表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/249

100話『六天流の話』


 どこにでも増える植物として青竹が挙げられることもあるが、これは当時江戸の近郊でも沢山見られた。

 放っておけば竹林は広がり、土地を侵すけれども竹材と云うものは中々に使い勝手が良く、ある程度の管理がなされている。

 筍は初夏の味覚として楽しませるし、竹竿の移動販売も江戸時代からある伝統の商売だ。程よく湿気を吸い雨を弾くので雨除けのすだれや竹笠も作られ、竹炭を冬場に向けて作っておく炭焼きも居た。また、その際に出来る竹酢液は虫除けなどに効果が高く、重宝されている。

 

 武術道場を開いている録山晃之介も土地の者に許可を取って──以前勝手に取っていったら怒られたので、猪肉で懐柔した──太い青竹を何本も切って道場の外に運び込んでいた。

 鍛錬に使うのである。

 彼は汗を掻くので上半身裸になりながら、夏の日差しの下で、木槌を使って竹を深く地面に打ち込んでいる。

 浅黒く日焼けした、鍛えられた体が薄く汗で濡れていて、時折手の甲で額の汗を拭う姿は、


「どう見ても土方のあんちゃんだのう」


 冷えた麦湯を飲みながら、日陰で見守りながら九郎は感想を述べた。

 彼も若い頃は関わり合いのあった、バイト先のおしぼり屋は土建屋にも通じていたので現場の仕事もちょくちょく日雇いでやっていたことがあり、なんとも懐かしい気分であった。

 同じく影に入っている彼の弟子らも、基礎鍛錬を終えて只管疲れている様子だが師匠のやることを見ている。


「しかし相変わらず師匠は体力お化けだぜ……九郎、麦湯あたしにもくれ」

「あたしらの鍛錬の倍こなしながら背中に砂袋背負ってるからなあ……おっと、先に貰うぜ」

「てめっ」

 

 九郎の持っていた、焦がした麦を湯で煮だして、僅かに塩を加えた麦湯を氷結符で冷やして升に入れたものを、ひょいと奪ったのはお七の方であった。

 ぐびぐびと喉を鳴らす彼女に掴みかかろうとするお八を足蹴にして美味そうに飲んでいる。


「これこれ、一升あるのだから分けろよ……雨次にも飲ませてやれ。さっきから干からびておるぞ」

「大丈夫大丈夫、最近気付いたんだけど師兄って無駄に瀕死になりやすいだけで、死にはしないから」

「う、ううう」


 ぐったりと倒れたまま唸っている雨次。彼の体力はこの道場で一番少ない。体育会系に入った文学少年なので仕方ないのだが。

 

「それに雨次の奴は下手に介抱してやると、あの瞳孔開きっぱなしの幼馴染達からじっと見られて怖えんだよ」

「嫌な牽制だのう」


 仕方無さそうに、お七とお八で飲み干された升に精水符で水を注いで、雨次の口を開けて流し込んだ。がぼがぼと溺れるような音を出して水を飲み込んでいく。

 竹を木槌で打ち付ける音が響く中、

 

「よし、そろそろかなあ? そろそろかなあ?」


 手拭いを構えてじっと晃之介の労働を見ている子興に呆れた調子で九郎が云う。


「居候するようになったのにまだその位置か、お主」

「子興姉はアレだ。主人にちょっと憧れてる下女おさんの人みたいな……」

「ヘタれておるのう」

「う、うるさいよ! こういうのは日々の積み重ねが大事なの! 小生は詳しいんだ!」

「本当かー?」


 ニヤニヤとしながらお七が指を向けると、道の向こうから脚絆に動きやすく涼し気な着物姿の娘──お花が包を担いで走ってきているところであった。


「どーもー録先生。読売でーす」

「ああ、お花さんか」


 木槌を地面に置いて、晃之介は配達に来た瓦版を受け取る。

 彼のように街に出かけるよりは道場で鍛錬をしている方が多い者にとっては、事件や流行などを知らせる新聞を届けてくれるということはありがたい。後で精読するとして、ちらりと見出しだけ内容を読むに、どうやら幕府は火星人相手に開国を狙っているようだ。

 

「お疲れ様ですねー」

「これも修行の一環だからな」

「はい、番茶でもどうぞ。ちょっとぬるくなってるかもだけど」


 云うと、お花が腰につけていた竹筒を取り、晃之介に渡した。加工して作った水筒のようだ。

 晃之介が爽やかな笑みで、


「ありがたい。気が利くな」

「いえいえ、いつもご贔屓に──っと、それじゃあ!」


 歯をむき出しにして猫が威嚇するように目を尖らせている子興の視線に気付いたのか、お花はそそくさと走り去っていく。

 

