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無責任な魔王は常に◯◯する。  作者: 珀武真由
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 魔王。焦る

おはようございます。こんにちは。こんばんは。




 凍る大地。凍る山々。氷柱。凍る川。動く氷魚。凍る木々。

 さわさわと風に乗り、揺らめく氷晶。

 氷の牢獄、廟牢(びょうろう)、城。

 すべてが凍てつき、生きとし生けるものは凍ったままでも蠢く。吐く息は白く、すべてのモノを凍らそうとする。


 ──無限氷炎監獄(コキュートス)──


 パニシャを捕らえていた鳥籠は、この場所に着くと、瞬時に凍てつき、跡形もなく壊れた。

 鳥籠は、パニシャを開放すると、冷たい大地に足を降ろさし、ハインと対峙させた。


「改めて、我が息子よ。大きくなったと言うべきか……」

「口を開くな。厚かましい。俺は会話をしに来たのではない。グレイ」

「はっ」

「任す。好きにせい。見てる」

「わかりました」


 グレイの肩を、「任せたぞ」と言わんばかりに叩き、ハインは歩き去る。うなずくグレイは、パニシャを睨むと足を急かし、標的目掛け駆けていく。


「フッ、お覚悟です」

「ハッ、ハインの腰巾着がぁああああああ」


(フッ、グレイはただの腰巾着ではないぞ)


 ハインは、パニシャとグレイの攻防を見学するため、腰を据えるのに良い岩場を見つけると落ち着いた。

 重い足のオリバーが、ハインの横に座ると愚痴し始める。


「身内がすまん」

「おおい、そう思うなら動け。タワケが」

「あっ、腰が」

「フッ、オリバー。おまえは動かないんだな。めったには」

「基本は───て、ハインが動きすぎなのでは、腰据えない魔王って。アデルは落ち着いてたぞ」

「フン。………ジッとしてるのがいやな性分でな。おまえは動かなさすぎでは」

「フン。腰が据わってると言うてくれ」

「ああ、腰が()()ね」


 ハインのひと言にオリバーはむくれた。子どもみたいに………

 そんなオリバーを見てハインは笑う。


 オリバーが指をならし、炎を出すも冷たい風が吹き、かき消える。


「ううっ。いかん。やはり凍てつくな。寒くはないが見てるだけでこの景色は寒々とする。早く帰ろう」


 勝手をほざくオリバー()に、呆れるハインがいる。


(コイツ────。元凶はお前だろ。エセ天使(パニシャ)を逃がすから。俺も帰りたいわ)


「ヤダヤダ、ったく」

「おまえの部下は優秀?」

「お前のとこと比べる? フッ。笑止」

「ぬっ」


 会話の最中、ハインが何かを感じ、対戦している二人を見据えた。

 ある異変に気づく。


「グレイ、動くな」

「動くな? と」


 野次を飛ばされ、驚きを止めるグレイに、パニシャは、悔しがる。


「チッ、なぜ気付いた。クソッ」


 止まったグレイの眼前に地面から、氷の板がザッシュと四方から這い出てきた。一歩、踏みとどまっていなければ、グレイの身体は半分に切り分けられていただろう。

 氷の板に囲まれたグレイを残し、立ち去ろうとするパニシャをハインが錫杖で殴る。

 

「グウッ」


 錫杖一撃で、殴られた腹を抱え、倒れるパニシャがいた。

 グレイは、近づいてくるハインを眺め、ほほ笑んでいる。


「さすが、ハイン様。そして、以前のハイン様なら、半分になった(わたくし)をあざ笑ったでしょう」

「こんな所で半分になった場合、誰がおまえを治す。タワケが」

「フッ、冷たい」

「ヌカセ」


 錫杖を地に二回突き、ハインは地面を割った。

 パニシャとグレイの間には亀裂が走り、段差ができる。パニシャは下へとズレ落ち、グレイと共に上に立ち、見下ろすハインがいる。


「グレイ、何かがおかしい。引っ掛かる」

「ハイン様もですか? (わたくし)もです。あれは、分身でしょうか。手応えがないのです。ですが」

「ああ、エセ(パニシャ)だ。波動(オーラ)生気(オド)、形……」


 考えるハインがいる。見下ろすエセ天使(パニシャ)は、グレイとのやり取りで弱っているようにも見えるが腑に落ちない。


「まさか」

「ハイン様」


 下にいるパニシャが、ハインと目が合うとニタァとイヤらしく、唇が切れそうそうなぐらいに口の端を上げ笑っている。


「おいっ、おっさん(オリバー)エセ天使(パニシャ)が逃げたとき、虹色の卵の殻はあったか?」

「殻、かぁ──────。あったような」


 オリバーの返しを聞き、ハインは苦笑を浮かべ身体からは怒りが溢れ、下にいるパニシャに大技をかます。


     « 破砕氷靂犀廃骨(アイスパイグラッシュ)»


 下にいるパニシャはいきなり凍った。


「壊せ! グレイ」

「ハッ」


 グレイが言われるままに錫杖槍を突き、パニシャを粉砕する。粉砕されたパニシャのあとに殻らしきものが散らばる。


「クソッ、俺としたことがやられた」

「どうされました」

「ウッ。ほんとは時間取りたくないが視ろ」


 尋ねるグレイの前に、本の映像を出すとハインはページを開く。


「ここだ。ここ」


 二人の前に取り出された本は、ラスクに渡した魔本である。


「ハイン様。コピーされたのですか」

「コピー? まぁな、それに。術式は理解した。精霊(あんなモノ)なくとも展開出来る」

「古代魔術を」

「フッ、俺を誰だと?」


 開かれたページを視る、グレイの瞳がキュッとなる。ハインの苛立ちを理解する。


「帰りましょう。ノア様の所へと」

「ああ、だが。ここを閉じねば、クソッだな。俺! おいっ、おっさん(オリバー)帰るぞ」


 冷静なハインだが、内心は焦っていた。

 捕らえたパニシャはある意味パニシャではなく、いとも簡単に大技を食らい粉々になっている。


(クソッ、いつ分身を置いて逃げたのだ。アイツ───。捕らえた時も、俺と戦っている時もアイツだった。では、俺が寝てる時か?)


 一目散にこの場所から出るハインだが、何やら手に取り去っていく。そこは、グレイも確認しており、感心しながら一緒に去るグレイがいた。

 オリバーは足をもたつかせ急ぎついて行く。

 ハインは歯を食いしばり、怒りの表情を浮かべ地上へと急いだ。

 

(ラスクがいるから、大丈夫だとは思うがー)


 白い霧が立ち込み、去る者の姿を隠していく。吐く息が白さを増し、熱を帯びているのが分かるぐらいにハインは熱くなっていた。




お疲れさまです。ありがとうございます。

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