#7風景
ちょっと町並み見学。
レッドクローバー家の馬車は赤い屋根がついていた。
馬車に赤い屋根って……と違和感を感じた途端、また設定が頭に流れ込んできた。
この世界では家名に特徴が現れている。持ち物や建物などにも家名の色や物などが入っている事が多く、身分が高い家系となるとなおさららしい。
なので、レッドクローバー伯爵家も、名にちなんだもので身の回りの物を統一させているのだそうだ。
──エリックの家名は“レッドクローバー”だもんな。髪の色も赤だし……。四つ葉のクローバーが家紋だしな。なるほど、分かりやすい
馬車から外を眺めていると、映画なんかで見るような、中世ヨーロッパ風の景色が流れた。
レンガ作りの統一感のある町並み。きれいに舗装された道路。まさしく作られた“風景”って感じだ。
それにしても、生まれてはじめて馬車に乗ったけど、普通に車に乗ってるのと変わらない。もっとこう、揺れるとか思ってた。
もちろんカタカタと揺れはするが、道路が舗装されてるからか?てか、よく見るとコンクリ?一見レンガ風なんだけど、見た目だけだったのか。
そして、すごい事がある。
町行く人々の顔に特徴がない!
服装も顔も、いかにも“モブ”なのだ。髪の色も地味な色ばかりだ。金髪もいるけど茶色に近くくすんだ感じでパッとするやつは皆無、目と鼻と口があるだけで、ほとんど皆同じに見える。
──やっぱメインキャラだけが突出してるのか……?くくっ、ほんと、俺みたいなイケメン、何処にもいないわ~まいったねぇ~!いや~つくづくエリックで良かった~!
だいたい、貴族である兄のイーサンや父ですら、赤茶の地味な髪色に地味な目の色だった。
エリックの鮮やかな燃えるような明るい赤い髪も、青空のように澄んだ真っ青な瞳の者も、全く見かけない。
ゲームの世界ですら不公平だよな……。
もう一度窓から外を眺めた。
──さようなら、二度と会うこと無いだろうモブキャラたちよ!俺はこれからキラキラでうらやま~なライフを楽しんでくるよ~
ふふふーんと優越感にひたりながら、流れる町を眺めた。
忙しなく行き交う下下の者たちを横目に、赤い屋根の馬車は優雅にセレブリティ学園に向かうのであった……
へへへ~やっぱ顔だよなぁ~?顔さえよけりゃ女なんて勝手に寄ってくるんだろ?ふはははは!(悟ルン)