏返り、実にカッコ悪いものだった。
甘奈はその言葉をしっかり受け取り、はっきり答えた。
「・・・・わかった、ありがとう甘奈」
「はい、任せてください哲也様」
哲也は、甘奈を受け入れた。
二人はこれからのことを話し合っていた。
「まずは、哲也様のお父様をどう説得するかですね」
「そうだな」
「原因とかはわからないのですか?」
「えっと・・・確かじいちゃんが昔言ってた、若い頃にクレーン車が倒れて怪我をしたことがあったって、それから父さんは仕事を見に来ることがなくなったらしい」
「なるほど、だから「お前には無理」なんですね」
「たぶんね・・・」
「でもじいちゃんはこうも言ってたんだ、わしがそれでも仕事に戻ったのは金のためもあるが、それ以外にもあるって」
「それ以外?」
「それは・・・・・・・・・だって」
「・・・哲也様提案があります」
翌日、大きな車の中には哲也、甘奈、藤崎のおじさん、そして愛人だった。
「哲也、いきなりなんなんだ」
「行けばわかるって」
「藤崎までどうしたんだ」
「娘と許嫁くんに車を出してくれって頼まれてね、その時に俺も一緒にと言われてね」
「なんなんだ・・・まったく」
愛人は急に哲也に捕まり一緒に来て欲しいと言われた。
そこには藤崎のおじさんと甘奈がいた、そして今に至るというわけだ。
やがて、車は一軒の家に到着した。
「ここは・・・」
愛人はその家の表札を見て不思議そうにしていた。
そこは、昨日哲也が挨拶に来た家、近藤さんの家だった。
「哲也、挨拶回りなら昨日したんじゃ・・・」
「まあまあ、ごめんくださーい!」
「はいはい~」
哲也が呼びかけると家からは昨日と同じように近藤さんが出てきた。
「こんにちは、近藤さん」
「いらっしゃい、哲也君まってたわよ」
「近藤さん、父です」
「あら~、こんにちは」
「こんにちは、父が生前お世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ」
そんな挨拶をよそに庭の方からは楽しそうな子供の声がする。
「もう、来ていらっしゃるんですね」
「ええ、さっき来たところよ」
「上がらせてもらっても?」
「ええ、いいわよ」
「失礼します」
「はいはい」
愛人は不思議そうな顔を崩さず哲也についていった。
そして庭では。
「わーーい!」
「いくぞーー!」
「あははははは!」
三人の子供が元気に遊んでいた。
「うちの孫たちです」
「元気に遊んでいらっしゃいますね」
「ええ、私も孫の笑顔が見れて幸せです、これも鉄心さんのおかげです」
「父とどんな関係が?」
愛人が突っ込む。
「私の家の庭は昔、私の夫が手入れをしていました。しかし、夫が亡くなってからはほったらかし状態でした。そして娘も独り立ちをして、孫ができました、こちらにも何回か帰ってくることもありました。その時この周りは開発が進んで子どもがのびのび遊べる場所がありません・・・そのとき、この庭を使えないかと考えたんです」
「庭を遊び場に?」
愛人が聞く。
「はい、この庭を遊び場にすれば、子供たちが遊べる分だけの広さもありますし、なにより遊ぶ姿が近くで見れますからね」
愛人も納得がいったようだ。
「だけど、私ももう年でなかなか一人では作業なんて出来ません、だから鉄心さんに頼んだんです。鉄心さんは、子供が過ごしやすいように、遊びやすいように庭を素晴らしいものにしてくださいました。鉄心さんはその後も定期的に管理をしに来てくれて、庭を保ってくれました。鉄心さんには感謝してもしきれないんです」
そう語る近藤さんは幸せそうな笑顔を見せていた。
愛人はその顔を見て、複雑な顔をした。
近藤さんの家を離れ、次の家へと向かった。
近藤さんは帰り際、
「ありがとうございました」
と笑顔を崩さず見送ってくれていた。
次の家でもその次の家でも、出てくるのは幸せそうな笑顔とありがとうの言葉。