「どどど、泥棒猫があ……」

「怒らずに泣くのがなんかもう駄目だのうお主」

「うあああん! ちくしょー晃之介さんのすけこましー! 男色春画描いてやるうう!!」

「ちょっと!? 子興殿! 落ち着いてくれ! 誤解だ!」


 手拭いを九郎に押し付けて子興も道場の方へ引っ込んでいく。嫌な犯行予告をしながら。

 そんな子興の様子に「しまった」とばかりに固まっている晃之介に、九郎は手拭いを持って行きながら告げる。


「追いかけぬのか?」

「……子興殿は時間を置かないと口を利いてくれないんだ……」

「お主少々女にだらしないぞ。浮気者にはうちの娘は嫁に出さんからな」


 何故か晃之介に対しては子興の父親役になっている九郎である。

 そもそも九郎との勝負も、勝てば子興を嫁にくれてやるというよくわからない取り決めによって出来ているものであったが。

 晃之介は首を振りながら否定する。


「待て待て。俺は決してそう云う、軽薄な感情を持っているわけではない。ただ──」

「ただ?」


 晃之介は手拭いで目頭を押さえながら、苦しげに云う。


「……巨乳に惑わされるだけだ」

「駄目だろ」

「いや、あれは一種の魔法みたいなものだと俺は思う。なんというか……なあ、雨次! わかるだろう!?」

「僕に振らんでください! ……いや、でもまあ」


 急に肩をがしっと掴まれた眼鏡の弟子が狼狽しつつ、言い淀んでしまう。

 以前に風呂に入っていたら女の将翁が入ってきたときをつい思い出してさっと頬に朱が差す。

 それをジト目で見つめる瓜二つなお七とお八であった。彼女らの胸は平坦である。


「ちっ。胸がなんだってんだぜ」

「案外これがいいっておっさんもいたぜ? まあ九割変態だったけどよ」

「変態も嫌だぜ」


 うげ、と手を振って頭によぎった、利悟を脂ぎった風にさせた想像上の中年を払い退ける仕草をした。


「お主、胸に関しては時々忍者かタマみたいになるのう……」

「断じて俺は不純じゃない……あ」


 竹筒で茶を飲んでいた晃之介が何かに気付いたように動きを止めた。

 九郎が首を傾げると、彼はさっと顔を逸らしながら口元を押さえ、


「……ひょっとしてこの水筒、回し飲みだったか、女人と」

「遅れてきた青春こじらせてるだけだろお主」


 純情過ぎる若者に、九郎は半眼で云うのであった。十代の頃は女人などとほぼ関わらずに、旅と修行漬けだった反動かもしれないが。

 さておき、何本かの太い竹を地面に打ち込んだ晃之介は弟子らを呼び寄せる。

 竹は高さ五尺ほどになるように地面に打ち込まれ立っていて、しっかりと固定されていた。


「それじゃあこれから六天流の格闘術──その中でも、打撃を主にしたものを教えるぞ」

「これまでは教えていなかったのか?」


 九郎の疑問に晃之介は頷く。


「そもそも六天流の素手から出される技は、投げたりふっ飛ばしたりして間合いを広げるものが多いんだ。間合いをあけて、また武器を拾い上げ攻撃する方が有利だからな」

「ふむ」

「で、それらは受け身さえ教えればある程度手加減して受けさせることができる」


 と、彼が云うと弟子の三人は微妙そうに顔を見合わせた。


「嫌ってほど受け身させられたっていうか」

「吐くまで投げ飛ばされたから、もう覚えないと死ぬかと思ったぜ……」

「最終的に道場の屋根から突き落とされて、地面で受け身取ってたからなあ……」

「晃之介……時が時なら児童虐待で訴えられておるぞ」


 ジト目で見てくる彼らに、きょとんとした顔で晃之介は返す。


「何を云ってるんだ? 最終的……というのは三段ぐらい連続してる滝に突き落とすからまだ先だぞ」

「嫌なことを聞いた!!」


 子供らが一斉に頭を抱える。ともあれ、どのような状況でも地面に打ち付けられる衝撃を減らすのは基本であるようだ。

 晃之介の解説は続く。


「一方で打撃、蹴撃技は型なら教えられるが、手加減をしては威力も伝わらないからな。俺もあまり使わないもので錆び付いているかもしれないと思ってこうして準備したんだ。九郎との再戦もあるからな」

「熱心だのう……」

「とりあえずやってみるか。蹴り技の一つ」


 晃之介は立ち木の前に立って体を半身に構えて全身に力を込めた。 

 圧力とでも云うべき気迫が九郎達にも伝わる。竹相手に仕掛ける技であるが、晃之介の顔は真剣だ。

 

