公爵の調査結果と王家の思惑
お茶会から1週間後、帰宅したお父様に呼び出された。
「ロザリーが目撃した事なんだが……」
「何かわかったんですか?」
「あぁ、王太子付のメイドや付近の者にそれとなく聞いてみたのだが、城内でも有名な話らしい、相手もわかった。 名前はレイチェル・ノイールと言って地方の男爵家の令嬢だ」
「レイチェル嬢は王太子様とどの様に仲良くなったんでしょう?」
「王太子の一目惚れだそうだ」
チラッと見たけど確かに可愛い見た目だったので納得した。
「国王様はご存知なのでしょうか?」
「そこが問題だ、王妃様は知っていて表には出てないが応援はしているらしい、だが国王様の耳にはまだ入っていない」
「でも城内の事ですから国王様に全く報告していない事は無いでしょう」
「王妃様が止めているらしい」
そこまでして王妃様は王太子様の恋を応援しているのね……。
「でも、いずれはバレますよね? その時はどうなるんでしょうか?」
「そこで今回のお茶会が関係してくる」
「お茶会? 王太子様の婚約者を決める為のお茶会ですよね?」
「表向きはな、実際は『悪役』を決める為のお茶会だったらしい」
「悪役? それって小説に出てくる悪役令嬢の事ですか?」
「あぁ……、王妃様の発案で巷で流行っている恋愛小説のシチュエーションを実際にやってみる事にしたらしい」
その恋愛小説というのは王太子様とヒロインである男爵令嬢が身分の差を乗り越えて幸せをつかむ、というお話でヒロインのライバルとして出てくるのが王太子の婚約者である悪役令嬢だ。
彼女は王太子とヒロインの仲を嫉妬してあらゆる力を使い邪魔をして引き裂こうとする、最終的にはヒロインを殺そうとするのだが王太子が救いに来て悪役令嬢は悪事がバレて破滅してしまう、という設定である。
「でも、小説だから成立してるので現実的な話じゃ無いですよ」
「そう、所詮はフィクションだからな、実際やるとなると色々問題が起こり国を揺るがしかねない」
「そもそも悪役令嬢なんて誰も引き受け無いと思いますが?」
「あぁ、だが王家からの命となると引き受けざるをえない」
「え、引き受ける家があるのですか?」
「王家と近づきたいなら娘を犠牲にする事も問題無い、と考える輩もいるのだ、私は勿論そんな馬鹿な計画にはのらないしもし強制するのであれば国を脱するつもりだ」
地位や名誉よりも家族や領民を大事にするお父様の考えは貴族としては珍しいそうだ。
だからこそお父様は領民に尊敬されている、勿論私もだけど。