見逃された命
「……」
目が覚めるとミクラル城医務室の天井だった。
また同じ……?夢、だったのか?
「ますたー!おきたー!」
「おぉ、あーたん」
あーたんが人間の姿の状態で飛び込んでくる。
「状況は?」
これもデジャブ。
うーん、夢だといいが__
「ご主人様のいったとおり、ミクラルの人をつれてきた!そしたらそしたら!ご主人様血を流してたおれてた!」
夢じゃなかった。
「見逃したのか……?俺たちを」
どう言うわけか分からないが助かったらしい……
「アカネは?」
「おねーちゃんも起きた後にないてからお部屋にもどってるよ〜」
「泣く?」
「うん〜!」
「……あーたん、色々報告して帰るから先に部屋に戻っててくれ」
「はーい!」
帰っていくあーたん。
「………………生きてて、良かった」
死んだらアオイさんに会えない。
それだけの理由、だが……俺の生きる意味だ。
「……………アオイさんを救うって言ったんだ……」
今まで心のどこかで余裕があった。
だが、その余裕は俺の慢心であり、弱点だった……
【勇者の力】
この力があれば何でもできると思っていたが、限界があった……
「いや違うな……」
俺が使いこなせていなかった。
思えば、最初から俺はこの力について追求しなかったな……
「…………次の目標は決まりだな」
そう呟き、俺は医務室を後にした__
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「リュウトさん……」
部屋に帰ってアカネをみると泣いた跡が見られる。
「私、強くなりたいです」
俺を見て感情がまた溢れたのか目に涙が浮かび上がり叫ぶ様にアカネは言う。
「私、妹ちゃんを守れるまで強くなりたい!」
その言葉を聞いた瞬間、アカネに“色”が灯る。
赤い髪。
赤い目。
白い肌。
あぁ……“アオイさんを守りたい”
その言葉で
俺がアカネを見る目が変わった瞬間だった。
頭の中の予想ではアカネが死の淵に立って怯え、心のケアをする算段だった。
だが現実は違った……彼女は俺が思っているより成長していたのだ……
そして何より__俺と同じ思い。
「お前の髪って、こんなに赤かったんだな……」
「え……?」
「よし、ならプランを組むぞ!」
「はい!」
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《女神の翼 ミクラル本拠点》
「どうして逃したんですか?」
「……」
シルクハットの男に問われ、漆黒の騎士__エスは思い出す。
血を流しながらも無様に地面を這っているリュウトが言っていた事を……
「……俺は……死ねないんだ……“アオイ”……さんを………救うまで、は……」
「!」
そこまで言ってリュウトは意識を手放した。
「なぜ、コイツがアオイを……」
トドメに首を切り落とそうとしていた剣を収め、そのまま転移魔法陣を起動させ帰ってきたのだ。
「…………確かめたい事がある、アイツを殺すのはそれからだ」
それだけ言い放ち、漆黒の騎士は闇へと消えていった。
「使えない用心棒ですね、なぜあの様な奴が『あの方』のお気に入りなのか……」
そう言ってシルクハットの中年男はノートを取り出す。
「さて……我々も次のステップに進みましょうか、全ては__」
「『女神』様の為に」




