#55 勝者は誰か
そろそろお開きね。
うーん、困った。
誰を選んでも駄目な気がする。
だいたい皆してハイスペック過ぎなんだよ……。
その時、ヒューッと音を立てて、突風が吹いた!
「きゃっ!」
砂が舞い上がり、顔に当たった。
そして、ユリアの頭にビビッと閃いた。
……待って……そうよ……。
「ルルカ、あのね……」
こっそり耳打ちし、ルルカも納得した。
「では、発表します!第1回砂の城誰が一番か?の優勝は……」
「こちらの“動物達が住まう夢の城”です!」
じゃじゃーん!とルルカとユリアの合作を指差した。
「え!?それお城だったの?」
「結局自分のに入れてるよ!」
「……それはズルいのでは……」
「お前たち、不参加じゃなかったのか?」
次々と不満の声が上がった。
そんなのは想定済みだ。
「どれも甲乙つけがたい力作でした!そこで、投票になった場合、皆がやはり自分に投票するであろうことを考慮しました。こちらの作品はルルカと私の共同作品なので、2票となります。なので、コレが優勝ね!」
「流石ね、ユリア!どう転んでも私たちの勝ちだった訳ね!」
ルルカと手を取り合い勝利を喜んだ。
何か違う!だの、再審査をしろ!だのぶーぶー文句を言う男性陣にユリアが向き直った。
「砂のお城なんて、風が吹けば崩され、波に飲まれて消えていくものよ?皆のお城は確かにすごいけど、もう崩れかかってるわ」
ヒューっとまた強い風が吹いた。
「でもこのお山はびくともしてない。お城は人々を守るためにも作られるんだもの。やっぱりこのお山が相応しいでしょ?かわいいし!」
「ええ、かわいいは正義です」
ルルカがにっこり笑ってそう言った。
「ボクはいいよ、それで」
エリックが顎をポリポリかいて、しょうがないなぁって顔で口の端で笑った。
「そうだな。実際、どれも力作だ」
ライオネルが白い歯をキラリと見せて納得したように皆の砂の城を眺め言った。
「ま、上手く治めたか……」
ゲイルがやれやれと腕を組み言った。
良かった、これで喧嘩にならずに済んだ。
「ふふ、そうきたか。ま、いいでしょ。じゃあ、優勝者のルルカ、ユリア、君たちには優勝の記念としてコレを授けよう」
と言って、セリウスが箱を持ってきた。
「え、賞品があるの?」
まさか、賞品があるとは思ってなかった。じゃあやっぱり真面目に審査すべきだった!?
「もちろん、勝負事だからね。はい、記念にあげるよ」
そう言ってユリアの手に箱を乗せた。
「ええ……ありが……!?」
ガサゴソっと箱から微妙な振動が伝わってきた!
「ひっ!な、何これ!!」
思わず手を引き、箱を落としてしまった!
開いた箱の中からのっそりと現れたのは──
「「ヤドカリ!」」
「ああ、かわいそうに……ふふ、カワイイだろ?カワイイこのお山にぴったりだ」
そう言って“動物達が住まう夢の城”の上にヤドカリを乗せた。
「──やっぱりヤドカリ博士だ……」
ユリアが呟いた。
「セリウス、生き物はちょっと……」
ルルカが困った顔で言った。
「そうだな。お前にしては微妙なプレゼントだ」
少し呆れたようにライオネルが言う。
「可愛いけど……」
エリックがポソリと言った。
「俺ならいらん。ユリアたちもいらんだろ。海に返せ」
そう言ってゲイルがむんずとヤドカリを捕まえ、スタスタと岩場の方に歩きだした。
「ああ、何するのさ!それは珍しい貝殻に入ってて……ゲイルにあげたんじゃ──」
セリウスが慌ててゲイルを追いかけて行った。
「……セリウスって……あんな感じ?」
「ええ、昔から変わらない。甘えん坊で女たらしで……子供なのよ。あら、口が滑っちゃった」
そう言ってルルカが口を押さえた。
「ふふ、面白いわね!」
「……そうかしら?振り回されて……ううん、今は関係ないわ。私にはユリアがいるもの」
きゅっとユリアの腕に抱きついた。
「え?ええ、そうね!私たちは親友よね」
「ええ、あなたは大切な人よ」
そう言ってにこりと笑った。
笑ったルルカの顔が、何となく得たいが知れないと思ったのは内緒にしておく。
ビュオーッと先程よりさらに強い風が吹いてきた。
急速に天候が荒れてきた感じだ。
「……そろそろヴィラに戻ろう」
ライオネルの言葉を合図に、皆帰り支度を始めた。
なんとなく波乱の予感?




