子供のすることに嫉妬するとは、俺もまだまだだな。
おはよう御座います。こんばんは。こんにちは。自分とハインにお付き合いくださる方ありがとうございます。またお付き合いお願いします。
魔王城は今日も綺麗。見晴らしの良い大理石の床、柱、天井は輝いている。
細々と瞼を開き、紫水晶の瞳を覗かせハインは頭をかき起きた。
「おっはー。魔王さま、よく寝られた?」
今日は、スライムと目が合うとこから一日が始まった。
スライムは、元気よく床を跳ねながら、相変わらず床をピカピカに磨いている。
「ホワワ。見たら解るだろう? この数が目に入らんか。どいつもこいつも、嫁を取ってから更に押し寄せてくる。どういうことか!!」
「あっ、ホントだ。目の下にクマがある。しかも数はどれどれ………」
スライムは、数を数えるために床から跳ねてはハインの横に寝そべる女の数を数えている。
「一」《ピョン》
「四、六」《ピョピョピョン》
「九……」《ピョ……》
「煩いわ、跳ぶな」
「あっ──」
苛立ったハインは、スライムに目掛け細い雷を飛ばすと命中した。外に一直線に飛んで行くスライムがいる。
「ったく、ノアでも気を遣うのに、こいつらは……」
(まぁ、我々魔族はこと性欲が高い。仕方がないが……だが、相手が無尽蔵に押し寄せると、疲れるだけだな)
「ノア様は気を使われるのですか。素晴らしいですね」
「ああ、俺になって────!!」
声がするので応えると、先ほどのスライムが戻っており、分裂していた。
尋ねてくる顔の真顔さの気持ち悪さに外にまた放り投げた。
「いって!」
外から子供の声がする。
しかも人間の声だ。
(おかしい。人間? 魔王城に人間。最近、確かに人界との境界は緩くなってきてる気がしなくもないがおかしいだろう)
バルコニーに立ち、外を見張るとスライムが飛んできた。
「痛っ」
飛んできたスライムは、ハインの顔面に当たると跳ね返る。
跳ね返ったスライムを、ハインは手で受け止めた。
「ヒャッホー。魔王さま」
「ああ、ヒャッホー。元気だな」
投げられたスライムは、呑気に挨拶を交わしてきた。
ハインは、受け止めたスライムを片手で突いていると下には少年がいる。
「ほほう。何処から来た。少年」
「何だよ。おじさん、上からだなぁ」
小意気で生意気な少年だなと思い、少年の元に飛び降りた。
「おじさん、やるう。あんなとこから飛び降りて無傷。イエイ」
「ああ、イエイ?」
ハイタッチを求められたので、少年とハイタッチを交わす。ニヘヘと少年は笑うと同時に、腹の音がしている。
「へへへ」
「飯、食うか」
目の前の少年を、食事に誘うハインがいる。
「魔王様、人間がなぜこのようなところに」
「知らん。だが今から人界に用がある。ついでに届けるさ」
テーブルでくつろぐ少年のことを、悪魔大神官・グレイと一緒に眺め、ぼやいている。
「人界。またあの甘甘な子に会いに行くのですか。魔王なら魔王らしくっ」
大神官の口を指で弾き話のコシを折る。
「魔王なら魔王らしく? 今さらのことを言うな。自由にさせろ」
「しかし……」
「ノアのことを悪く言うことは許さん。アレは嫁で、妻で、我が玩具だ」
「ハァ……」
「それに、考えてるさ」
大神官は、最近の俺の甘さを見て何か思う所があるらしい。
確かに、最近の俺は甘さでたるんでる気がしてならないが少年を見てあることを考えた。
(あの少年を闇の魔法使いに育てたら面白そうだ)
とにかく少年を連れ人界に降りた。
「さあ、先に送ろう。家はどこだ。」
「家? 家なんてないよ。僕の親は盗賊に殺されたんだ」
「!!!」
悲しいことを、さらっと表情も変えず口に出す少年にハインは驚いた。
「うろうろと彷徨っていたらおじさんの庭にいたんだ。おじさん、お腹空いた」
「──。さっき、鳥の丸焼きを一人で食べたよな」
「お腹空いたぁ。あっ、おじさん危ない」
ハインの頭上に岩が落ちてくるのだが、それを少年は雷を手から出し粉々に粉砕する。
「おいっ、少年。今のは」
「今? 雷、出したけど何だよ。たいしたことはない。問題なくね?」
さらっと、ことなしげに述べる少年の顔を鷲づかみハインは震える。
(うんうん、逸材。いいぞ! いいぞ)
「おじさん、ほっへらいはあい。あにすんだよ」
暴れる少年にハインは確認する。
「親は本当に居ないんだな? あと身内は」
「ええ、何急に。身内、居ても居ないようなもんだ。あいつらなんか嫌いだ! 人間の存在自体許せない」
「ホホウ、では俺の所に来るか?」
「おじさんの?」
「まぁ、答えは急がん。とにかく来い」
少年を連れノアの屋敷に向かった。
ノアに宛がえた屋敷は、然程大きくはなく、白い小さな教会チックな造りの建物だ。
だが別に、十字架が祀ってある訳では無い。
あくまで、似ているだけで人が快適に住むには充分だ。
湖も近く、村里も街も近くにある。
両親の家も近くにあり、何不自由はないが、俺はもう少しひっそりとしたかった。
「うわっ、広い。何ここおじさんの別宅?」
「ああ、別宅。好きにしろと言いたいが余り羽目を外すな」
(あれ、そういえば少年の名を聞いてない)
「お帰りなさい。ハイン様、今回はゆっくりします? それとも急ぎ?」
「ノア、今回はゆっくり。お前を愉しむ」
「まぁ、フフ、あら? その子は」
「おいっ、名は何だ」
「僕? 僕はラスク」
「……────旨そうな名だな。だっ、そうだ。ノア」
「ふふ、ラスクのお住まいは」
聞くと少年、ラスクは黙った。
「ラスク、俺と暮らすか。ノアと暮らすかどっちが良い」
初耳のラスクは驚いている。
「まぁ、魔法使い様のお弟子様なの?」
両手を合わせ、喜ぶノアがいるのだがラスクはある言葉に耳を疑う。
ヒソヒソと小声でハインに話しかけてきた。
「魔法使い? 魔王だよな、おじさん」
「そうだが、ノアには言ってない」
いやらしい顔をして笑うラスクがいた。
「僕、両方! でも特にノアん所重視で」
「まぁっ。では、部屋を用意しましょう」
喜ぶノアがいるのだが、そのノアに対しラスクは抱きつくと胸に顔を押しうずめていた。
視線はきちんとハインの方を向いて鼻の下を伸ばし笑っている。
(この、エロガキが!)
ラスクを、ノアから引き剥がしハインは、咳払いをする。
「ああ、準備はまた今度で良い」
ハインはラスクの首を持ち上げ目を合わし、苦笑いと同時に指を鳴らした。
《パチン》
「おいっ、おじさっ」
ラスクは、ハインの指の音と同時に魔王城へと飛ばされる。
「まぁ、凄い! 音一つでラスクはどちらに行きましたの?」
「お前も知る、もう一つの屋敷だが。そんなことよりも───」
ハインは、ノアの髪を軽く鷲づかみすると顎を引き上げ口づけをする。
「ハイン様」
ノアは、静かにハインに身を委ねた。
(面白い逸材が手に入ったが、あのガキ。気を付けんと俺以上に手癖悪いぞ。たぶん)
子供のすることに、少し嫉妬するハインがいた。
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