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#57 秘密

初恋なんて実らないものだよ。

「何だか暗くなってきたわね……」

急に暗くなってきた室内に、ルルカが顔をあげ、呟いた。


「ええ……ほんと……」


ユリアも顔をあげ、窓から外を見ると、白かった雲が暗い色に変わっていた。

……雨でも降りそうね……


ふと、プール側の窓辺にゲイルとエリックが立っているのが視界に入った。


……ゲイルの“普通に好き”って、やっぱりエリック?普通の好きは友達にも感じるものだもんね……


そうぼんやり考えていると、二人が睨み合ったまま動かなくなった。


…………なんだか様子がおかしい。喧嘩かな?止めた方がいい?


様子を見ていると、(おもむろ)にゲイルがエリックの肩に手を置いた。

そのまま身をかがませ、耳元で何か囁いたみたいだった。

途端にエリックが首まで真っ赤になった!


……エリックってば茹でダコみたい。カワイイ!


あ、エリックが反撃した。足でゲイルを蹴っている!


ゲイルは笑いながらエリックの頭をくしゃくしゃにした。


「……かわいい……」

二人のじゃれ合う姿がとってもカワイイ。

こういう感じの二人は今まで見たことなかった……。



「……あの二人、お付き合いするのかしら?」

と、ルルカも気付いたのか、二人を眺めながら小さな声で言った。


「え……なんで?」

まさか!いや、私も思ったことはあった。エリックってば、もしかしてゲイルが好きなのかな?って。


「だって……ねぇ、セリウスはどう思う?」

コソコソとセリウスに聞いた。


なんとなくしてはいけない話をしている気になってきたのか、小さな輪を作り、ヒソヒソと話しだした。


「ゲイルとエリックかい?うーん……エリックは真面目君だからなぁ。一夏の恋って訳にはいかないんじゃない?」

セリウスがおどけたように小さな声で言った。


「何バカな事を言ってる。アレは弟分として構ってるだけだ。アイツの好みは大人な女性だ。セリウスも知ってるだろ」

当然のような顔でライオネルも密やかに囁いた。


「大人な女性……」

大人……大人なのか…………えー…………。


「ああ、3つ年上のミランダという従姉がいてね。彼女が初恋だったはずだ。本人は否定するが、それ以来付き合う女性は皆ミランダにどこか似ている」


そうだったの!?そんなのはじめて聞いた!


「えー?言っちゃっていいの?ゲイル怒らない?」

セリウスがちょっと呆れたようにライオネルの袖を引っ張った。


「………………まずかったか?」


言われて気付いたのか、ライオネルがバツの悪そうな顔で口を押さえた。


「うーん……ライオネルにしては迂闊だね」


そうして、ますます小さな輪を作った。


「黙っていればいいわ。私たちは何も聞かなかった。ね?ユリア」

ルルカが人差し指を口に持っていき、しーっと言いながらそう言った。


「ええ。ゲイルの初恋なんて全然知らない」

ユリアも口にチャックをするような仕草で小さく頷きながら同意した。


悪巧みをする悪の集団のように、目と目で同盟を結んだのだった。



「お前ら何やってるんだ?」

と、低い声が頭の上から降り注いだ。


「あ、ゲイル」

「やぁエリックも」

「お腹すいたねって話してたの」

「そうよ。あなたたちはお腹すかない?」


さすが貴族達だ。

後ろめたい内心を尾首にも出さず、何事も無かったかのように、皆にこやかに応えた。


「……怪しいやつらだ。まぁいい。今日は外でバーベキューでもしようかと思ってたんだが……無理そうだな。夕食を早めに用意するよう言っておく」


「いいね。そうだゲイル。夕食まで暇だろ?僕と一局やろうよ。ライオネルとは今のところ一勝一敗の引き分けなんだ」

と、セリウスがチェス盤をトントンと叩いた。


「いいぞ。ぼろ負けにしてやる」

ゲイルが口の端を上げ、既に勝ったかのように言った。


「ふん、返り討ちにしてあげるよ」


そう言い合いながら、二人でテーブルに向かった。

二人の背を見送りながら、3人は何となくホッとしたのだった。


「エリック、4人でトランプしないか?ポーカーは知ってるな?」

サイドテーブルにあったトランプを取りながらライオネルが言った。


「うん」


「よし、では私たちも勝負だ。今度は君たちに負けないからな」

ルルカとユリアにそう言い、トランプを繰り始めた。


「あら、私も得意なのよ、王子様」

「ふふ、ルルカは顔に出ないもんね」

「ボクも結構出来るよ?」


「ほう、では5回勝負だ。勝った者には私から何かプレゼントしよう」


「「「……ヤドカリならいらない」」」

3人の声が揃った。


「…………私がやるわけ無いだろう」

心外だという顔をしながらトランプを配り始めた。

ヤドカリ……最近見ない……。

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