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テンプレ勇者の一目惚れラブロード 〜勇者がヒロインと結婚するまで〜  作者: しぇいく
第二章 アオイさん!好き!

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他の勇者も逃げてない!

 地面をズルズルと動く大きなダンボール、瓦礫の間をゆっくりと移動していた。


 ブゥゥゥゥゥゥン……


 蝿の羽音が近付く。


 するとダンボールはピタリと止まる。


 息を潜めるように。


 存在を消すように。


 やり過ごす。


 そして羽音が遠ざかると、また少しだけ前へ進む。


 そんな事を何度も繰り返していた。


 「こ、こわいぃぃ……」


 ダンボールの隙間から覗いていたのは、一人の女性。


 リュウトの想い人。

 そしてリュウトと同じ異世界から来た女勇者。



 アオイ。



 周囲には死体。瓦礫……そして血。


 いつもなら人で賑わっていた町は、見る影もない。


 「(でも……僕も頑張らないと……)」


 震える手でダンボールを押す。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 アオイは目的地へ向かっていた。


 __________


 ______


 ____


 《少し前》


 《ヒロユキ達》


 「話を戻します」


 隅々まで屋敷を調べ、小さなブルゼが居ない事を確認した後。


 ヒロユキ達のパーティーとミクラル王国代表騎士ナオミは、孤児院のロビーへ集まっていた。


 後から聞いた話によると、ナオミもまた、この孤児院で育った孤児らしい。


 「先程の国王からの通信によると、騎士団との連絡が途絶えています。ギルドのポータルも起動していないそうです」


 「あぁ、だからあたし達が起動してやらないとね」


 「はい。そして援軍を投入してもらうのが最優先事項でしょう」


 「……」


 「クリスタルドラゴン討伐の時を思い出してください。みんなで力を合わせれば、きっと何とかなります」


 「クリスタルドラゴン討伐はミーも聞いてるよ。もしかしてアニキも居たの?」


 ひょこっと顔を出したのは、小柄な少女。

 白い髪をした可愛らしい見た目の人物だった。


 「ジュンパク。良い質問ですね」


 ユキは胸を張る。


 「参加してます!」


 「流石アニキ!」


 “彼”の名前はジュンパク。

 勇者ヒロユキの新たなパーティーメンバーだ。


 「それに騎士団だけではありません。冒険者達の援軍も集めましょう。ポータルさえ開けば、他の町や国からも応援が来るはずです」


 「ミーも賛成だけど、それ相応の報酬が必要じゃない?」


 「そうですね……やはりお金が一番効果的でしょう。ナオミさん、国王と交渉できますか?」


 「任せな。国王も今回の件はかなり重要視してる。それこそ災害級の報酬が出るさ」


 ナオミはそこで何かを思い出したように笑う。


 「あ、そうそう」


 「?」


 「災害で思い出したんだけどね。この町には今、“一人”とんでもなく強い奴が居るんだよ」


 「強い人?」


 「あたしには、そいつが死んでるようには思えない。今頃どこかで踏ん張ってるんじゃないかね」


 「……あ」


 ヒロユキが反応した。


 「ヒロユキさん?」


 そしてナオミは、その名前を口にする。


 「クリスタルドラゴン討伐の勇者――リュウトだよ」


 その名前を聞いた瞬間。


 ユキは見事に腰を抜かした。


 まさに“すってんころりん”という表現が似合う転び方だった。


 「なななななんと!? リュウトさんが!? この町に!? それは朗報ですよ!」


 「……ユキ、会ったの言うの忘れてた。すまん」


 「ヒロユキさん!? 何で言わなかったんですか!?」


 「……帰ったらユキ寝てたし、俺も酔ってたからすぐ寝た」


 「あの日ですか!? 二日酔いでヒロユキさんが大変だったあの日ですか!?」


 「ちょっと待って! ミーは一人部屋だったのに姉貴とアニキが同じ部屋だった件について!?」


 「とりあえず、あたしゃ今からアレン国王と連絡取ってくるよ」


 ナオミはそう言って席を立った。


 「これで安心できますね」


 ユキは微笑む。


 「この作戦を実行すると――私は動けなくなりますから」


 「え!?」


 「……どういう事だ?」


 「【ファイアードーム】を使います」


 ユキは静かに答えた。


 「私の魔力のほとんどを使って、この町全体へ範囲を広げます」


 「……!?」


 「流石に大きなブルゼは対象にできません。でも、この町に居る小さなブルゼと、そこら中に散らばっているゴミくらいなら綺麗に掃除できます」


 冗談みたいな口調だった。


 だが言っている内容は全く冗談ではない。


 「……わかった」


 ヒロユキは即答した。


 「流石ヒロユキさんですね。話が早すぎませんか?」


 「……ユキなら心配いらない」


 ヒロユキは静かに言う。


 「ヒロユキさん……」


 「……兄さんが言ってた」


 ヒロユキは少しだけ笑った。


 「……“お前を信じる俺を信じろ”って」


 「私のお母さんも似たような事を言っていました!」


 ユキも負けじと胸を張る。


 「“僕の信じる君を信じろ”って!」


 「あの〜……一応ミーも居るんだけど……」


 「ジュンパクにも期待してますよ」


 「ユキの姉貴ぃぃぃ!」


 「おっと。ハグは全部終わってからです」


 「グェッ」


 抱きつこうとしたジュンパクの顔面を、ユキは片手で押し返した。


 そして。


 表情を引き締める。


 「では――作戦開始です」


 そう言ってユキという少女は、魔法を発動した。

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