ミアからのメッセージ
「ただいま」
「ミッくんおかえりなさい!」
妹の濃濃夜が玄関まで飛んで来た。
「ねえ、ミッくん帰るの待ってたんだ。今日こそはミアちゃんからココへの手紙あるかな?」
濃濃夜はミチルを通してミアと手書きの手紙の交換をしていた。
「ああ‥‥ごめんねココ。ミアちゃん、ここのところすごく忙しいみたいなんだ」
ミチルは言うと、すぐに洗面台に向かった。
鏡を見ながら先程のことを考えていた。
ーーーザッカリーに言っちゃった。ミアちゃんを渡さないなんて‥‥。ミアちゃんはただの幼なじみのに‥‥バカだな‥‥‥
自分でわかっているんだ。僕はザッカリーに嫉妬しているんだって。
今日、改めて知ったんだ。僕を背負ったザッカリーの背中。力強さ。周りも気にせず真っ直ぐ目的に向かって行く情熱。僕には無いものばかりだ。
ミアちゃんはまだザッカリーのことほとんど知らないけど、ザッカリーを知ったならばきっと僕より彼の事を好きになるんだ。
そうさ、僕はミアちゃんが好きだ。このまま一緒にいればこの先も自動的にずっと一緒にいられるって根拠も無く思い込もうとしていた。そんなことあるわけないのに。
ミチルは頬を伝う涙を、顔を洗って無いことにした。
自室に戻り、部屋のベッドで寝転んでいると濃濃夜がやって来た。
「ミッくん。ココ、お願いがあるんだけどいい?」
「うん、何?」
仰向けに寝転んだまま左腕で両目を隠したまま答えた。
「ココ、まだミアちゃんからお返事もらってないけど、次のお手紙書いたの。渡してくれる?」
「うん、でもいつ渡せるかわからないよ‥‥‥」
「じゃ、ミッくんのスマホ出して。ココ、面白い本見つけたからミアちゃんに早く教えてあげたいんだ」
「仕方ないなぁ‥‥‥ココは」
ミチルが枕元に置いたスマホを手にした。
ーーーあれ? ミアちゃんから個ちゃ来てる。
ミチルは濃濃夜に渡す前にメッセージを見た。
「‥‥ココ、僕、ちょっとやらなくちゃいけないことが出来たから。ココの手紙もちゃんと渡しとくよ。ごめん。また後でね」
「‥‥うん、いいよ。でも、絶対忘れないでね」
濃濃夜は素直にミチルの部屋から出て行った。
ミアからのメッセージ。
《キリルが私のこと話したみたいだね》
《モデルのことも黙っていて怒ってる? 引き受けたの自分でも意外だった》
《自分で自分が良くわからなくて》
《だけど‥‥‥願わくはずっと私の友だちでいてね》
「ミアちゃん‥‥‥」
そうだった。僕は幼稚園で、ミアちゃんを助けたあの日からミアちゃんのナイトになった。
これからミアちゃんが誰を好きになったとしてもそれは変わらない。
僕はミアちゃんが困っている時には助けてあげたい。
それが僕の意思なんだ。
明日、キリルと島田先生との相談で何かしらわかるかも知れない。島田先生が父さんを救った若い先生だったのなら霊と話せるということだ。ミアちゃんの異変にも何か心当たりがあるようだったし。
ーーーどうやら何とかなったみたい。
ドアの隙間からミチルを覗いていた濃濃夜は、そっとドアから離れた。
ーーーほんと、世話のやけるお兄ちゃんだよね。帰って来た時はあまりにもよどんだ空気をまとっていたから探り入れた。
ココのカンでは、きっとミアちゃんのことだって思ったよ。
ココの大好きなミアちゃんは絶対にミッくんと結婚して欲しいの。だって、あんなにきれいなお姉さん他にはいないもん。その上ココにはいつだって優しいミアちゃん。
いつの日かはミアちゃんとココは義理とはいえ本当の姉妹になってみせる。
ふふ、ミアちゃんとココが並んで歩けば麗しい姉妹として有名になっちゃうかもね~。
土方姉妹なーんて呼ばれて *。・+(人*´∀`)+・。* ウットリ
ミアちゃんがココの本当のお姉さんになってくれたらスッゴく嬉しい。ううん、他の人なんて考えられないよ?
だ・か・ら、ミッくんにはう~んと頑張ってもらわなきゃね!
大丈夫だよ? お兄ちゃんにはココがついてるから。