「まずは爪先と相手の鳩尾に突き入れる」


 言葉通りの動作をして──衝撃音に見ている者は目が点になった。

 晃之介の爪先蹴りで彼の足指の先が竹の分厚い幹を砕いて穴を開け突き刺さっていたのである。

 だが、それを当然とばかりに晃之介は足を軽く曲げて、


「その鳩尾を突いた箇所を足場に飛び上がって、相手の側頭部を逆の足で薙ぐ」


 突き破った竹の幹を足場にした晃之介の横蹴りが、竹の最上部を真横に薙ぎ払ったのである。

 まさに、蹴られた部分がナタか何かで竹を切断したように千切飛ばして消滅させた。

 

「……」


 絶句する九郎達を気にせずに晃之介は軽く宙返りをして再び地面に降り立つ。


「これが蹴り技の[光魔脚こうまきゃく]と云う連撃だな。背の高い相手にも使える」

「己れを見ながら云うな! あんなシャイニング系の技を己れに使う気か!?」

「ああ!」

「いい顔してるこいつ!」

「大丈夫だ。見せたということは九郎なら防げるだろう」

「そんな威力で防げるか!」


 青竹の強度は健康な成人の人骨に等しいと云う。

 晃之介の蹴りで、割れることもなく切断された竹の破片を弟子らは拾って顔をしかめていた。下手をすれば自分らの鍛錬でこの技を浴びていた可能性がある。

 九郎は、以前に影兵衛との決闘で腹部に刃物付きの強烈な蹴りを食らったことを思い出して腹を押さえた。そのときでも寒さで痛覚が吹っ飛んではいたが、腹マイトが爆発したような衝撃を受けたというのに。 


「九郎が防御することを考えてこういう技もある」


 続けて晃之介が見せたのは真っ直ぐに右拳を引き絞り、腰の捻りと脚の踏み出しを連動させて正拳突きに似た拳打を竹に放った。

 ぱん、と軽い炸裂音がする。

 今度は拳で殴った部分に破損は見当たらなかったが───。

 どういうわけか、そこ以外の数カ所が内側から破裂したように弾け飛んだのだ。


「殴った衝撃を相手の体に伝播させて、防御以外の場所を破壊する技──[気穴殺きけつさつ]と云うんだが、特殊な訓練を受けていないと撃てないし、防御もできないから注意しろよ」

「ようし、晃之介と闘う気がモリモリ減ってきたぞ」

「武器使った技でもそうだけど、基本的に必殺技だからなあ師匠の流派」


 複雑そうな顔をするお八である。商屋の娘が護身で習うにはかなり物騒であり、厳しい流派だ。そこで修行をもう二年も続けているのだが。

 そして次々に晃之介が弟子らに解説する為に実演を続けていくのだが……


「次が右手を縄の様に柔軟にして鞭打のように水平に打ち付ける[西国投縄打ち]」


 首辺りの高さで竹がへし折れる。そこに更に連撃を入れつつ。


「足を破壊すると以降は全て有利になるからな。最下段を刈る[奈落払い]から打ち下ろしの[流星脚]───」

 

 晃之介の解説を、九郎はやがて遠い目で見るようになるのであった。


(あれを己れはそのうち食らうのか)


 次の戦いでは毒でも盛ろうか。

 或いは影兵衛辺りに代わりを頼もうかと思う九郎であった。案外喜んで引き受けてくれそうだ。

 軽々しくバトルマニアと戦いの約束をしてはいけない。九郎はそう心に決めた。





 ****** 


 


 実演が終わり、晃之介も休憩として日陰に入って木の根に座り込んだ。

 日差しは熱いが風は涼しく、また今朝まで雨が降っていたので砂埃もそうは立たないので影にいれば過ごしやすい天気である。

 とりあえず弟子らは各々、六天流の格闘術について話し合っている。


「どう考えても僕があれを出来るとは思えない……」

「そうか? あの威力はともかく、あたしならやれそうな感じはしたけどよ」

「七公は身軽さだけは得意だからな……あたしより。っていうか何だあの衝撃が伝播とかする技。尋常じゃねえって」


 と、それぞれ弟子にも得意不得意がある。 

 例えば最後に弟子入りしたお七は誰よりも身軽で度胸もあるので、格闘や短刀に適正がある。

 お八も似た様なものだが、心構えの差で実戦となればやや劣るだろうが、弓術は飽きっぽいお七と違い真面目に覚えているので勝る。

 雨次は男なので剣術を熱心に覚えつつ、臆病さからか離れて戦える長物の扱いにも重点を置いていた。

 仕方無さそうに晃之介は云う。


「確かに、六天流は全部を極めるのは難しいらしいから得意なことだけでも習得してくれればいいんだが」

「後継者とか居らんで大丈夫か」

「俺が道場を続けていられる間に見つかれば御の字だ。結構、流派の技術が失伝していた時期もあったらしいんだが、こうして槍術だけとか、剣術だけとか伝わっていたものを俺の親父がどうにか探し集めて纏め直したんだ」


