#36 心境の変化?
なんとなく微妙な関係になってきた、流されエリックん……。
いったい君は誰が気になるの?
それから毎日勉強会は続いた。
順調だった。ルルカの魔法学を除いて……。
「ここの“大地を揺るがす地神”って何?この絵、大なまずみたい。なまずって魚よね?どうして地神なの?揺るがすって、ただの地震じゃない?訳がわからないわ!!」
とまぁ、こんな調子で一つ一つの絵や説明について納得がいかないとそこでストップしてしまうのだ。
「うーん、ルルカはもっと自分の分かりやすいものに置き換えた方がいいのかもな」
セリウスが頭を押さえながら言った。
「ええ、私もそんな気がするな。ねぇルルカ、身近なもので、こう…………」
魔法学が得意なユリアとセリウスが必死で教えているが、なかなか覚えられないようだった。
……まぁな、俺も苦手だわ。意味わかんねぇもん。ただエリック補正か、そのまんま丸覚えしてるだけだ。
魔法学は学問であって、実践はほとんど無い。実力のある者はセレブリティ学園ではなく、マジカ魔法学園に行くらしい。ので、この学園では座学なのだ。余計分かりにくい。
でも、実際にライオネルの魔法を見た時は感激したよなぁ……。
俺も苦手だから、ルルカの気持ち分かるな。
「そう言えばそれぞれの家系の得意な魔法があるだろう?それを実践してルルカに教えればいいのじゃないか?」
ライオネルが思い付いたように言った。
「それならイメージしやすいかもしれないね」
セリウスが助け船が出た、とばかりに食いついた。
「では私からやってみよう。我がゴールデンハート家では光の精霊の加護を受けていて、彼らの力を借りている感じだな。イメージ的には空気中に輝く光の粒を集め、思うものを形作ってゆく……」
「金の光を纏いし精霊よ、我に力を与えたまえ“ブルーム”」
空気中に光が現れ、ライオネルの右手に集まった。それがスーっと薔薇の花を形作り、ふっと光が消えた。手には薔薇が一輪残されていた。
「はい。どうぞ」
と、ルルカに黄色い薔薇を差し出した。
「まぁ、ありがとうございます。流石ね」
ルルカが目を輝かせその薔薇を受け取った。
やっぱり何度見てもすごい。
光の精霊って、ライオネルにぴったりだよな。
「エリック、君のところは火の精霊の加護があるだろう?やって見せてくれ」
「──え?」
いきなり話をふられた。
「?得意だろう?」
なんですと?俺が?あり得ん!
「──得意……じゃない……」
「だが……入試の時実践して見せたと先生方がおっしゃってたぞ?繊細な扱いに皆感心したと」
はぁ?なんじゃそりゃ!
いや、それエリックだし。俺が出来るわけないじゃん!
「────そう……だったかな……」
困った。どうする!?
「嫌なら無理にしなくていい」
ゲイルがトンっと俺の腕を叩き、ボソリと言った。
「──ゲイル……」
最近、ゲイルが優しい気がする。
なんというか、気遣い?を感じる。
もちろん絡んでくるし、乱暴だったりするんだけど、俺が本当に困ってたり、嫌だったりすることを敏感に察知してくれるのだ。
ユリアとの接近を邪魔するためにゲイルとの距離を縮めたからだろうか、なんか……嫌じゃなくなった。
「……ライオネル、ごめん。ちょっと出来そうにない」
「……そうか……いや、無理にとは言わない。悪かったなエリック」
「俺が教えてやる。ルルカ、お前はイメージが片寄りすぎなんだ。もっと全体を見ろ」
ゲイルがカタンっと席をたち、ルルカの隣に座った。
「全体?」
「そうだ、ここの…………」
それからはなんとゲイルが積極的にルルカに教え出した。
そうなのだ。ゲイルはほとんど受験勉強などせずにこの学園を受け、留学生枠を無視し実質3番で合格している天才肌だ。
改めてゲイルを見てみた。
褐色の肌に赤い瞳という一際人目を引く外見に加え、美形の色男ときてる。
斜に構えた態度といい、ミステリアスな雰囲気が相まって常に注目の的だ。
そして、好意と敵意が両極端に向けられてしまうのもゲイルらしい。
一時期やさぐれていたのもそういう様々な問題もあったのだろう。
……そうだよなぁ、ゲイルって一人で外国に来てるんだよな……きっと大変な事もあるんだろう。
ほんとは普通にいいやつなのかも……ちょっと避けすぎてたかな。
ユリアとの関係を発展されるのはマズイが、友達として付き合うのはやぶさかではない。
よし、俺も教えてもらおう。
ゲイルの話に耳を傾けた。
ユリアの気を引くんだよ!
あきらめたらそこで試合が!試合が……ね?