そして、最後に藤崎家へと到着した。
「最後はここか」
愛人はつぶやく。
「哲也、これはなんのつもりなんだ?」
「中ではなそうよ父さん」
4人は藤崎家へと入っていった。
藤崎家の庭は鉄心が手がけたものだ。
「藤崎のおじさん、この庭のこと話してくれますか?」
「ああ、この庭はな、もともとは荒れていたし、草もたくさん生えていたんだ。俺も父さんも庭に興味はなかったからな。それを見た鉄心さんがわしが庭を変えてやる!って言ったから、父さんが頼んだんだ」
「確かに、最初は荒れてましたね」
甘奈が思い出すように言う。
「ああ、それで鉄心さんは俺たちの想像を上回る素晴らしい庭を作った、鉄心さんがいなければ、この庭は荒れ果てたままだったし、庭の素晴らしさに俺たちは気づくことができなかった、それを教えてくれた鉄心さんには感謝してもしきれない」
「また感謝か・・・」
「そうだよ父さん」
「何がだ?」
「じいちゃんが大怪我をしてまで造園を続けた理由、それは、いい庭を作ったあとにみんなが見せる笑顔や感謝の言葉が好きだからなんだ」
「・・・・」
「怪我をしても、それでも自分の力で人を笑顔にできる、それをしたかったからじいちゃんは造園を続けたんだ」
「自分の力で人を笑顔に・・・」
「そうだよ!父さんもそんなじいちゃんをかっこいいと思ってたはずだ!」
「・・・!」
愛人はハッと顔を上げる。
「俺は今でもそんなじいちゃんをかっこいいと思ってる!憧れてる!だから俺は造園屋を目指したい!おねがいだ!父さん!」
「私からもお願いします」
「か、甘奈ちゃん?」
哲也のとなりで頭を下げる甘奈に驚く愛人。
「私は哲也様の肯定者であり、理解者です、ずっと味方でいると決めました、哲也様の夢を、どうかお父様も応援してあげてください」
「甘奈ちゃん・・・」
愛人は顔を歪めていく。
「下永」
「藤崎・・・」
「お前、昔言ってたろ、子供が自分で決めたことを応援してやりたい、ずっと子供の味方でいるんだって。今がその時じゃないのか?」
「・・・!」
「下永」
「・・・哲也」
「はい」
「本気でなりたいんだな?」
「本気だ」
「・・・そうか、造園は決して甘くない道だ・・・父さんが経験した道も険しいものだって聞いた、それでも耐えられるのか?」
「ああ、耐えられる、耐えてみせるさ」
哲也は愛人の目から目を離さなかった。
「・・・わかった、がんばれよ哲也」
「じゃ、じゃあ!」
「ああ、哲也の好きにすればいい」
「あ、ありがとう!父さん!」
「よかったですね哲也様」
「ありがとう!甘奈!」
こうして、哲也は本格的に造園屋を目指すこととなった。
「じいちゃん、俺はじいちゃんと同じ道を歩くことにしたよ、じいちゃんが怪我してまで続けた造園、俺も頑張るから」
鉄心が怪我をしてまで造園を続けた理由、それは笑顔と感謝の言葉が自分を幸せにしてくれる、それが好きだから。
「でも、じいちゃんから教えてもらうことはできないんだよ・・・はは・・・あれ・・?なんで涙なんか・・・」
哲也の目からは涙が流れていた、止めようとしても溢れてくる、自分ではどうしようもなくなっていた。
「教えてくれるって言ったじゃないかよ・・・楽しみにしてたのに・・・なあ、じいちゃん・・・」
止まらない、鉄心への思いが涙となり、嗚咽となり次々と溢れ出してくる。
「じいちゃん・・・」
ぎゅっ
「え?」
後ろから誰かに抱きしめられた哲也。
「哲也様、いまは泣いてください、我慢なんてしちゃいけませんよ?」
「甘奈・・・」
甘奈だった、優しく、柔らかく哲也を抱きしめる甘奈がそこにいた。
「嫌な思い出は、いい思い出で上書きしましょう、私のいい思い出は哲也様とのものばかりです、ならば今度は私があなたのいい思い出になります」
甘奈はそう呟き抱きしめる腕を強くしていた。
「甘奈・・・じいちゃんが・・・」