 ただでさえ鍛錬が過酷で、特に体が出来上がった大人から修行を始めるには厳しい修行なのである。早々、全てを使いこなせる者が見つかることは無い。 

 それこそ晃之介の父・綱蔵つなぞうの様に鬼のような執着力で修行の旅を続けて修得するか、その鬼から幼少時より仕込まれた晃之介などでなければ難しいだろう。鬼は河豚の毒で死んだが。

 刀、短刀、槍、棒、弓、素手の一つ一つのみならず、それらを組み合わせた連続動作や、神秘性に片足を突っ込んだ力の流れまで身に付けなければ六天流の正統後継者は名乗れない。


「しっかしよー、普通に考えたら九郎の兄ちゃんより師父の方が強そうなもんだけどな」


 お七が頭の後ろで手を組みながら疑問を口にする。


「そりゃ九郎の兄ちゃんは腕力がものすげえけど、日頃稽古をしているわけでもなし、やくざみたいなもんだろ?」

「ふむ……確かに晃之介の方が才能があるし、普段の模擬戦での勝率もあやつがぐっと高いのだぞ?」


 素直に九郎はそれを認めて告げる。

 彼の強さは相力呪符に依る腕力と、人生経験から来る判断力ぐらいのものだろう。まともに剣術の鍛錬をしたり、切った張ったの戦場に出ていたのはもう六十年以上も昔になる。

 鍛錬として打ち合いをしても、晃之介が手加減をしているから何とかついていけているぐらいだ。

 だが晃之介は神妙な顔で云う。


「いや、居るらしいんだ。こう云う手合いは」

「こう云う?」

「不必要を削ぎ落した強さとでも云うか……九郎は様々な妖術の装備を持っているだろう? 確か火や雷を出す札に、光を放つ刀。空を滑るように躱す衣など……だが、恐らく──全部置いて素手で挑んできた場合が一番九郎の勝率が高くなるだろう」

「……なんで?」

「窮地に活を見出す力というか、背水の構えというか……とにかく、普通は素手より刀、刀より槍、槍より弓と云うように武器を持っていた方が強いのだが、素手が一番強いという手合も存在する……らしい。

 自分が不利な条件ほど勘が研ぎ澄まされ、相手の動きを読み取れるようになる。全ての致命打を読み通り避けることができて、拳の一撃で相手を倒せるのならば武器は不要──とな」


 それは単純な戦闘力ではなく、精神的な理由に近いのかもしれない。

 普通はそんなことは無く、武器を持ったほうが強いに決まっている。だが、理解の範疇が及ばぬ領域に至った時にそのような超感覚とでも云うべき状態が発生する可能性はある。

 錯覚かもしれない自分の勘に従い、低い可能性でそれらが全て合致して相手を倒すことが出来る確立は如何ほどだろうか。

 しかしここぞと云う場面でそれを行えると云う人間が居るのだと、晃之介は云うのであった。

 

「……そうだな、それにも関わることだからここは一つ、六天流の話でもしよう」


 彼は頷き、何やら思い出す仕草で頭をこつこつと叩いてから語り始めた。


「六天流自体の始まりや、歴史などの話は口伝で親父から教えられていてな。俺もまた、弟子や子供に伝えろと云われている……ただ」

「ただ?」

「どうも荒唐無稽な語り口だったもので、結構な部分を聞き流してしまって」

「当てにならぬのう……雨次や」

「はい?」

「後で何かに記録しておけよ、話のネタになるかも知れぬからのう」

「あ、そうですね」


 師の不出来を見るような目線を向けられて、晃之介は手のひらを向けながら否定する。


「いや、本当に胡散臭いんだ。聞けばわかる。だって親父から聞いた話ではこう始まるんだぞ。『六天流には千年の歴史がある──』」 

「あー」

「つい盛っちゃってるような数字だぜ」

「『六天流武術を極めた者は、その武力で皇帝にまで成り上がった──』」

「引き返せなくなった感じがしっかり出てるのう」

「お、おうとしか返事できないぜ」

「だろう?」


 晃之介も信じていないような顔で苦々しく云う。

 千年も続いている武術などとは明らかに眉唾ものである。後継者も現在のところ晃之介一人しか居ないような、細々としたものだと云うのに。

 

