表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/84

005

「今、一人で済ましたって言ったか?」

「うん! ビオリスが寝てる間にね、私がんばったんだから!」


 俺が寝ている間に、クラリスが隣でしていた、だと……。 

 なんでだろう、なぜか損した気分だ…………。


「ま、まぁ、そういうことだアイシャ。分かった、か…………」

「はぅぅ…………」

「あれ……アイシャ?」


 扉の方を見ると、アイシャが扉の前で崩れ落ち、のぼせたように目を回していた。


「ふふっ、あの子には刺激が強すぎたみたいね」

「はぁ……、あんまりからかってやるなよ……」

「えへへ、次からは気をつけるわ」


 はにかむ笑顔は素敵だが――――――


「さぁ、服を着てくれ。女の子がそんな恰好で居たら、どこぞの男に襲われるぞ」


 俺は上に乗っていたクラリスを丁寧にベッドに乗せて立ち上がった。


「別に、ビオリスならいいのよ……?」

「お前なぁ……」

「ねぇ、ビオリス。髪になにか付いてるから、こっち向いて」

「あ、ああ」


 クラリスへと振り向いて、顔を近づける。


「――――――チュッ」

「ッ⁉」


 頬に柔らかいクラリスの口づけが……。


「お、おい、なにするんだ……」

「血をくれたお礼、ね?」

「髪は?」

「えへへ、なにもついてないよ」


 クラリスは照れながら、上目遣いでこちらを見つめてきた。


「はぁ……、女の子なんだからキスも大事にしろよ……」

「ふふっ、唇にはしてないから大丈夫っ」

「そうかい…………」


 こんな中身がおっさんの男に、金髪美少女がキスするもんじゃないだろうに……。


「えへへ……えへへ……♡」


 両手で頬を押さえて楽しそうにするクラリス。


 まぁ、クラリスが嬉しそうならいいか……。


「あ、そうだ。クラリス、今までの経緯を伝えておきたいんだがいいか?」

「んあっ! え、ええ、もちろん! ビオリスの頼みなら喜んで」

「助かるよ――――――」


 俺はクラリスにこれまでのことを話した。


 サカマキに時間を戻されたこと、冒険者として再び上を目指すこと、自分の任務の後始末をしている最中だということも含めて……。


「……へー、ギルドの職員でもしてるかと思ってたけど、まだ冒険者をしてたのね」

「まぁ、体の半分はギルドに染まってるって言っても過言じゃないけどな」

「あれ、そういえば昔のパーティの人たちは……って、聞くのは失礼だったわね……ごめんなさい……」


 隣に座っていたクラリスは自分の言葉を失言と思ったのか、軽く俯いてしまった。


 俺は優しくクラリスを撫でながら、

「いや、クラリスが気にすることじゃないさ」

 と、伝える。


「私もゴーレム討伐に向かっていれば、もう少しはマシだったかもしれないのに……」

「あれは裏ギルドの連中が仕組んだことだ。クラリスが自分を責めるようなことじゃないだろ」

「でも、多少の戦力にはなったかもしれないわ」


 確かに、クラリスが居ればあの状況はもう少し好転していたかもしれない。


 裏ギルドの連中を何人か殺せていたかもしれない。

 だが、クラリスがあの状況で迷いなく人を殺せるとは思えない……。


「クラリスが居てくれれば、戦力にはなった。だがな、逆に言えば、その場でお前も死んでいたかもしれないんだ。参加しなくてよかったんだよ」

「そう、なのかな……?」

「ああ、俺の大切な知り合いを失わずに済んだんだからな」

「ビオリス……」

「だからな、昔のことは気にしなくていい」

「……うん」


 周りから疎まれていても、「自分が助けに入っていれば……」と、一人で悩み続けるクラリス。

 こんなにも健気な冒険者を、こんなにも悲し気な冒険者を、未だに周囲は侮蔑の眼差しを向ける。


「はぁ……」


 ジャックのパーティも、酒場の奴らも、冒険者としての誇りを持っていない奴らばかりで嫌になる……。

 まぁ、俺も冒険者の誇りなんてどっかに置いて来ちまったけどな……。


「ね、ビオリス?」

「……ん、なんだ?」

「もしね、今ビオリスがパーティを組んでないなら、私と組む、なんて……」


 照れ笑いしながら言われたクラリスの提案。


「クラリスが俺と?」


 誰ともパーティを組もうとしなかったクラリスが俺と……?


「やっぱり嫌……だよね……」

「ち、違うっ。俺でいいのかって意味だ」

「え、ええ……私は喜んで。だけど、ビオリスが嫌だったら……その……断ってくれていい……」


 だんだんとクラリスの声が小さくなっていく。


「いや、クラリスがパーティに入ってくれるなら、こんなにも心強いことはない」

「ほ、ほんとに……?」

「ああ、もちろんだ」


 俺の返事に、クラリスは明るい笑顔を見せたのだが、その笑顔はすぐに陰ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