#59 檜風呂のリラックス効果
リラックスしすぎると思わぬ本音が……?
皆でお風呂とか、はじめは何故か緊張していたが、特に何かあるわけじゃなかった。
だよなー!
俺ってば意識しすぎだ。
リラックスしていくにつれ、妙にはしゃいでしまった。背中の洗いっことかやったりした。
こんなの小学校の修学旅行以来だ……。
「ふぅー……いいお湯だな……」
目を瞑って浴槽の縁にもたれ掛かり、思わず呟いた。
広い浴室でちょうどいい温度のお湯が心地よい。檜の匂いが立ち込めて、リラックス効果もばっちりだ。
バトラーがここの温泉はかけ流しって言ってたけど、マジで贅沢だよな……さすが金持ち。これで湯上がりにコーヒー牛乳とかあったら、もう最高……。
一人でそんな事を考えていると、
「お前はじーさんか」
と、いつの間にか隣に来ていたゲイルにぐしゃぐしゃっと髪をかき混ぜられた。
「ちょっ、引っかかるから!痛いって!」
ベシッとその手をはねのけた。
「エリックの気持ち分かるよ。ほんと気持ちいいよね。あー露天だったらもっといいんだけどなぁ~」
セリウスも同じように縁にもたれ掛かり言った。
「ああ。明日は晴れるといいが……。ここは満天の星空で、天の川がよく見えるんだ。セレブリティよりはっきり見える」
ゲイルが自慢気に言った。
「そうだったな……手を伸ばせば、摘めそうな気になるほどに……」
側に来たライオネルが懐かしそうに、ふと微笑んだ。
ぼーっと満天の星空を想像した。
……そういえば星空で一つ思い出したことがあった。あれは無理やり行かされた、ボーイスカウトでの事だ……。
「……昔、星空キャンプ場とかいう所に行った事があるんだけど……」
そう話し出したエリックに、皆が注目した。
「──っ、あ、の、そんなたいした話ではないので注目しないで……」
「ふ……いいから、話してくれ」
ライオネルが笑ってそう言うので続けた。
「いや……曇ってて、星空はあんまり見えなかったんだ。でも森の中に目を凝らすと、小さな光がいっぱい見えてさ……ホタルかな?って思ったら……」
「……違ったのか?」
「……ネズミの大群だった」
「げぇ!?」
「誰かゴミをきちんと持ち帰らなかったんだろうね、こう……無数のネズミがうじゃうじゃ集ってて……その目が光って……」
「やめてくれる!?ホラーだよ、それ!うわっ、鳥肌たった!」
ゾゾゾっとしたのか、見ると本当に鳥肌がたっていた。
へー……熱いのに鳥肌ってたつんだ……。
「俺もネズミはどうも……あいつら大量発生するからな」
ゲイルが嫌そうな顔をした。
「ああ、駆除が大変だ。流行り病の源だったりするから早目の駆除が必要なんだが、すばしっこくて厄介だ」
ライオネルもネズミは苦手のようだ。
「うわ~もっといい話してよ、エリック」
セリウスが自分の腕を撫でながら言った。
「…………ヤドカリは食べられる」
美味しいとかって誰かが言ってたよな……。
「知ってるよ!でも食べなくていいだろ?カニのふりしたり、空いた貝殻使ったり、宿無しなのに頑張って生きてるんだ」
「セリウス、君はほんとにヤドカリ好きなんだな」
ライオネルが呆れ気味に言った。
「ボクは亀の方が好きだ」
亀の方が大きいよな。
「……エリック、さっきから支離滅裂だよ?あちこち話が飛んで……あれ?顔が赤くない?」
セリウスが、エリックのおでこを触った。
「熱い。のぼせてない?」
「え?そう?」
そう言われると、なんだか頭がクラクラしてきた?思考が定まらないような……?
「上がった方がいい。立てるか?」
ライオネルに言われ立とうとした。
──あれ?
「……おかしいな?」
足に力が入らない?
「エリック」
ぐいっと引かれたと思ったら、くんっと体が浮いた!?
「!?」
どわーーーー!!!!
これ、お姫様抱っこじゃん!いやいやいや!これは恥ずぃぃいい!
「落ちるなよ」
ゲイルの声した。
「──ゲイル……歩けるよ……降ろして」
わぁ、ゲイルってお肌ツルツルだねぇ、って!いや、裸の身体が密着して……生々しいんですけど!!熱い!余計にくらくらする!
「──いや、かなり熱いぞ?大丈夫か?先に上がろう」
「──…………」
……純粋に心配してくれてる?
俺ってば……なんか下心あるんじゃないかって思ったりして……バカだ。
「──そのまま部屋に連れ込まないでよ?」
セリウスが背中に声をかけた。
「ゲイル、無体な真似はするなよ?」
ライオネルまでそんな事を!?
「──アホ」
ゲイルが嗜めるように言った。
だよね。……ほんと皆からかいすぎ……
「合意の上でしかやらん」
──ってぇ!!何を?何をする気ですか!?
「──あの…………ボクは…………」
ボソボソと何か言おうとしたけど、怖すぎて声にならなかった──
ドナドナドーナドーナー……連れ去られた……。
王子様は助けに来てくれるの?