「例えば日本で古い歴史ある武術と云うと[香取神道流]がある。これもまた、総合武芸として剣術のみならず、槍や棒、手裏剣に柔術なども教える、少し方向性は似たものなのだが──神道流も確か創始して三百年ぐらいだ」

「千年前というと奈良に都があった頃だろう、確か」

「年代はともあれ」


 咳払いして晃之介は話を続けた。


「元々は大陸の方で生まれた武術らしい。千年前と信じるならば唐の時代だな」

「中国かインドならありそうな気がしてくるのう」

「開祖──と云っていいのか、ある男とその友人が二人で作り上げた武術なのだそうだ。その話だけは覚えている」


 水筒の番茶を飲み干して口を潤して、思い出しながら云う。


「その男と友人は幼馴染と云ってもいい関係でな。時には共に商売をして、共に盗賊として官軍相手に戦い、共に官軍に下って兵士になったりしていた相棒でもあった。

 男はどちらかと云えば不器用な方で、友人は如才無く世渡りが得意だった。また戦いでも、男は中背でどの武器を使っても二流であったが、友人は七尺近くありながら虎より身軽で強靭であり、象を踏みつぶすような豪傑であったらしい」

「対照的だなー」

「そうだな。それでも二人は仲の良い友人であったが、男はやはり意地として友の強さに近づきたいと思って修行を始めた。

 ただどうやっても友のように、素手で巨木を薙ぎ倒し岩を砕いたり、風のような恐るべき素早い身のこなしで動きまわったりしていたと云う武芸を習得することは無理だろうと思ったのだな」

「いや、何だその超人は」


 中国はすぐに逸話を盛る、とばかりに九郎はやはり眉に唾をつけるべきかと悩んだ。

 しかしそれは狐や狢が化かした場合なので効果は無いかと思い直し、そして晃之介に誇張する意図は無く恐らく聞いたまま伝えているのだろうと判断して話の続きを促す。嘘の創作を出来るほど器用ではなく、そもそも彼自身の修行話でも熊と戦ったとかそう云う話が多い。


「素手では一段も二段も劣る。ならばと男は剣と短剣を両手にそれぞれ持って修行を始めた。武器が増えればその分手数が増やせる。しかし男が鍛えても、一流の剣使いには勝てない。

 すると男は今度は槍に棒を持ちだして、剣を使う相手にはそれらの長物で対応することにした。長物には次に弓を持ちだして、戦場に出る友に必死についていった。ただ、どれも一流にはなれなかった」

「弓の次はどうしたんだぜ?」

「そこが武器を持ち替え続けた男の発想の転換でな。弓を持っている時にどう接近されれば嫌か、両方の使い方を学びながら考えたわけだ。そしてよく観察し、相手の狙う弓の角度や飛んできている矢の動きを見て一瞬で着弾点を読み、避けられる様になった。

 それと同じく、剣槍棒拳の弱点と利点を研究して、どの相性であっても戦える立ち振舞いを身に付けたんだ」

「凄いな……」

「一方、友の方は飛んでくる矢を素手で掴み取るわ、拳の風圧で軽く散らすわとまったく問題にしていなかった」

「めげそうな環境だなあ」


 晃之介は肩をすくめて笑みを浮かべ、告げる。


「友も友で、男と協力して自分の武術を高めていたんだ。そして男が練り上げた幾つもの武器を使い、相手の動きに合わせて有利に勝負を進める武術を[六天流武術ろくてんりゅうぶじゅつ]、友の素手のみで行う無双の格闘術を[六山派掌術ろくざんはしょうじゅつ]と名乗った。

 実際は漢語だけどな。互いに鍛えながらも、いつか友を越えて見せると男は修行に修行を重ね続けたんだ」

「それで、どうなったんだぜ?」

「才能が無かった男だが、鍛え続けておよそ五十年。二流だった武器も格闘も、一流と名乗れる領域に達して六天流は完成を迎えた。だが──」


 少し顔を曇らせて、話を続ける。


「その時に友は死んでしまった。無双の強さを誇った友だったが、あの国は広い。達人である敵二人と戦い、傷ついたところを自らの子と弟子に襲われて命を落とした。

 男は即座に仇討ちとして、友の子と弟子を打ち倒した。その二人も相当な使い手であったが、完成した六天流の前では敵わなかったのだそうだ」

「少年漫画みたいな展開だ」

「それからそれから!?」


 お八などは目を輝かせている。


「しかし男は虚しかった。越えるべき相手を失ってしまったのだ。思えば彼の半生はずっとそれだけを追い求め、友と一緒に戦い続けて鍛え続けた。仇を討ったのだから越えたと云う者も居るかもしれないが、実感はまるで無かった。

