十倍オッズの下剋上
最上段の貴賓席――王のすぐ近くに、俺たちは座っていた。
下では歓声と賭け声が渦巻いている。
「モンスターコロシアムか……」
ルールとしては単純だ。
各々自慢の魔物(家畜)を持ち寄って相手の魔物を倒した方が勝ち。
倒すと言うのは__
気絶。
戦意喪失で逃げる。
そして、殺す。
何だろうな……こう言うのに慣れてない世界から来たから、みんなみたいなワクワクは無い……
だって、元の世界の豚や牛とかで考えると、それらが血を流しながら戦ってるのを見て興奮するか?と言う__
「楽しみであるな、リュウト殿のモンスターは」
「そう、ですね」
まぁこの世界では普通なのか。
そしてアナウンスが始まる。
重低音の太鼓が鳴り響く。
闘技場中央に立つ司会者が、魔導拡声具を掲げた。
「――さぁ皆様! ニューイヤーフェスティバル特別企画! ミクラル王国モンスターコロシアム、第一試合の幕開けです!!」
歓声が爆発する。
「{赤コーナー! 雷を纏う突進王――ナヒルさんのサンダーボア!!}」
すごいこと言ってるがサンダーボアは柔らかい猪肉だ。
身体中に電気が流れていて寄生虫の心配やお腹壊すものが無いので生で食べれて人気。
ちなみに死んだ瞬間に電気は無くなる。
そんな美味しい雷を帯びた巨大な猪が、砂を蹴り上げて姿を現した。
「{対するは青コーナー! 特別枠!あのクリスタルドラゴン討伐したグリード王国の勇者!俊敏なる白き影――リュウトさんのアールラビッツ!!}」
反対側の門が開く。
白い影が、静かに歩み出る。
歓声は、どこか軽かった。
「ウサギだろ?」
「火山産ってだけで強いわけない」
「ボアの突進一発で終わりだな」
賭け札売りの声が響く。
「赤コーナー三倍! 青コーナー十倍だ!」
十倍。
期待されていない証拠だ。
サンダーボアが地面を踏み鳴らす。
バチバチと雷が走る。
筋肉の塊。
重量差は倍以上。
あーたんは白くて、丸くて、可愛い。
闘技場の中央で向き合うと、その差は露骨だった。
「これは……厳しいのでは?」
王の隣の貴族が小声で呟く。
「雷耐性はあるのか?」
「一撃で黒焦げだろう」
開始の鐘が鳴った。
そして――
サンダーボアが、一直線に突っ込んだ。
開始の鐘が鳴る。
次の瞬間、サンダーボアが雷を纏って突進した。
観客席から悲鳴と歓声が混じる。
「終わりだ!」
「一発だ!」
白い影は逃げない。
――ぶつかる。
そう誰もが思った。
その瞬間____
「きゅ」
雷が弾け、巨体が宙に浮いた。
「ぶおおおぉお!?」
ズドンッ!!
地面に叩きつけられる。
沈黙。
完全な静寂。
サンダーボアは、動かない。
審判が駆け寄る。
「……気絶確認!」
一拍。
そして。
「勝者ァァァァ!!青コーナー!!」
司会者が絶叫する。
「下剋上だーーーっ!! 十倍オッズをひっくり返したァァ!!」
観客席が爆発した。
歓声。
賭け札が宙を舞う。
「なんだ今の!?」
「見えなかったぞ!?何したんだ!?」
「一撃!?」
あーたんは、何事もなかったように背伸びをしていた。




