#153 月見の会
ども!皆さんお元気でしょうか?
更新ぼちぼちですが、お読みくださりありがとうございます!
季節がいつの間にかリアルに近くなってました……
秋に行われる学校行事というのはだいたいどこも似通っているが、ここにはいくつかリアルでは聞かない行事がある。
一つは女子寮だけで行われる6月の“星見の会”だ。
聖堂裏で行われる6月の“星見の会”は、願い事が叶うとかの、ふんわりした可愛らしいものだ。
対して“月見の会”は?─────
男子寮のエントランスに見慣れぬポスターが張り出されていた。
『明日の19時、聖堂裏手の奥、迷宮広場にて“月見の会”が行われる。参加者は時間までに現地に集合されたし【白】』
……“月見の会”ってなんぞや?“月見”って事は、所謂“お月見”か?ススキ生けて団子食うのか?そんなん行くやついんのかねぇ?
「“月見の会”開催されるんだ。ふーん【白】か。白だとやっぱり……ライオネル知ってた?」
セリウスが驚いたように聞いた。
「いや……こちらに連絡は無かったから、急遽決まったんだろう」
「だよね?う~〜ん、あんまり行きたくないなぁ〜」
セリウスが肩を竦め、ため息混じりにそう言った。そんな嫌そうなセリウスははじめて見た。
エレベーターの中でセリウスに話しかけた。
「“月見の会”って何?月を見てお団子食べて、収穫の祈りを捧げる、みたいな行事?」
確か元はそんな風習と聞いたことがある。秋は米の収穫時期だからススキを稲穂に見立てて、みたいな。
「それはどこの国のお話だい?」
「え?小さい頃、外国の本で読んだ、のカナ?」
あぶねぇ、また謎知識を披露するとこだった。ユリアが居なくて良かったぜ。
「ふーん、こことは全然違う文化だね。セレブリティの“月見の会”はそんなんじゃないよ。お兄さんから聞いたことない?」
「うーん……記憶にないかな」
イーサンからかぁ。エリックは聞いてるのかもだけど、俺はほとんど会話したこと無いからなぁ。
「そっか。じゃあお兄さんの代では行われなかったのかもね。毎年あるわけじゃないから。まぁ詳しくは後で、ね」
ポーンっと音が鳴り、滑らかに扉が開き廊下に出た。いつもならそれぞれの部屋に向かうのだが……
「皆、着替えたら私の部屋に来てくれ」
ライオネルが言った。
各自の用があるかないかの確認もせずそう言うのは、これまた珍しい。
「はいはい、学年会としては団結しときたいもんね」
「なるほどそういう感じか」
「分かった」
ほんとは何も分からないけど、とりあえず良い返事をしておいた。
部屋に戻り、手と顔を洗いうがいをしてから身支度をする。
……ライオネルの部屋に行くって、実は初めてなんだよな。てか、ゲイルの部屋しか行ったこと無い。何故か皆俺の部屋に来るから……
「さて、何着てくかな……」
私服は実家から送られてきた物で、自分で買ったものは売店のハンカチくらいだ。
季節毎に送られてくる服は、なかなかおしゃれだった。
残念ながらジャージとかは無い。悟だったら年中上下ジャージ一択なんだけどな。
ラフなのが好きなので、ジョガーパンツに無地のTシャツを着た。王子様の部屋に行くのだからTシャツだけではまずいかと念の為カーディガンをはおった。
ライオネルの部屋の前に行くと、既にセリウスが来ていた。
「セリウス、早いね」
「まぁね。僕はライオネルの側近だし、こういう時は直ぐに動く事にしてるんだ」
「そうなんだ。さすがセリウスだ」
うーん、こういう時ってどういう時なん?さっきから意味不明なんだが?
「ライオネル、セリウスだ」「エリックも居ます」
「ああ入ってくれ」
ドアを開け中に入ると、そこはゲイルの部屋との色調とは正反対で、白と金を基調としたいかにも王子様な部屋だった!
……うわぁ〜すっげぇな〜部屋ん中にシャンデリアとか。どうみても俺の部屋とは大違い……やっぱこっちも壁ぶち抜いてんな〜。ん?アレ……え?なんで部屋に階段?
「ふっ……エリックは私の部屋に入ったのは初めてだったかな?ようこそ我が私室へ」
「あ、はい!お邪魔します」
うぅ〜笑われた。キョロキョロして口開けて天井見てたからな。我ながら恥ずいぜ。でも何で階段が?どこにつながってんだよ。
「エリックってば、気になることがあるみたいだね」
「あ、うん。どうして階段があるのかなって」
「ああ、それは上に部屋があるからだ」
「え、上に部屋?」
「この部屋はメゾネットになってて寝室は上だ」
マジかぁ〜〜そんなことってあるのかよ!ゲイルの部屋もすごって思ったけど、王族はさらに上をいくわけだ。
「流石だね。ボクの部屋とは全然違うから驚いた」
「……私は別に皆と同じで構わなかったんだが、周囲が許さなかった」
「そうなんだ。でも広くていい部屋でうらやましいよ」
「いつでも遊びに来て良いんだぞ、エリック。なんなら泊まっても構わない」
「……え?」
「島の時みたいに一緒に寝ても十分なくらいベッドは広い」
「へぇーそれはいいなぁ。じゃあ今度泊めてくれる?」
「ああ、歓迎する」
「その時は僕も泊めてもらうね」
おお、それはお泊まり会とやらみたいで楽しそうだ。
「セリウスの部屋はどうなの?」
「あれ?僕の部屋にも興味があるの?」
「それはもちろん。ゲイルの部屋も、隣を抜いてて広かったし、黒で統一されて格好良かった。いい匂いもして……ライオネルの部屋もこうだし、セリウスにも期待しちゃうよ」
海リスペクトのセリウスだ、部屋はきっと青一色なんだろうな。それはそれで落ち着きそう。
「……ゲイルの部屋には既に行ってるのか」
「へぇ〜〜よく無事だったね」
「………え?……あ〜〜そう……」
無事……ではなかったような。いや、あれはただの友情のキスだったし?何回かしたけど……キスだけだったし!やっぱり無事な範疇だよな?
「エリック、やっぱり何かあったのか?」
「……いや、特に何も。コーヒー飲んだだけ、ダヨ?」
ちょっとオドオドしてしまった。
ライオネルが更に何か言おうとした時、ドアをノックする音がした。
「あ、ゲイルが来たかな?ボクが出るよ」
断罪するかのようなライオネルの視線に耐えかね、ドアまで飛んで行った。
何故だ?とうして自分が悪いことをしたみたいに罪悪感を感じてしまうんだ?別に浮気したとかじゃないのに……って、バカ!そもそも付き合ってねぇっつうの!
「はい!」『……俺だ』
毎回「俺だ」ってなんだよ。オレオレ詐欺かよ。まぁ声で分かるけどさ。
「とうぞ…」
なんとなく素直にライオネルの部屋に入れたくないのは何故だろうか。
「やぁ」
「来たな。では対策を考えるか」
「まぁ、王子様に任せる」
「うん」
って言うものの、そもそも論なんですが?
何一つ分からないまま、月見の会なるものの対策会議が始まったのだった。
月見の会って何なん?
少し不安なエリっきゅん。
まだまだあっっっついけど、体調お気をつけてぇ〜〜(よぼよぼ)