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醜いエルフの子

むかしむかしあるところに、みにくいエルフの女の子がいました。


女の子は、ベトリーヒとよばれていました。

ベトリーヒはエルフの里に住んでいましたが、みにくいベトリーヒは、他の子にうとまれ、いじめられていました。


みにくいベトリーヒをたすけてくれる人はだれもいませんでした。


そんなベトリーヒのゆいいつのお友だちは、森にすむ妖精たちでした。

妖精たちとお話している時は、いやなことを全て忘れることができました。


---


「やーい、やーいベトリーヒ!」

「醜い醜いベトリーヒ!」

「あはは!なんて醜いの!」


今日もベトリーヒの周りには罵声が飛び交う。見目麗しい近所のエルフの子供が彼女を罵ることは、もはや里の中では見慣れた光景だった。

しかし、当のベトリーヒは全く反応を示さない。彼女にとっても罵詈雑言を浴びせられることは慣れたことだったからだ。


そして、彼女が向かった先は森。大人に頼まれて森の中に薬草を採取しにきたのだった。

森は広くて、静かだ。そこにいればうるさい子供たちの声を聞かずに済む。そのため、森は彼女の居場所であり、森に行くことは彼女の日課だった。


ベトリーヒは籠を手に頼まれた薬草を取りに湖まで行った。しばらく水辺に生えている薬草を採取することに夢中になっていたが、ふと作業をやめ、湖を見つめた。


今日はなんていい天気なのだろう。地上に生えている草や木が湖の水面に映っていて、とても美しい。


彼女は美しい光景を前に目を伏せた。


そこに映っているのは、己の姿。

長い黒髪に金の瞳の少女。そして、少女は顔の右半分が爛れている。彼女は自分の顔に手を当てた。


魔法で癒しても、どんな霊薬を飲んでも治らなかった傷跡。


自分は、なんて醜いのだろう。


美しい光景が尚更自分の醜さを引き立てているようでなんとなく居た堪れなくなった彼女は、さっさと薬草を必要な分採取し終えると、その場を離れた。


しばらくぼーっと歩いていたベトリーヒだったが、途中で何かを見つけたのか、いきなり走り出した。

彼女が見つけたのは緑色の毒々しい花だった。これは、霊薬の材料となる花で、希少性が高い。

しかし、彼女が見つけた時にはもう既に枯れ始めていた。

彼女はひどく落胆した。

霊薬の材料は、基本的に鮮度が高く無いと効果が無いのだ。


こんな時に、自分は魔法が使えたらなと思う。他のエルフの子供たちは皆呼吸をするように魔法を扱うことができる。しかし、ベトリーヒは醜いだけでなく落ちこぼれだった。

精霊や妖精の姿をみたり、感じたりすることが出来ない上、魔法が一切使えないのだ。

もし、魔法が使えたら花を生き返らせることが出来ただろう。


しかし、やっても出来ないことについて考えるだけ時間の無駄だと、彼女はさっと思考を切り替えた。


自分は確かに容姿、能力において他の子より劣っているかもしれない。でも、得意な事だってあるのだ。


例えば、武術。

エルフの里は人口はあまり多く無いため、里にいる全員が家族という感覚だ。エルフの中には将来里の外へ出る者のために、魔法はもちろん、基本的な武術(体術、剣術など)について大人たちから習う。そもそもエルフは種族的に戦闘に向いていない。そのため、皆、武術は比較的苦手だった。しかし、その中でベトリーヒは武術が得意だったため、武術が唯一誇れるものになった。

彼女は自分の劣等感を無くすものが出来たことに感謝した。


例え、他の子と比べて劣っていたとしても、一つでも他の子より優秀なものがあればそれでいいではないかと思えるようになった。


それ以来、必要のない劣等感に苛まれることはなくなり、自分に自信がついた。


だからこそ、今まで様々な仕打ちに耐えられたのだ。


しかし、彼女の想いは今も昔も変わらない。



──私は、強くなりたい


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