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#35 イケメンの破壊力

何だかんだ言っても、お坊っちゃまだよね。

殺される!俺はこのまま頭を握られ、この野生の王様みたいな猛獣に潰されるんだ!!


「ふぁあああ~~~ひぁ~~~」

迫り来る手に圧倒され、思わず叫んでしまった。


と、ピタッとその手が止まった。

そしてふるふると震えだした。


「──お前…………何なんだ……その声……」


ゲイルが下を向き、腹を押さえて何かに耐えるようにプルプルしている。


「へあ?」

あ、良かった。殺されないですみそうだ。


「いや、だから…………変な声を出すな」

すーはーと息を整えている。


「変な声って……ごほん!失敬だな、君は」


「ふー…………失敬なのはお前だろう。ドリーム国のブラックダイヤ公爵の息子に対して“国に逃げ帰れ”だ?誰を相手にものを言ってる?下手したら戦争になるぞ」


ゲイルが顔をあげ、無表情に言った。


「──え?」

そうだった。


忘れてたけど、ゲイルは王族より権力あるって噂のブラックダイヤ公爵の息子だ。

ドリーム王国では裏で国を牛耳ってるのはブラックダイヤ公爵家だって噂で、かなり恐れられているらしい。

……でも……


「……そういう意味で言ったんじゃないけど……でも公爵とか外国人とか、そんなの関係ない。ゲイルはゲイルだし。そんな事を親に言いつけやしないだろう」


ここは乙女ゲーだしな。そんなキナ臭いことになるとは思えない。

第一こんなツッパリ野郎が「お父さーん、僕イジメられたの~」とか言うわけ無いと思う。


「────はっ!」


と、ゲイルが急に下を向き、腰に手を当て、しばらくそのまま動かなくなった。


…………え……何なの?なんでフリーズしてんの、この人……?


「……ほんとは俺に勉強会に参加するように説得しに来たんじゃないのか」


あ、復活した。


「……それもあるけど……まぁ……話し聞いたら、なんか気持ちも分かるし。やっぱり嫌なことを強要するのって、違うと思うから」


部活とか習い事とか、他人にとやかく言われたくない。

俺が帰宅部で、格ゲーを愛してるオタクだからって、いったい誰に迷惑をかけてると?

そうだ!オタクの何が悪い!帰宅部だっていかに早く家に帰れるのか最短距離を考えて歩いてるんだ!


だいたい綺羅が悪い。イケメン目指せ~とか言ってすぐ人の行動に文句をつける。

ああ、アイツの事思い出した!

綺羅!全部おまえのせいだかんな!!


「エリック」

ゲイルがふと顔をあげ、真っ直ぐこちらを見た。


ハッと我に返った。

「──何?」


「お前は俺に居て欲しいのか?」


「……そりゃ……出来ればそうして欲しい。皆で勉強会とかしたこと無いけど、楽しい……かもしれないし」


向こうでもやった事無いもんな。

リア充って感じだ。案外楽しいのかもしれない。


「──ふん、じゃあ頼めよ。“ゲイル様、一緒に勉強会に参加してください”って」

ニヤリと揶揄うようにそう言った。


はぁ?何で俺が……いやまて、ユリアちゃんに頼まれてた。ライオネルにも……。

むむ……しゃあねぇな……別に俺が頼むわけじゃないし。エリックが頼むんだし?俺には関係ないな!


「ゲイル様、一緒に勉強会に参加してください!」

ふんっと腰に手をあて胸を反らし、どや顔でそう言った。


「ふはっ!!何だそれ!人に物を頼む態度じゃ無いだろう!」

そう言いながらも大笑いし、さっきまでの怒ったような暗い雰囲気は消えていた。


「……ボクは言われた通りに言っただけだよ」

人に言わせといて何言ってんだか。


と、笑いの波がおさまったのか、ゲイルがまたこちらをじっと見てきた。

そして、その大きな手でガッと頭を捕まれた!


「んきゃ!?」

わしゃわしゃわしゃー!っとまた髪をぐちゃぐちゃに崩されたぁ!


「ちょ!何すんのさ!」

そのわしわしする手をぐっと押さえ、ペシッと払った。

途端に背後に回られ、今度はガシッと後ろから羽交い締めにされた!?


いやー!やっぱり殺される!絞め殺される!


「──いいだろう。参加してやる」

ふっと、絞める手が緩み、優しく抱きしめるように顎に手が添えられた。


「~~~~~~~~~はぅっつ!」


ボンッっとみるみる顔が赤くなるのが自分でも分かる!


「……エリック……お前が、望むなら……」

くっと反らされ、後ろから耳元で低くて甘いセクシーな声で囁かれた!


どひぇ~~~~~~~~~!!

ぞわわわわ~~~~~ってするぅ~~~~!

良い匂いするぅ~~~~~!!


「──ゲイル…………それ……やめてよ…………」

情けない声で訴えた。

ゲイルの腕を外そうと手を添えた。でもそれ以上ドキドキして身動きできない!

ゲイルのグレーの髪が視界に入った。


「………………もう少し……このままで……」

掠れた声と熱い息が首元にかかった。


「…………………………」

……クラクラして膝から崩れ落ちそうだ。

だんだん何も考えられなくなってきた……。


もうこれ、完全にバックハグじゃん……。


ああ!やっぱり距離をおきたいぜ!!

イケメンに流されてるよ!

しっかりしないと、エリックん!

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