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第二十三話

 201号室の扉をノックする。渇いた音が返ってきた以外は暫く何の反応もしなかった。

 僕はそれを入っても良いサインだと受け取り、片手でドアノブを回して部屋へと入る。



 むっとした空気が肌を撫でる。……菫の奴、また換気をしていないな。全く……換気は適度に行えとあれ程言ってあったのに…………。そんな事を僕は思いつつ、遮光カーテンを睨み付けた。衣擦れの音が聞こえてくる。


「…………ありがとうな」

 一言目。僕は少しだけ照れ臭さが混じる口調で言った。


 空き巣を捕まえたのは奈々子叔母さんだが、そもそも空き巣を見つけられたのは菫の電話があってこそだ。菫が電話をかけてくれなければ僕は空き巣が荒らした部屋の中で、後悔をこれ程かというぐらい繰り返す羽目になっていただろう。



「お前が居なければ僕はもしかすればもうここに居られなかったかも知れない……。感謝しているよ」

「構わないよ」

 カーテンの向こう側から少女の淡々とした声が返ってきた。


「ぼくの世界はこの部屋に留まった小さな箱だ。そのぐらいの異変を感じ取れなくて、どうして世界の主を名乗れるものか」

「…………自宅警備員の面目躍如だな」

「君は言う事が一々、ぼくの琴線に触れるね。……台無しだよ」

 菫の溜息が漏れて空中を彷徨った。十畳一間を一周回った後、力無く落ちていく。


「しかし、まあ……。思い知ったものだろう。ぼくだって偶には人の役に立てるんだよ。誰かに守ってばかりのどうしようも無い人間じゃあ、無い」

「………………。今回ばかりはその言葉に反論しようも無いな」

 ありがとう。僕はもう一度だけ御礼を述べた。


「何だかくすぐったいな。……長らく聞いてなかった言葉だよ」

「……そうだな。そこに居れば必然的にそうなるだろう」

 僕は思い出す。菫の居る場所は嘗て、僕の居場所でもあった。



 価値も無い。意義も無い。未来も見えない。真っ暗で薄ら寒い、自分を閉じ込めた独房。

 そんな場所だから御礼なんて言葉からはほど遠いのだ。


 ……僕もちょっと前にそんな事を思ったな。



「…………そう言えば肉、持って来たんだ」

「君達はバーベキューをやっていたんだったね」

「…………食べる?」

 僕は訊いた。遮光カーテンが閉じられたままに。


 少し前、僕は怒り狂ってカツ丼を引っくり返した事を思いだした。

 あの時、僕は何を思っていたのだろう。それを思い出すのに少し時間が掛かった事に驚いた。



 あれだけ感情が高ぶっていたのに――――もう忘れかけている。

 人間の想いなんて所詮はこんなものだ。


 擦り切れて、上書きされて、結局は無かった事になる。



 ――――菫はどうだろう。

 彼女は今、僕の持ってきた香ばしい焼肉を笑って食べてくれるだろうか。


「……戴くよ」

 彼女は小さく、呟いた。

