学園案内【忍び群がる】
「さよ〜、お友達?」
「あ、彼女はね」
紗和ちゃんが話し掛けてきた背の低い男の子に私の事を紹介をしている。
ふと辺りを見渡すと、自分がいつの間にか忍軍団と呼ばれる人達に囲まれていた事に気付いた。稀有なものを見るように注がれる皆の目線が居心地悪い。
(……ホントに男の子ばっか)
元々女子の少ない選択クラスだったが、二年になると多数脱落者が出て、女子はさっき会った橘さん一人になってしまったと、紗和ちゃんが教えてくれた。独特な雰囲気で、普段武芸場に近付くような強者な女子はいないという事も聞いた。
それにしても武芸を学ぶだけあって、体格のいい男子が多い。
その中でも、さっき助けてくれた彼はスラッと背が高く、群を抜いて目を惹く存在だった。
「あの……先程はありがとうございました」
深々と頭を下げてお礼を言うと、彼は照れくさそうに目を細めた。
(あ、まただ……)
目の無くなるその笑顔は、何故だか胸の奥がキュッと締め付けられる。
「ずりーよ、お前。第一印象良すぎじゃん!」
周りの皆が茶化す。
自分が注目されるのは苦手なのか、彼は『そんな事より』と話を逸らした。
「授業の仕掛け、片付けてないの誰だよ?」
「あー! それ俺、俺! マジごめんなさい!」
「村橋ぃー」
「悪かったって! まさかあんな簡単な仕掛けに引っ掛かる奴いると思わないじゃん」
「謝るのは俺じゃねーだろ」
そう目線で促されると、村橋と呼ばれた彼は慌ててペコペコと頭を下げながら謝ってくる。
「あ、いえ。私も不注意でしたし、おかげ様で怪我もないですから」
私が微笑むと、大袈裟な仕草でホッとしたように胸を撫で下ろした。
(それに……そのおかげで素敵な人にも出逢えましたし)
こっそり胸の中で囁く。
「あ! もうこんな時間!」
紗和ちゃんが時計を見て声を上げた。思った以上に長居してしまったようだ。
「早く行かないと全部回れない!」
「え、ちょっと、待って……」
先を急ぐ紗和ちゃんに手を引かれながら、私は仲間内で笑う、彼をもう一度一瞥する。
(あ、名前聞くの忘れちゃった……)
名前なんか紗和ちゃんに聞けば、すぐ分かるというのに。
(今度会ったら聞いてみよう)
次に会った時の会話の口実を作る自分がいた。