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オーメソⅡアンビル  作者: tetu
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第十三話:勃発そして炸裂

前話の続きです。

 「お呼びしようかと思っておりました。あちらをご覧下さい。」言われた通り西の方角を見てみると、遥か向こうから大勢の何かが平原を押し寄せて来ていた。


 「何かしら。ものすごい数ですね。」


 「ねえペーニャ、あっちはラバーナの方よね。」


 「そうなんですけど、一体何が?」


 「この単眼鏡でご覧下さい。」ティファラが伸縮式の望遠鏡をペーニャに渡す。


 「うそ、魔物よ。魔物の大軍が押し寄せて来てるわ。」順に覗いて確認する。


 「アンビル、これは絶対に良くない事よね。ゴブリンやオークも沢山いるもの、想像したくないわ。」


 「お嬢様、冒険者の立場で言わせてもらいますと、すぐに行動に移らなければなりません。あの軍勢はおそらく王都を目指していると思われます。」


 「何故王都へ?紛争はラバーナで起きたのではないのですか?」


 「あくまで推測ですが、警戒していると思われるラバーナよりも無警戒のエルノイアの方が攻撃するのに都合がよいと判断したのではないでしょうか。」


 「そんな無茶苦茶な話があるか。エルノイアは無関係ではないか。要するに人間が相手であれば誰でもよかったという事か。」


 「後2時間もすれば森に到達するでしょう。森で進軍速度は鈍りますが、敵が森に紛れるのはいただけません。」


 「ティファラ、どうするのが一番良いと思いますか。選択肢があれば教えて下さい。」


 「分かりました。もうすでにアーレム商会へは伝書鳥を飛ばしておりますので、エルノイア軍がやがて出て参ります。あとはこのまま急いでこの場を後にするだけです。ただ、この場合王都近郊まで敵軍の接近を許してしまいます。これが通常の場合です。」


 「通常でない場合もあるのですか。」


 「はい、ロランもおりますので魔法による足止めをして、そこの平原を戦場にします。この場合、心苦しいのですが学生である皆様にもご協力頂かねばなりません。」


 「出来ると思いますか?」


 「お嬢様にその気があれば可能かと。」


 「皆さん、どうしますか?私一人で判断する訳にはいきません。みんなで決めましょう。」


 「どちらにせよ奴らは王都に攻めて来るのであろう。であれば答えは決まっている。」


 「そうね、少しでも役に立つなら頑張ってみる価値はありそうね。」


 「我がラバーナからエルノイアに迷惑をかけるなんて申し訳ないわ。出来る限りの事をするわ。」


 「分かりました。みんなで頑張ってみましょう。でも、ロランを呼びに行く時間がないわ。」


 「大丈夫です、ロランならそちらに控えておりますので。」5メートル離れた岩影に立っていた。


 「まあロラン、いつの間に?」


 「緊急事態ということで、魔法を使って急いで参りました。皆様方のご立派なお考えに感動致しました。微力ながらお手伝いさせて頂きます。」


 話は決まった。ロランとアンビルが攻撃し、他の者は防衛する。岩山に辿り着かれたら撤退する手筈である。


 「大丈夫でしょうか、あれだけの軍勢を相手に二人だけで攻撃なんて無茶じゃないですか?」


 「お嬢様、出来る限りやってみましょう。幸い私は極大魔法が得意ですので、そうそう簡単には近づかせませんよ。」


 「私はどうしていたらよいでしょう?」


 声をひそめてロランが問う。


 (お嬢様、極大魔法はどうされますか?)


 (こないだみたいなのはダメです。兵器アンビルなんて言われたくないですから。)


 「お嬢様はファイヤーボールで結構ですので、ひたすら撃ち込んで下さい。お嬢様のファイヤーボールの威力ならどうにかなるでしょう。」


 「分かりました。コリンス先生にイメージの事を習いました。それでがんばってみます。」


 「それではいいですね。近づかれて矢が飛んで来た時は、ティファラとイプシルさんが椅子で受けます。一斉に防げないほど飛んで来たら、ペーニャさんが先ほどお教えしたブレスオブガーディアンを唱えて下さい。ミルノさんは治癒担当ですので、ティファラのそばにいて、なるべくダメージを受けないようにして下さい。」


 「向こうから魔法攻撃があった場合は?」


 「私がディフェンスオブソーサラーで防ぎます。撤退も視野に入れて、くれぐれも力を使い果たさないように注意して下さい。」


 まさかこんな事になるなんて。本当に必要になったらロランがこないだの呪文を教えてくれるでしょう。その時は仕方ないわね、また撃つしかないでしょう。そうならないといいのだけど。


