王立植物院 上司との出会い
王立植物院は植物の育成、開発を主にしている施設だ。
噂では世界中の花や木があるらしくて園芸好きとしては憧れの場所だ。
(まさか職員になれるなんて思わなかったわ)
あれから1週間後、私は王立植物院の前に来ていた。
建物の扉を開けると木々の匂いとか花の匂いが充満している。
「あの〜、本日より働かせていただくロザリーと言いますが……」
ホール内に私の声が響くだけでシーンとしている。
「やぁ、いらっしゃい」
「ひゃあっ!?」
いきなり背後から声がして私は大声をあげた。
振り向くとそこにはニコニコ笑う作業服姿の男性がいた。
「ロザリー・アンヘルシアさんだね、ようこそ植物院へ。 僕は一応ここの責任者のセリオと言うんだ、よろしくね」
「ロザリーです、よろしくお願いします。 あの、他の職員の方は……?」
「いないよ、手伝いはいるけど基本的に僕一人」
えっ!? 1人っ!?
「じゃあ研究室に案内するよ」
そう言ってセリオさんはスタスタと歩いて行く。
私は慌ててセリオさんの後をついて行った。
(マイペースな方ね、私も人の事を言えないけど)
廊下を歩いて1室の前に来た。
「ここがロザリーさんの部屋、好きな事をやって良いから」
「ありがとうございます、あ、私の薔薇」
机の上に私が開発した薔薇が置いてあった。
「その薔薇を見た時、是非うちに欲しい!と思ったんだよ。 まさか公爵令嬢が開発したとは思わなかったけどね」
「私、人付き合いより庭弄りをしている方が好きなんです」
「僕もだよ、だから叔父上に頼んで作ってもらったんだ」
「叔父上……?」
「あ、僕は国王の弟の息子なんだよ、一応貴族籍ではあるんだけど」
「まぁ、そうだったんですか」
「ここでは身分とか関係無いから気をつかわなくてもいいからね」
常に笑顔のセリオさんだけど、私にはなんとなくわかる。
この笑顔は心からの笑顔ではないな、と。
笑顔の仮面を被っている、 そんな感じがしたのだ。