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雑記録  作者: 鱈井 元衡
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切れ目のない塊

 この宇宙空間は、切れ目のない一つの塊であると記憶せよ。世界はすでにこの姿で、それ以上に分割のできない存在なのだ。人を傷つければ自分を傷つけるし、他人を傷つければ自分を傷つける。

 全てがつながっているとすれば、僕にとって無関係なものなど存在しないのだ。かつてテレンティウスが

 Homo sum. Humani nihil a me alienum puto.

 とその作品内で発言したように。人間界はあまりにも複雑で、繊細すぎる。僕一人でももうこの世界の恩恵に十分あずかってきたのだ。だがそのありがたみを、わずかにも感謝していないのが僕自身である。すでに僕はこの世界であまりにげすい存在であるにも関わらず、このように生きながらえているというのはまさに奇跡。神がいるとするなら、さしずめ恩寵か。それを本当に心の底から実感するなら、なぜ「この世界には苦しみしかない」などと言えたものだろう。ある類の人間にとっては、もはや神の概念を持ちあげ、これを賞賛したくなるくらいのものだ。

 ただ人間の心はあらゆる感情の海を絶えず動き回っている。いつも感謝の念で満たされている事はなかなかできることではない。

 不思議なことに、僕はずっとこの境地に入るのを怖れているかのようなのだ。本当に満足した気分になろうとすると、足踏みしてしまう。ある意味では、この気分――幸福とは狂気であろう。少なくとも、主観的な幸福というのは。

 忘れそうになった時、気に留めておくことだ。そうすれば、すさんだ心の強力な処方箋にはなるかもしれない。

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