 だが男は気づいた。友は六山派掌術を幾人かに伝授していた。それらの弟子達の実力はまるで友には及ばないが──いつの日か、友のような使い手が現れるかもしれない。

 そこで自らの六天流武術も息子に教えて伝えさせ、未来に自分が遺した武術と友が遺した掌術が競い合うことを願った──」

「おお! それで、その子供が伝えたのが色々あって師匠に回ってきてるんだな!?」

「そうだな。まあただ、男が弟子にした息子は相当才能があったらしく、男の五十年掛けた修行の成果を一年か二年で習得してしまって開祖は余計意気消沈して死んだらしいが」

「嫌なオチが付いた!」


 語り終えて、晃之介はがしりと近くに座っている九郎の肩を掴んだ。


「だから九郎」

「な、なんだ」

「俺が思うにお前は六山派掌術の才能がありそうなんだが、ちょっと清国に行って修行してこないか!?」

「こねえよ、怠いから」


 ばっさりと手を払いのけられて拒否され、晃之介は残念そうに「そうか……」と顔を落として呟いた。

 伝承からするに、六山派掌術は非常識な怪力と素早い身のこなしが必要であるらしいので、晃之介はその両方に合致している九郎に或いはと思って勧めてみたのであったが。

 

「俺が知っていれば教えられるんだが、知らないんだよなあ……」

「お主の六天流の格闘術も大したものだと思うが」

「あれは云わば、小手先の技術を使っているところが少なからずあるんだ。関節や肉の薄い部分を狙ったり……六山派だと城を殴り壊すような力があるらしい」

「殴り壊してどうする、殴り壊して」


 二人の会話を聞きながら、子供達三人は顔を見合わせて、


「どうも武芸の上限が凄まじく高いところにあるぜ……」

「師父って天然に基準おかしいところあるよな……」

「僕は護身ぐらいできればいいかな……」


 などと、達人おとなの世界に入れそうに無い身を嘆くわけではないが、なんとも云えない表情になるのであった。

 九郎も溜め息をつきながら、


(地味に変な歴史の世界だよなあ、ここも)


 そう考える。考えても仕方ないことではあった。自らの生まれた世界の過去に来たと云う状態の筈だが、住み続ければ時折そう思う。

 間違いなく地球であるのだが、微妙に常識が通じない部分があるのだ。変な絵師や妙な同心、妖しい現象に如何わしい事件。

 ただ九郎の持っていた常識と云うのが、必ずしも正しいとも彼は思えない。

 人が自ら住む世界の情報を過去含めてどれだけ正確に把握していると云えるだろうか。少なくとも九郎は機械式冷蔵庫の仕組み一つ詳しく語れない程度にしか知らないのだから。


(まあ、どうでも良いことか。住めば都だ)


 たとえどの世界だろうが、美味い飯と友が居ればある程度は充実して生きていけるのだ。

 感慨に耽っていると、お七が鼻を何度か鳴らした。


「ん? 甘い匂いがするぜ。そろそろ八つ時だから、子興姉ちゃんが菓子でも作ってんのか?」

「鼻がいいなあ、お前。あたしは何も感じねえけど」


 お八も真似をして見るが彼女には僅かな匂いは捕らえられないようだ。これも生まれと育ちの差だろう。

 晃之介も立ち上がって、


「どうやら機嫌も治ったようだ。食いに行くか、九郎もな。子興殿はその……料理上手でいいな」

「惚気けるな惚気けるな」


 早くもお七とお八は走って道場へ向かう様子であった。

 九郎は座ったまま彼女らを見送っている雨次に「どうした?」と声を掛ける。


「いや、お七さんって鼻がいいのに結構自分の風呂に入っていない匂いには鈍感だなあって」

「しゃおらあああ!!」


 ダッシュで戻ってきた二人から蹴りを入れられてぶっ倒れる雨次であった。


「女の子に臭いがどうとか口にするなって躾けを忘れたらしいな!」

「余計なお世話なんだぜ、この野郎め」

「そして七公! お前はちゃんと風呂に入れよ!」

「余計なお世話なんだぜ」

 