「はい、我慢はだめです」
「甘やかすなよ・・・甘えちゃうぞ・・・?」
「甘えて欲しいので甘やかします」
「いいんだな?」
「はい、どうぞ」
「はは、かっこわりぃ・・・」
「口調は泣いたあとは変えたほうがいいですね」
「そうか?」
「はい、もっと楽しくいきましょう」
「はは、そうだな」
「はい、でも私の前ではいいですよ?」
「そうか、ありがとう甘奈」
「いえ」
「・・・ふう、じゃあ甘えちゃうよ~?甘奈~」
「どうぞ、存分に」
「・・・うわあぁぁぁぁああああああああ!!!!」
泣いた、これまでにないくらいに、すべてを洗い流すように、甘奈に抱かれながら、ずっとずっと。
「落ち着きましたか?哲也様」
「うん、おちついたよ~」
「もう、口調かえるんですか?」
「今からは、これが普通なんだよ~?甘奈」
「ふふ、そうですね」
「ねえ、甘奈~」
「はい?」
「許嫁のことだけど~」
「・・・はい」
「俺は、もうお前しか見れないよ」
「・・・・へ?」
「ははは~もういわな~い♪」
「て、哲也様!?」
「ははは~」
「て、哲也様!いいんですか!?本当に!ほんと、ん!?」
ちゅ
「これがその答えだよ~」
「は、は、は・・・はうぅ・・・」
ばた
「か、甘奈ぁぁぁぁぁぁ!?」
いきなりキスをされた甘奈は顔を真っ赤にして倒れてしまった。
「きゅ、救急車あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
騒がしいね、このふたりは。
「いや、ここは・・・人工呼吸かぁぁ!AEDかぁぁぁ!」
落ち着けよ・・・
そして、2年後。
「ほ~ここが畑農か~ひろいね~」
哲也は畑農に入学した。
「どうも~おはようございます~!元気でっか~!」
「「「「「「・・・(ぎろ)」」」」」」
(えー・・・うっそん・・・甘奈・・・早速帰りたいんだけど・・・いや、勇気出して・・・!)
「えっと、俺っちは下永哲也っていいます、よろしくね」
「「「「「「よろしく!」」」」」」
(い、いい奴らだ!甘奈!俺っちやってけるかも!)
がら!
(ん?)
「おはようございまーす!」
「「「「「「・・・(ギロ)」」」」」」
(あっはっは!こいついいな!おもろいわ!)
同類を見た気がして嬉しくなる哲也だった。
がらっ!
(お、可愛い子~甘奈には負けるけど)
「ふん!」
「ぐは!」
(な、殴られた!?同類早速殴られた!?・・・はははおもろくなってきたわ!)
季節は夏。
「哲也様ー!」
「おー!甘奈ー!」
「あれ、哲也様・・・」
「ん~?どうした?甘奈」
「笑顔が自然に出てるし、輝いてます!何かあったんですか?」
「はは、親友ができたよ~すごいでしょー」
「すごいです!哲也様流石です!」
「はっはっは!よーし!甘奈!遊びに行くぞ~!」
「はい!」
このあと耕太と三島とバッタリ会うことになる。
人には過去があり、悲しいものも、嬉しいものもある。
嬉しいものは頭に残るし、消したくないものだ。
しかし、悲しいものはそれを上回り残ってしまう、消すことも難しい。
ならば、上書きしてしまえばいい。
それ以上に楽しいことで、嬉しいことで。
それを作るのは、仲間であり、恋人であり、自分だ。
続く
どうもりょうさんです!哲也の過去~許嫁、そして仲間~をお送りしました!
ついに哲也の過去編完結しました。
どこかで切ろうかとも思いましたが続けてみました。
少々普段より長めでしたね。
さて、過去編が終わったので次は新学期ですね。
ついに新学期が始まります。
これからもいろんなイベントがあります、お楽しみに!
あれ・・・耕太、哲也夏休みの宿題は?
あれ、なんか遠くで叫び声が聞こえますね。
それではまた次回お会いしましょう!
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