 僕は遮光カーテンを握りしめた。


「開けて良い?」

「……良いよ」

 僕は201号室の遮光カーテンを開けると、いつも思うのだ。



 ――――ああ、『ここ』は一つの世界なんだな、と。

 光り輝いた照明が照らす『ここ』は――遮光カーテンを開けるまでは手前からじゃ想像も出来ないくらい明るい。閉じ籠った世界なのに、明るいのだ。


 ここは菫の為の世界だ。彼女が彼女の為だけに作った彼女だけの世界。

 それを僕は開ける度に少しだけ背徳感を覚える。酒に泥を一滴混ぜるような感覚。蟻の巣に殺虫剤を突っ込むかのような、そんな気持ち。


 この世界にとって崩れ去る音は遮光カーテンを開ける音と同じだ。


「肉、結構胃に来ると思うけど…………大丈夫なのか?」

「……智久直伝のタレはついているかい?」

「たっぷりと」

「なら大丈夫だ」

 僕は何が『なら』なのか全く以て理解出来なかったが、彼女がそう言うからにはそうであるのだろう。


 何故ならこの部屋は彼女の為の世界なのだから。

 彼女の言葉こそがこの部屋では最も重い、のかも知れない。


 異物が混ざり込んだところで、彼女の世界が彼女のものである事は変わらない。

 菫は僕から肉が山と入った皿を受け取ると備え付けてあった割箸を手で持った。



 すると彼女は「ん」と言って割箸を僕の方へと差し出す。


「…………割ってくれたまえ。このままじゃ食べられない」

「至れり尽くせりだな、お前……」

「良いから、早く」

 僕はへいへい、と軽口もそこそこに割箸を割ってやる。


 ああも細い腕ではどうやら割箸を割る事でさえ負荷が掛かるらしい。

 僕は綺麗に割れた事に内心ほっとしつつ、割箸を渡してやった。


「ありがとう」

 彼女は御礼を言いつつ割箸を受け取った。そして割箸で肉を掴み取り、そして口に含む。


「…………久しぶりに食べる肉の味はどうだ?」

「……前も食べたじゃないか。君が作ってきてくれただろう?」

「あれは鶏のささみだったり、出来るだけ煮たり、叩いて柔らかくしたりして吸収を良くしたものだ。何の工夫も無い肉をお前に出すのはカツ丼以来だと言っても良い」

「………………美味しいよ」

「そりゃ良かった」

 菫はゆっくりとだが確実に肉を平らげていった。



 顔は無表情だが、手の動きは止まらない。まるで大切なものでも扱うかのような、慎重な手付きで同じ動作を繰り返し続けている。

 その動きがさっきの言葉が本心である事を告げている。


「椛。君も食べるかい?」

 僕に視線を合わせた菫は割箸に掴んだ肉を差し出した。


「それはお前のだろう?」

「……お腹は空いていないのかい?」

「空いているが、お前の物を取ってまで食べたいとは思わない」

「だったら尚更食べてくれ。……そもそも一日一食しか食べない僕が、こんなに山盛りの肉を全部食べる事が出来る訳が無いだろう。君のお腹が一杯ならまだしも食べられるなら最早、これはぼくによる命令だ。食べたまえ」