 九郎は叱り飛ばすお八らを見て、呆れたように呟いた。


「やっぱり姉妹か何かだろ、お主ら」


 そしてやはり同時に「違うぜ!」と返ってくるのであった。





 ******





 昼八ツ(午後二時ぐらい)に間食をする習慣は当時からあったのだが、甘いものよりも炒り豆であったり、小魚であったりした場合も多かった。

 奄美琉球からの砂糖輸入により菓子の値段が下がっていく時代であるものの、まだ誰もが食べられるわけではない。

 とは云え時代がやや下れば、この時期に栽培成功している薩摩芋が江戸で流行するのであった。

 まあしかし、子興は石燕からの持参金とばかりに、晃之介の居候をする生活費を渡されているのでそれで甘味を作ったようだ。


「……」

「……」

「……」


 道場に並んで目の前に菓子が出された一同、一点を注目して静まっていた。

 九郎達に出された菓子は凝っていて、取ってきた竹の細い部分を使い、節をくり抜いて綺麗に洗った筒にゆるい水羊羹を流し込んだ竹羊羹である。

 口に端を入れて傾けるだけでひんやりとした寒天と砂糖の甘味がつるりと落ちてきて、竹の爽やかな匂いもあり夏らしい和菓子だ。

 それ以外にも竹の皮を使って蒸し上げた団子にきな粉をまぶしたものもある。

 食いでがあり、きな粉の粉っぽさは口に張り付くようだが、茶を続けて飲むことで味わいが広がり、


「うまい……のであるぜ」


 と、気にせずにぱくついているお七は食っていた。

 皆が沈黙しているのは、晃之介の目の前に出されている菓子だけ違うからだ。

 滝のように汗を流しながら、


「ごくり」


 と、言葉に出すようにして息を呑んで晃之介は尋ねた。


「あ、あの子興殿? これは……」

「師匠とタマちゃんに教えてもらった、三河名物の[大拝饅頭おおぱいまんじゅう]。晃之介さんの好物でしょう……!」


 そう、彼の目の前だけ皿に載せられた、白いクリーム的なもの(卵を使ったクリームは石燕が以前に開発している)を成形して作り、頂点に紅寒天を載せた──女性の乳房を模った三河が誇るサイコスイーツ!

 他の巨乳女に目が行っていたことを明らかに責められているのである!


(どうすれば正解なんだ……!)


 汗を掻きながら、どう考えても「いやあ子興殿はさすがだな」と朗らかに大拝饅頭を食らう雰囲気ではないことだけは察して、晃之介は固まった。

 むしろ手をつけたら「晃之介さんなんて胸と結婚すればいいんだあああ!」と再び拗れるだろう。

 言い訳を始めるのも悪手だと考えた。口が上手く丸め込めるのは隣に居る細くて長い、物を縛るヒモならば可能だろうが、晃之介には自信が無い。

 武術の鍛錬は教わった通りに行えばいいのだが、女性関係はいつでも手探り状態なのである。

 周りの皆も彼の対応に気を向けている。いつもの事なお七だけは例外だが。

 彼は流れていた汗を根性ですっと止めて、爽やかなイケてる笑顔を作って子興に手を伸ばした。


「子興殿。これから共に浅草寺にでも出かけないか。俺はその……君と一緒に金龍山の饅頭でも食いたいな」


(話を逸らしたな)

(話を逸らしたぜ)

(成程、ああやるのか……)


 雨次だけ感心していたが、果たして子興は──、


「はい! それじゃあ出かける準備をするよー!」


 嬉しそうにしていて、どうやら機嫌を治していたようだ。保護者である九郎からして「ちょろいのう」と思わず口走る。

 晃之介が満足気に息を吐いて胸を撫で下ろした。


「実際のところ、怒っていたというか戸惑っていたのだろうのう……と云うか晃之介」

「な、なんだ」


 九郎はじっと彼を睨むようにして見ながら云う。


「変な誘惑に乗るでないぞ」

「わかっている!」

「あっちこっちにふらふらして女にちやほやされるなどと、恥ずかしいと思わねばいかんぞ」


 一斉に「お前が言うな!」と晃之介とお八に異口同音に非難される九郎であった。


 さて、汗まみれの道着を着替えて晃之介と子興が出て行ったのだが。

 道場の掃除までが弟子の仕事だが、それよりも先におやつを片付けなくてはならない。

 主に晃之介が残していった大拝饅頭のことだが、皆食いたくないと云うので仕方なく九郎が食べることになった。


「いや! 待て九郎!」


 と、お八が止めて皿を奪い取る。

 すると彼女はゆっくりと、大拝饅頭を上から押さえつけてそれをなるたけ平坦にして、一仕事終えたような顔で九郎に返した。


「よし、いいぜ」

「何の意味があるのだ、何の」


 憮然と突っ込みながら、嘆きの平坦饅頭を匙で器用に皿から剥がして一口で食べるのであった……。





 ******





 その後、掃除を任せた子供達を置いて九郎は石燕の屋敷にぶらりと寄った。

 そこでは石燕が胡瓜を細切りにして、鰹節と刻んだ紫蘇を混ぜて醤油で和えたつまみで一杯呑んでいたので相伴することにする。

 この前つい夕鶴に胡瓜をバリバリと食わせたが、品種改良が進んでいない胡瓜は苦味が強く、学者の中には毒があると云う者さえ居るようなものである。ただ、ぬか漬けにすれば毒が消えるという民間伝承で漬物の実としては売られていたのを九郎は買ったのだろう。

