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闇を愛して  作者: 冴島月ノ助
すみれの花咲くころ
10/18

忍の者【仕掛けた罠】

 珍しい女性の来訪に、彼女達が去った後も武芸場は浮き足立っていた。


「綺麗な人だったな?」

「転入生だって」


 もちろん話題は紗和の連れてきた美人の話で持ち切りだ。


「俺の情報によると、紘乃先生の秘蔵っ子らしいぜ」


 iPadをいじりながら、そう話すのは宮田洋平。忍軍団、いや学園一の情報通だ。


「さすが耳が早いな、洋平」

「やっぱり舞クラかよ」

「武芸でない事だけは確かだな」

「あー同じクラスにならねーかなぁ」

「クラスは一緒でもさー、二年になってもっと選択クラス増えたら意味ねーよ」


 頭では分かっている事だが、改めて自分達の女っ気の無さを実感して、彼らは同時に溜め息をついた。

 そんな中、柏木迅はただ一人怪訝な顔をして先程の仕掛けに使われていた縄を見つめている。


「どうした?」


 彼と親友の佐々木大地がその様子に気付き、顔を覗き込んだ。

 迅とは寮でも同室であり、背の高い迅との身長差は十五センチ。忍軍団のデコボココンビと呼ばれている。


「授業の仕掛けはこの間皆で全部回収したよな……?」


 迅は思い出すように呟いて、仕掛けを見つめ直す。


「見落としたんじゃね?」

「こんな簡素で初歩的な仕掛けを?」


 迅に言われ、大地ももう一度目を向ける。言われてみれば、それは一年の初めの頃に習うような随分簡略化された作りであった。


「確かに、持ち合わせで慌てて作ったみたいだなー」

「持ち合わせ……?」


 二人はハッと同時に顔を見合わせると、目的の人物を探す。

 すると先程までいたはずの集団の中に、その姿はなかった。



 ***



「見えた?」

「いや、その前に切れた」

「何だよ~」


 武芸場を囲む木々の木陰に隠れ、小さな声で話す二つの影。


「影でコソコソ何やってんだ? 村橋」


 迅が腕を組んで仁王立ちで凄むと、ばつの悪い表情を浮かべた二つの影が姿を現す。

 村橋和樹と、西園寺次郎だ。通称:仕掛けのカズと、ぼんぼんじ。西園寺はいいとこのぼんぼんのくせに、武芸クラスという無骨なクラスを選択した変わった奴だ。


「西園寺。お前もグルか?」


 大地の言葉に小さく頷いた。いつも村橋のイタズラに付き合わされては、隣で申し訳なさそうに笑っている。


「なんでこんな事……?」

「そりゃ見たいからに決まってるだろ」

「何を?」

「パ・ン・ツ」

「はぁ!?」


 迅の大きく反応した声が、裏山に木霊した。


「だってよー、この男所帯に迷い込んだ華がいたら、その蕾を見たくなるのは男のさがってもんだろ?」

「…………」


 村橋が少しも悪びれる事なく――むしろ何故かドヤ顔で――言うので、迅は呆れて言葉も出ない。


「しかもカッコ良く助けたら、点数アップじゃん?」

「確かに!」


 それまで話を聞いていた大地が村橋の話に便乗する。


「ホントいっつもいいとこ取りするよな?」

「なー」


 大地まで一緒になって羨ましそうな目を向けるので、迅は再び深い溜め息をついた。


「でもまさか縄が切れるとは思わなかったけど……」


 西園寺がおっとりと独り言のように呟く。


(仕掛けが切れるのは計算外だった……?)


 確かに下着を見るのが目的だとすれば、縄はスカートがめくれ上がる直前に切れ、目的は達成していない。


「お前がちゃんとした縄用意しないから」

「は? お前の結び方が悪――」


(――ッ!?)


 西園寺に言い返そうと、向きを変えた村橋の横をヒュンと音を立てて風がすり抜けた。

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