#17強引な彼
いつになったらユリアちゃんとまともに話せるの!?
部屋割りの話が終わり、早速棟に向かった。
って、ちょっと待て!
俺、まだユリアちゃんに紹介してもらってないんだけど?男共とばっかりつるんでるんですけど!?
これって乙女ゲーだよな?俺は攻略対象で……もっとこう……女子と絡むんじゃないの?何故に男共とばっかり一緒にいるわけ?
「どうした、エリック。まだ落ち込んでるのか?」
と、突然グッと肩を抱かれた。
「うわっ!?」
びっくりした!
驚いて声のする方を見ると、真横にゲイルの整った顔があった。
赤い瞳が細められ、覗きこむように見つめる視線は、まるで獲物を狙う獣のようだった。
「ちょっ!」
うわっ、ちっか!近い近い近い近い!!
慌てて離れようとしたら、さらにグイッと、もう顔に当たりそうなくらい引き寄せられた。
「……俺が慰めてやろうか?」
低い声で耳元で囁かれた!
イヤ~~~~~~~~~!!!!
怖い!怖い怖い怖い怖い!!!ゾワゾワするぅ!
「ぶひゃ!」
思わず硬直し、変な声が出た。
俺まだ女子と手すら握ったことないんですけど!!コイツ、マジなやつか!?
「──ぷっ!あはははははは!」
と、突然ゲイルが大笑いしだした。
「おい、そう揶揄うな。エリックが魂が抜けたみたいになってるぞ。悪いなエリック。この男は人を揶揄うのが趣味みたいなところがあって、許してやってくれ」
呆れたようにライオネルがため息交じりにそう言った。
「あはははは!おもしれぇ!『ぶひゃっ』って何だよ!?『ぶひゃっ』って!!お前……!気に入ったぜ!」
腹を抱えて笑われた…………。
何処かでシャラララーンと音が聞こえた気がした。
「うっ…………」
かぁーっと自分の顔が赤くなるのが分かった。
いや、あんたの好感度あげたって全然意味ないんですけど!?
だいたい友達の少ない俺に、そんなスキンシップはびっくりするわい!
しかもめっちゃ綺麗な顔でいい匂いするし、声は響くし、どないせえっちゅうねん!
「──ボクは面白くないですよ」
ぶすっとして呟いた。
くそっ!なんなんだよコイツ!もう寄ってくんな!
「ふふ、まぁまぁ、コミュニケーションだよ、エリック。これから同じ棟で暮らすんだ。仲良くやろう」
ポンポンとセリウスに背中を叩かれた。
「はぁー面白。そうそう、仲良くやろうぜ。ナカヨクな」
またもや肩にゲイルの手が回り、ぐんっと引かれた。
肩を組んだまま、男子寮に向かっていく。
「ちょっと……!」
いや、だから離せや!
──こいつジャイアンかよ!!
ゲイルの方が背が高く、力も強い。
その強引な態度に翻弄されてしまう。
「あの……ゲイル様……」
俺はユリアちゃんと仲良くならなきゃいけないんだ!あんたなんかと仲良くしたくないやい!
「──ゲイルでいい。エリック」
ニッと笑い、ポンっとエリックの肩を叩いた。
そう思うものの、ゲイルの迫力に押され、何一つ逆らえないまま、ズルズルと引きずられるように棟に向かうエリックだった。
くくく!オモロ……