「お前の命令を聞く必要は僕には無いんだが。まあ、そういう事なら」

 僕は肉の載った皿を受け取る。



 だが受け取ったは良いものの、僕は箸が無い事に気付いた。

 箸が無いのか……、と僕は一瞬逡巡する。


「どうしたんだい? 早く食べてくれ」

「……いや。そういや箸が無いと思ってな。……まあ手で食べれば良いんだけど」

 タレがたっぷりと塗りたくってある肉を手掴みで食べるのは少しばかり躊躇を覚えるけれど無いなら無いで仕方無い。僕は肉を人差し指と親指を使って食べようと右手を伸ばす。


「箸? ここにあるよ、使いたまえ」

 そうすると彼女は僕の腕を押さえつつ、自分がさっきまで使っていた箸を差し出した。


「……いや、これはお前の……」

「だから何だ? 箸が箸である事には変わりないだろう? ぼくが使ったからと言って箸としての機能が下がるとでも言いたいのかい?」

「…………お前が良いなら良いけどさ」

 僕は反論するのも面倒で彼女の箸を受け取ると、それで焼肉を頬張った。


 柔らかな肉の味。甘いタレの味。そしてそれに混じってきめ細やかな良い香りがしたのは恐らく気の所為だろう。

 血液の流れを強く感じた。それが心臓の高鳴りによるものだと気付いたのは、僕の顔が赤らんでいると菫に指摘されてからだった。



「…………何でも無いよ」

 僕は菫の言葉を無視しつつ、肉をまた一つ口へと放り投げた。


 ……美味しい、これは当然肉の味だけの感想だ。他には何も無い、だろう。


「ほら、箸をぼくに寄越したまえ。別に全部あげるとは言ってないからな」

 菫はまたも僕から箸を奪い取ると、肉を掴み取り、何事も無いかのように口へと運んだ。

 薄い唇が箸に当たる。心臓を中心として僕の身体中で熱が躍る。


「そ、そう言えば菫は普段、ここで何をやっているんだ?」

 僕は強引に話題を切り出した。

 何か話をしないとおかしくなりそうだ、そう感じたからだ。


「普段?」

 菫は僕の言葉を聞くと、うーんと唸ってから答えを返した。


「何も――――何もしていないよ」

「何も?」

 彼女は頷く。



「何もしない事をぼくはしているんだ」

「そこにあるテレビだとかパソコンだとは使ってないのか?」

「それを使えば何かしている事になるの?」

「…………なるんじゃないのか?」

「……本当に?」

 菫は少しだけ試すような、そんな口振りを見せた。


 そして僕は首を振った。


「……ならないな。それじゃあ何かしている事にはならない」

 僕は引き籠っている間、ネットやパソコンばかりしていた。

 何かしていた訳じゃない。典型的な時間潰しだ。


 ……でも結局、僕は一体何をしていたのか覚えていない。

 覚えていないのはやっていない事と一緒、だ。 


「そうだよ。それでは何かした事にはならない。だって形に残らないからね。人間の営みとは簡単に言えば形を残す事だ。どんな形であってもね。それが残らない事は結果的に何もしていない事と同義だ」

「………………そうなんだよな」

 そういう意味で僕は引き籠りを無価値だと思っている。


 何も生み出さず、何も為さない。只々自分を傷つける沼に落ちていくだけの時間。

 僕はそう言う意味合いで引き籠りを底辺だと思っている。



「引き籠りってのはね、椛。生き方なんだよ」

「……生き方?」

「そう生き方だ。人や人の行動を表したものなんかじゃない。引き籠りは生き方だ。何も生み出さないぼくみたいな人間が居る一方で、引き籠って一つの事に打ち込んでいる職人気質な輩も居る。前者は兎も角、後者は何かを生み出しているかも知れない。人との出会い、外での感動、知らないものへの好奇心。そんなものを全てなげうって一つの形を生み出している人も少なからずいる。そう言った人間にとって引き籠りは生き方だ。そしてそれ故に才能――――なんだよ」

「才能……」

 いつかどこかで聞いた事のある言葉を僕は反芻した。



 引き籠りは才能だなんて言った事のある馬鹿を僕は何処かで見かけた事がある。

 それは何処だったっけか?


 あるいは夢の中だったのかも知れない。菫は尚も話を続ける。


「そう――――才能だ。引き籠りってのはえら呼吸を忘れた魚みたいなものでね。沼の底、陽ですら射さない沼の底で苦しみを抱いてあがいている。そしてそこで独自の進化を遂げてくんだ。陸で暮らす奴らが経験するような好奇心、常識、喜び、愉しみ、出会いなんかを犠牲にしてね。そしてもっと言えばその魚は多分、そこでしか暮らせない。どんだけ陸に上がりたいと願っても結局は戻ってくる。そんな奴らとって引き籠りは才能であり――生き方、だよ。そうは思わないかい?」

「思わない――――――」

 そこまで言って僕は思い出した。


 菫の言の葉は何処かで覗いたインターネットの掲示板。そこで独自の理論を語っていた奴の言葉と瓜二つなのだ。一年前の僕は掲示板の言葉を否定した。そして今、同じような言葉を僕は否定している。

