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TYPE60  作者: サヨツー
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5話

クリスが観測機隊と書かれた扉を開くと、複数名の人物が一箇所に集まっている様子が確認できた。

何かを使って外の様子をリアルタイムで確認している。

どうやら中にメイジが混ざっているようだ。

何か使い魔のようなものを使っているのか魔法で投影された映像は一人称ではなく三人称だった。

「使節団員が何かようか?」

金髪の男性が彼に気がついた。

「いえいえ、面白そうなことをしていると思ってね」

頭が悪そうな男だ、クリスは彼をそう考えた。

「ご無沙汰しています使節殿」

低い声の男性が後ろに立っている。

それはジェイコフという男性だった。

「こいつはラット、果たし状の送り主ですよ」

彼はそう続けた。

横ではラットという男がウインクをしている。

「なるほど、どうりで」

続きをクリスは言わなかったが、ジェイコフも同感であるかのような仕草をした。

「見ての通り、うちの隊のメイジ戦いを写してくれています、おそらく艦橋で見るより遥かに良いものが見れますよ」

彼はそう言うと、クリスを映像が投影された石板の下へ案内した。

ジェイコフをターンしてどこかへ向かうと、コーヒーを両手に戻ってきた。

気がきくじゃないか、クリスはそう思った。

クリスは石板に目を移す。

丁度、飛行機が十分な高度まで登ったところで、そろそろ試合開始といったような状況だった。


トリスタン ロベールは高度計を確認すると、操縦桿をゆっくり前に倒した。

周りには壮観な眺めが広がっている。

ジャクソンから黄色い照明弾。

試合開始である。

ロベールは正面から銃を撃ちつつ接近していく。

騎士は悠々とそれを回避し、負けじと撃ち返す。

彼はラダーを動かし、機体を少しずらしながらそれを回避した。

騎士はロベール機の右を掠めるように、すれ違いざまに数発のペイント弾を当てる。

ペイント弾に当たった金属板がベンッという大きな音を立てる。

「くそが」

速度を落とさず真っ直ぐ進む。

相手も方向を変えると、真っ直ぐロベール機に向かってくる。

すごい加速だな、彼は素直に感心しつつ操縦桿を大きく引いた。

「教官直伝のマニューバ……」

そう言い切る暇も与えてはくれなかった。

相手は彼のすぐ後ろにピッタリとくっついている。

「そう簡単にはいかないか…」

ベンッという心地の良い音が鳴る。

機体全体からだ。

まぁ、そうなるな

ロベールはそう思った。


弱いものを一方的に攻撃するというのは気が引けるな…

現在のアイラの心境だ。

アイラは機械的に相手を追い、それを狙う。

手袋を落とした相手は実に愚かだ、

そう思う一方、それを拾った自分にも非はある気がした。

退屈しのぎにでもなるだろうと思ったアイラは敵機直下を掠めると、その射線上に入りつつ直上へ移動した。

少し遅れて引き金を引く姿が見えたが、もちろん当たるわけもなかった。


ロベールはその様子を見て完全に火がついた。

「舐めるな」

操縦桿を前に押し倒す。

機体は下を向き、真っ直ぐ急降下していく。

騎士はそれを追う。

速度計を確認、高度計も確認。

操縦桿を引く、水面と並行になる。


観測機隊控室、ロベール機の急降下を見たクリスはそれを追うアイラの姿も確認せず、一度は軽く発狂しそうになりながらジェイコフを睨んだ。しかし、激しい機動をする飛行機とは正反対に常に数歩後ろからそれを観察し冷静に後ろを取り続けるアイラの姿を見てため息をついた。


「まだ着いてくるか!」

ロベールは再び操縦桿を引いた。

機体が大きく持ち上がる。

急上昇

同じ場所に繰り返し当たっているせいか、ペイント弾の音は元の心地よい音からベチャッという汚い音へ変わっていた。

「賭けに出るか」

彼は高度計を確認しながらそう言った。

さらに操縦桿を引く。

スロットルレバーを低回転に

機体は逆さまになった。

エアブレーキを展開し、速度を落とす。

ロールして垂直に向く。

揚力を失った大木は滝に流されるように降下した。


アイラは不意を突かれたような気がした。

突然相手を見失ったからだ。

周りを見渡す。

間に合わなかった。

甲冑と箒にいくつかのペイント弾が当たる。

強い衝撃を覚え、下を見ると、自分が相手の射線に捉えられているとわかる。

「まるでテレポートだな」

アイラは速度を上げて相手の射線から外れる。

「所詮、うどの大木か食えもしなければ建材にもならない」

方向を変えて接近、相手に狙いをつけた。


そこで紫の照明弾が上がり試合は終わる。

勝敗は誰が見ても明らかで、

ロベールはベトベトになった機体を見ながら「まぁ、接待だからな」と自分に言い聞かせた。


クリスは何事もなく試合が終わったことに安堵した。

アイラは相手が取るに足りない相手だったということは十分理解しつつも最後に見せた動きには強く感心していた。


ロベールは機体を水面に浮かべる。

曳航用のワイヤーに機体が固定されると、揚収を見届けずにボートに乗ってジャクソンに戻った。

途中、空に箒に跨る騎士が見えた。

「綺麗だな」

ジャクソンに変えると観測機隊の仲間が彼を待っていた。

ラットがどうだったと呑気に問いたので。

殴りたい気持ちを抑えつつ「今度から自分で行け」と言った。

ある人物は彼のために酒を汲んだ。

負けたとはいえ、箒乗りに一矢報いた彼はこの場ではヒーローだった。


アイラがジャクソンに戻ると、クリスが仁王立ちで待っていた。

「気はすみましたか?」

クリスが嫌味混じりに聞いた。

「いい余興だった」

彼女はそう答えると、甲冑を脱いだ。

彼女はいたって正常な呼吸で、汗すらかいていなかった。

「さすが王国航空隊だな」

クリスはそう思った。


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