 そろそろ時間になってきた。近づいてくるととんでもない大軍だった。


 千や二千ではないだろう。魔物の集団らしく、統率もなくわらわらと歩いてくる。当然こちらに気づいてはいない。


 「アンビルさん、大丈夫でしょうか?素直に撤退した方がよくはないですか。」


 「無理はしないように、出来る限りの事をして、後はスタコラさっさよ。」


 「ミルノ殿はいつも通りだな。私は緊張してきたぞ。」


 「安全第一でいきましょう。ティファラ、皆さんの事よろしく頼みます。」


 「お嬢様、ご立派です。この命に代えましても。」


 「死んではいけません。誰一人失わず目的をはたしましょう。ロランもいいですね。」


 「分かってます、お嬢様。それではそろそろ配置について下さい。私は呪文の詠唱に入ります。私のあとすぐにお嬢様はファイヤーボールを撃ち込んで下さい。」


 「では皆さん、少し怖いですががんばりましょう。」


 いよいよ敵が迫ってきた。頂上の大きな岩に隠れて攻撃を仕掛ける。椅子を構えるティファラとイプシルが妙に可愛いかった。


 迫り来る軍勢は岩山の上から見ると凄まじい数だった。見ていると集中出来ないので、目を閉じて集中する。


 「...雷神の至高なる力、技、威を示せ!トールサンダーボルトー!」ロランが雷撃魔法を放った。


 開幕先制の一撃だ。


 カカッ!ドンドンドンドンドドドドドーン!


 今よ!「我が意思に集いて敵を討て、ファイヤーボール!」特大よ、とにかくでっかく、大爆発よ!


 その通りになった。


 ロランの放ったトールサンダーボルトで敵の先頭から半径100m程に稲妻が降り注ぎ、辺りを黒焦げにした。突然の攻撃に魔物達の足が止まった。


 本来ならここから消耗戦になるはずであった。


 しかし間髪入れずにアンビルのファイヤーボールが炸裂する事となる。


 アンビルが生まれて初めて、最大の威力をイメージした本気の一撃である。


 それは直径30mを越える燃え盛る太陽のような火の玉だった。


 一万はいるであろう魔物達は、皆その場に立ち止まり、突然出現した巨大な火の玉を黙って目で追った。


 岩山の頂上部分よりデカイそれは1kmほど先の敵軍のど真ん中まで飛んでゆき着弾。


 ズンと地鳴りがした後、カッと閃光を発し、ドォッーゴーォオンッと爆発しグゴゴゴゴと高さ300m程の見事なキノコ雲を作り出した。


 100mはある巨大なクレーターが出現し、魔物の軍勢が爆風で放射線状に倒れたり飛び散ったり焼け焦げたりしていた。燃え盛る炎以外動くものは皆無だった。


 もはや隕石である。岩山の上では全員棒立ちでぽかーんと平原だった場所を眺めていた。


 「アンビル、今のは?何?」


 「えっと、ファイリャー?ボールですけど。」


 アンビル今さら無意味にかむ。


 「お嬢様、さすがでございます。ロランは感服致しました。おそらく歴史上最大の単独魔法と思われます。まさか、これ程とは...」ロランすら驚きを隠せなかった。


 「お嬢様、王都は、いやエルノイア王国はお嬢様に救われ、護られました。」ティファラがハンカチで涙を拭う。


 アーレムな人達はいい、単純な思考でそういうモノだと受け入れられる。だが普通の人間は大変である。


 「アンビル、あなたに悪気がないのはわかってるわ。でも私、ラバーナの魔物達に同情してしまうの。あれは、あれはないわー」ミルノは神学校卒だからか慈悲深い。のか?


 「アンビル殿、やはりファイヤーボールと言うにはいささかあれではないか。」何なのだ。


 「でも、確かにアンビルさんが唱えたのはファイヤーボールの呪文でしたわ。あれでもかなり遠くから離れて見ればファイヤーボールに見えたのでは?」ペーニャ、まったくフォロー出来ていない。


 被害者は他にもいた。またもや頭上を死が通り過ぎていったマッドウルフ達はまたも泣いてしまった。吠えるなど無理だった。


 魔物の大軍が押し寄せて来た時は今までのツケがまわってきたのか、こうなったら派手に討ち死にしてやる。と、狂った狼の面目躍如の心意気であった。


 しかし、カミナリにびっくりして飛び出すタイミングを逃し、熱さに振り向けば飼い主が巨大な火の玉をこちらに向けて放った。


 あっ、死んだ。昨日の肉旨かったなあとか思ったが、またも頭上を通り過ぎていったそれは、今までに見た事がない大爆発を起こした。あの大軍がたった一発、一撃で全滅。


 なんだよ、それ。


 勿論ファイヤーボールであるが、マッドウルフ達には分からない。


 爆風で煤だらけになりながら改めて理解した。


 死ぬ事より恐ろしいモノ、それはあの飼い主だ、と。


 飼い主は死神か悪魔のどちらか、あるいはその両方だろう、と。


 自然と泣いていた理由はよくわからないクライなマッドウルフ達であったが、恐かっただけだった。

次は時間がかかると思われますが、よろしくお願いします。

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