 僕は一つ、質問してみる事にした。



「菫」

「何だい?」

「引き籠りを動物に例えたら何だと思う?」

「そりゃあ決まっているよ――――カンガルーの赤ちゃんだね。うすら寒い世界を誰かの庇護下で暮らしている様はどうしたって彼らを想像せざるを得ない」

「………………………………………………」

 僕は押し黙った。


 同じだ、そう思った。



「菫。一年も前の事になるが――――僕がお前と同じ引き籠っていた時分、僕はとあるインターネットの掲示板でお前と同じような理論を語っている奴を見た事がある」

「ほう」

「……もしかして、あれはお前だったのか?」

「だったら……どうだって言うんだい?」

「どうって……」

 僕は答えに困り、口を噤んだ。菫は言う。


「インターネットなんて所詮は匿名性が全てのつまらない掃き溜めだ。全ての言葉は意味を持たず全ての考えは投棄された、言わば言葉のゴミ捨て場だ。そんなところにぼくに似た人間が居たところで居なかったところでそれがどんな意味になるのかって言うんだい?」

「別に……一つだけ言いたい事があっただけだ」

「それは?」

「僕はあの時、僕を励ましてくれてありがとう――――そう言いたかっただけだ」

 僕は今にして思う。



 あれは僕みたいなどうしようも無い愚図を励ましていたんじゃないか、と。

 沼の底で自分の首を掻きむしりながら溺れる僕を遠回しに励ましていたんじゃないかって。…………そんなつまらない事を考えただけだ。


 ゴミ捨て場にも利用価値があったなんて、そんな事を僕は少しだけ…………。



「ふーん……。椛、君は大層おめでたい奴だね」

「そうかも知れないな」

 ゴミ捨て場なんかに居た奴の言葉を鵜呑みにし、果ては感謝まで抱くなんて……。どうかしていると頭の具合を疑われたって僕は何も言い返せない。


 でも僕は多分、嬉しかったのだろうと、そう思う。

 僕みたいな奴が他にも居て、ほんのちょっとだけ「焦らなくても平気だよ」と言われたようで心が休まったとそう思ったのだ。


 妄想癖もここまで来れば立派なものなのかも知れないけれど。



「……でもそんな御礼を言われた奴は大層幸せだろうね」

「そう思うか?」

「うん。……だって、こんな自分にも価値があったんだと。そんな事をきっと思う筈だから」

「………………そうだと、良いな」

 言葉はきっとつまらないものなんだろうなって思う。


 それが面と向かってでは無い、そして匿名性の高いネットでの言葉なら尚更だ。



 ――――でも。それでももしもそこで言葉が誰かに何かを残せたのだとすれば。

 それは多分、金言であったのだろう。


 それがたった一人にしか届かなかったのだとしても。

 現に僕の中には何かが残っているのだろうから。


「それはそうと椛、ぼくは一つ訊きたい事があるんだけど。良いかな?」

「訊きたい事? それは勿論、良いけど何?」

「さっきの割箸の件についてだ」

 僕は一瞬だけ表情を凍りつかせた。


「ぼくの割箸を使った際、君は何故か顔を赤らめていたよね?」

「……だからさっきも何でも無いと言ったじゃないか」

「いや。さっきもさっきで不可思議には思っていたんだよ。そして君が今見せた表情でぼくは確信した。何でも無い訳では無いと」

「……えーと」

「下手な隠し事は許さないよ、椛。君は一体何であんなに動揺していたんだい?」

 菫は藍色の瞳をじっとこちらに向ける。……意外と目敏い奴だ。もう言い逃れをするのも一苦労だろう、それならいっそ真実を打ち明けてみるか。そう思い、僕は彼女に向き直った。


「……菫、君は誰かとキスした事がある?」

「き、キスだと!?」

 菫の顔が西日よりも赤く燃え上がった。続いてぷるぷると震える。


「そ、そんな不埒な事…………。か、考えた事も無いよ!」

「じゃあ関節キスは?」

「か、間接キス? キスの練習みたいなものか? ……想像した事くらいならちょっとだけ……い、嫌! 嘘、嘘だ! そんな事、毛ほどにも考えた事無いよ! 本当だからな!」

