ラブコメとは嘘である。
モブとして生きる山田太郎。毎日穏やかに過ごしていると怪しい視線が……
俺は山田太郎。17歳。
名前からも察する通り。モブもモブである。
この世界はラブコメの中なのだろうか。
教室中央で女子に囲まれながら笑っている御剣響也。
窓際で寝ている加藤龍之介。無愛想で、橋の下で猫でも拾ってそうなヤンキーだ。
密かに女子達の目線が集まっている。
畠中涼はゲーム機を握ったまま、女子に話しかけられても画面から目を離さない。
ひとつのクラスにこんな奴らがいていいわけが無いだろう。
そんなことを思いながら今日もオタク友達とお弁当を食べる。
机をガタガタ揺らしながら興奮した口振りで黒川が言う。
「おい見ろよ秀斗。今日もすげーな、御剣さんわよー。俺も女の子にチヤホヤされてー。御剣の周りだけでおっぱい8つあるぞ。」
おい。お前、そういうとこだぞ。
「は?黒川お前何言ってんだよ。おっぱいはふたつで1つだから4つだろ。」
論点そこじゃねぇだろ。だが、その意見には同意だ。
って、そんな馬鹿げた話はいいのだ。
俺には今重大な悩みの種がある。
今もこうして横から俺をガン見しているこいつのことだ。
「ねぇ、羽波さん。なにかな?」
羽波京子。
こいつは学校一の美少女--とラノベみたいな呼ばれ方をしている、俺の隣の席の女の子だ。
笑えば周囲がほのかに赤面する。
隣の席になってからというもの毎日こんな調子で俺を見てくる。
俺の顔にそろそろ穴が空いてしまうぞ。
まあ空いても誰も困らないんだけど、いや、困るだろ。
微笑みながら彼女はこう言う。
「ねぇ、今日も、そこに入れてるんだけど?見たよね?」
怖い怖い。目が笑っていないぞ。
「いや?何も無いよ。羽波さん。」
なるべく目を合わせないように答える。
「そう。」
そうつぶやき、教室を後にする彼女の背中を見つめながら机の中の紙を握りしめる。
放課後。
一目散に教室を飛び出し演劇部の部室に向かう。
このときを待っていた。
扉を勢いよく開けると夕日に照らされ本を読む羽波さんが目に映る。
......一瞬だけ、天使のようだと思ってしまった自分を殴りたい。
「おい!!なんのつもりだ!!毎日毎日一発ギャグ俺の机に入れやがって!!」
そう俺は叫ぶ。
そうなのである。こいつは俺の机に毎日一発ギャグを記した紙を入れてくるのである。
ラブコメとはなんだろうか。
頑張れとっとこハム太郎!!




