もてあそばれた命
目の前の『始まりの騎士』を名乗るシャムに誠は混乱していた。
「でも、どう見てもシャムちゃんですよ。この人……」
誠の視線は目の前の全周囲型モニターの端に映る、サイボーグ用のゴーグルのついた特殊なヘルメットをかぶるかなめの画面に向かった。
『ネネの報告書を読んどかないからだ。こいつの言う事は真実だ。今のシャムは『始まりの騎士』。この星に地球人がやってくる以前の『遼州七国』時代より大昔から居た化け物。そう言う事だ。ラン!アンタは知ってるんだろ?と言うかこいつに煮え湯を飲まされた口か……』
サイボーグ用の鼻から上が見えないヘルメットの下で、かなめの口が嘲るような笑みで歪んだ。
『まあな。十年前だ……アタシがこいつを見たのは……二度と見ることはねーと思っていたが……アタシが甘かったってことか……』
ランの幼い顔に強がりのような笑みが浮かぶ。
『お前さんが甘いのはいつものことだろ?だから、第二小隊と第三小隊の餓鬼は一人前にならないんだよ。いいだろう!『始まりの騎士』唯一の臣下である俺が、騎士殿について教えてやる……ちゃーんと聞け……甘ちゃん』
嫌みな口調の吉田。それはいつものことだが、その口調はどこかいつも以上に尊大だった。
『かつての超古代文明に作られた騎士殿はこうお考えになった。自らを作った超古代文明だが、それはあまりに進みすぎたと。人としての分を超え、神に挑んだと……そしてその罪は重く裁きに値すると。特に命を技術でもてあそんだ所業……その罪……あまりに重い……』
冷酷、非情、残忍そんな吉田だが。今の吉田の口調はいつも以上に高圧的で挑戦的だった。
『それだけで滅ぼしたのか……何億、何十億、何百億、何千億……そんな命を……貴様は滅ぼしたのか……答えろ騎士!いや!私にとっては何があろうがお前はシャムだ!ナンバルゲニア・シャムラードだ!』
「カウラさん……」
いつもは冷静沈着なはずの、第二小隊小隊長、誠の上司であるカウラの怒りの言葉に誠はただ茫然としていた。カウラの怒りは収まることが無い。
『言ってみろ!シャム!答えろ!』
答えるはずの吉田は沈黙していた。誠はシャムの映された画面を見る。
シャムの表情は変わらない。先程からの尊大な笑顔は相変わらずそこにある。
『カウラ・ベルガーよ……貴様がそう言うとは思わなかったな。かつて、敗色濃厚なゲルパルト帝国が生み出した……人造兵士である貴様が……。一番よく知っておるはずじゃぞ?貴様ら人造兵士のなれの果て、世にいう『ラストバタリオン』ならば。ワシの言う事が……ワシが怒りを覚え、滅ぼした者共の命をもてあそんだ罪……決して軽くは無いことを……のう?』
相変わらずシャムの強い意志を持った表情は変わらない。シャムの非情な言葉にカウラはただ黙り込むしかなかった。