「…………妄想する事ぐらいならあるんだ」

 まあ菫も一応、女の子だしな。僕は妙な納得の仕方をする。


「でも違うんだ。関節キスってのはそういう事じゃない」

「……違うのかい? なら何だって言うんだ」

 ……間接キス、本当に知らないんだ。まあ今まで引き籠り続けてきたのならそういう事もあるのかも知れないな。それに初心みたいだし……。


 僕は覚悟を決めつつ、口を開いた。



「関節キスってのは――――」

 菫は僕の説明を聞いている内に再度、徐々に薪をくべられた暖炉みたいに赤くなっていった。そして最後まで話を聞いた後、


「な、なんて事をしてしまったんだ、ぼくは……ッ! こんな事を婚姻前にしてしまうなんて……これは神に対する冒涜……ッ。もう死ぬしか…………」

「菫」

「……い、いや……こうなってはも、椛に責任を取って貰うしか……でも、まさかッ!」

「菫。落ち着け」

「そ、そもそも椛が悪いんだよ! 君がぼくの言うがままにそんな暴虐非道な事を受け入れてしまうから! だから…………その、ぼくと結婚を…………」

「そんな事する必要は無いから。落ち着け、菫」

 ……ちゃんとした知識が無いってのも大変だな。


 やはり勉強は生きる為に必要なものらしい。僕はそんな事を薄らボンヤリする頭で考えていた。



「何ッ! 君は、ぼ、ぼぼぼくとか、間接キスをしてしまった事を……そ、そんな軽く考えているのかッ! 無責任なッ」

「無責任も何もさあ…………」

 一応、間接キスで動揺してしまった立場で言うのも何だけど、そこまで大層なものでも無いと思う。


「くっ! 椛、君はどうやら不徳な輩であったらしい! で、出て行け! そして二度とウチの敷居を跨ぐんじゃない!」

 僕は背中に菫の投げた時計やら何やらが突き刺さる中、201号室を後にした。


「あ、そう言えば残った肉はちゃんと全部平らげとけよ。明日辺り皿を取りに来るから」

「うるさい! 二度と来るなと言ったばかりだろう!」

 ドアの隙間からそう言い残した僕は飛んでくるパソコンのスピーカーをドアでガードしつつ、未だ馬鹿騒ぎを続ける白峰館の愉快で痛快な仲間達の元へと戻った。


「菫ちゃんの叫び声がしたけれど…………もしかして襲っちゃった? やーねー、夜這いは夜に掛けるから夜這いって言うのよ。もう少し時間が経ってからにしないと」

「菫と少しでも同じ血が流れているとは到底思えない発言ですね、奈々子叔母さん」

 そんな軽口を言い合いつつ、それから後も僕らはバーベキューを続けた。


 トンチキ騒ぎを続ける中で僕は久しぶりにテンションのタガが外れ、一緒になって馬鹿騒ぎをしてしまった。

 酒の飲み比べをしてお互いタップダンスを踊らんばかりに酔い潰れる相田さんと黒川さん。


 終始、エロトークに花を咲かせ、僕の表情を凍りつかせる奈々子叔母さん。

 そんな中で僕はと言うと、勢い余って下手な踊りを披露し、音痴な歌声を盛大に歌い、場を混沌としたものへと変えていった。



 ――――――――――面白かったのだ。

 ここへ来た当初はここで上手くやっていけるものかと心配になったものだったが、僕は今ここ、白峰館に入居した事を嬉しく思っていた。


 何があったってやっていけるだろう――――そう思っていた。



 その後、ゴールデンウィークが開けた頃に僕は知る事となる。

 人の想いなんて所詮は綿毛程の重さも、蜘蛛の糸並の強度も無い事を。




 詩菜菫の真実に触れて――――僕はそんな事を思ったのだ。

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