 うまいうまいと食べた夕鶴は単に舌が貧しかったのだ。

 ともあれ、石燕が苦味を程よく和らげてつまみに丁度良くしたそれを一緒に食べながら、冷酒で夕方を過ごす。

 話の種は今日の晃之介だが、


「六山派掌術とな。成程これから私と九郎くんは清の国に行って修行編になるわけだね!」

「いやいかんが。と云うか行けないだろう、船が出てないから」

「九州沿岸辺りの漁師ならば小舟一つで大陸まで渡るのも難しくはないらしいよ? それにいざとなれば九郎くんが飛んで行ける。蘇州辺りは賑やかで酒場を兼ねた料理店が江戸の比じゃないぐらい乱立している……のだが」

「だが?」


 苦笑するような言葉尻に、九郎が問いなおす。


「今の時代だとあの国にこっそり混じるのは難しいかもしれないね。清になって、男子は弁髪が強制されているから」

「そういえばそういう時代か」

「標語は『弁髪じゃないなら頭が要らないということだよね?』という物騒極まりない活動が起こったのだよ」

「恐ろしいのう」


 云われて九郎はややぼさぼさとして、不老の為に伸びない髪の毛を軽く弄った。

 日本でも基本的に髷は結うのだが、侍などの公的な立場になければそう強制はされない。

 一般の町人らも習って整えているのが多数派だが、九郎のようなはみ出し者は気にしなければ問題は無かった。

   

「そう云えばお主、知っておるのか? 六山派掌術」

「ふふふ! この過去を見通す阿迦奢の魔眼を持つ超絵師鳥山石燕に知らぬことなど無いよ! 六山派掌術には千年の歴史がある──極めた者は、その武力で皇帝になった──」

「あ、いや別に語らんでもいいが」


 語り口が晃之介のホラめいた前置きにそっくりだったので半眼で止めた。

 

「それにしても、晃之介くんと子興は上手くいけてるかね」

「まあ……大丈夫だろう。二人共善人──」


 ふと、九郎の脳裏に晃之介が悪党の懐を探ったり落ちてる金を拾ったり密猟をしていたり罠を盗んできたりしていたことが、回顧された。

 首を振って、


「善人であるのだからな」

「今無理をして言い切らなかったかね?」

「そんなことはない」


 石燕もそれ以上は追求せずに、酒を揺らしながら云う。


「子興もいい年をしているのだからね、そろそろ良人と一緒にしてやらねばと思っていたのだよ」

「……そうだのう」

「あの子は若い頃に家族が離散して、身寄りも無い。頼れるのは私だけであった。ずっと接していれば情も湧く。だからなんというか……」


 九郎を横目で見て、目があったので慌てて逸らしながら石燕は告げた。


「九郎くんが子興の父役なら、さしずめー? 私はー? 母役ーというかー……」


 微妙にヘタれながらの発言ではあった。


「石燕」


 九郎が、優しい声で彼女に語りかける。

 少し間があって、彼の声がゆっくりと続いた。


「──お主も寂しいなら再婚相手でも探してやろうか……?」

「凄い駄目な選択肢を踏み抜くね君は! 微妙な関係だったら君の事見捨ててたぐらいアレだよそれ!」

「何がだ──いや、待て」


 九郎はふと思った。そもそも石燕の再婚相手など見当も無く、嫁がこのだらしない先生略してだら先だと下手に男に薦めにくい。

 そしてむしろ。

 

(石燕に男ができたら酒の相手に来れなくなるのう……)


 さすがに幾ら友人でも、よその嫁相手に飲みに来るのは非常識だ。

 彼女と飲むのはかなり心地よい時間であるので惜しい。

 つまりは九郎も寂しいのである。つい、日頃から石燕は居ても当然の友人だと思っているのだから。

 そして更に、と考えたこちらはつい口に出た。


「石燕が再婚したら金を借りれなくなるのでは……」

「うわあ今すごく最低なゲス悩みが聞こえた! ちょっと前の記憶を消す術を掛けてくれ将翁! 将翁は居ないのかね!」


 一緒に飲めなくなると寂しいとかそういうことを呟いたならばまだ良かったのだが、よりにもよってと云う内容であり石燕は頭を抱えた。

 九郎は耳を塞ぐ彼女の手を取って、悟ったような顔で云う。


「無理に相手を見つけずとも気にするな、己れがいつまでも(飲み友達として)居るからのう」

「くう! 記憶さえ消せればわりといい気分になれるのに!」


 相も変わらぬ関係で、仲良く騒ぐ二人が居たという……。

 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