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47限目　違和感

「おはようございます。レイラさん」

　カナエは笑顔で挨拶をしたのでレイラもそれに答えた。

「おはようございます。カナエさん。本日は学校ですので、車の用意をお願いします」

　するとカナエは目を大きくして驚いた。

「え……？　学校に行かれるのですか？」

「そうですよ。私のスケジュールは家政婦専用の家に貼ってると思うのですがありませんでしたか？」

「え……っと。あったと思います」

「そうですか。では今後は確認をお願いしますわ。それを見て車の手配やお風呂の準備をして頂けますと嬉しいですわ。わからない事は何でも聞いてください」

「はい」

　そう言って、レイラは自室に向かった。

　このカナエとの会話にレイラは少し違和感を覚えた。会話が成立しているが、自分でもよくわかない不安に襲われた。

　自室に戻ると、学校の鞄を持ち部屋を出た。

　車と所に行くとそこには後部座席の扉を開いて待っている運転手の俊則（としのり）しか居なかった。

　いつもは家政婦が忘れ物がないか確認しながらレイラを見送るが、姿はなかった。

　レイラは辺りを見回したがどこにも居ないので諦めて、車に乗り込んだ。

　俊則が運転席に座るのを確認するとレイラは彼に声を掛けた。

「この前はありがとうございます。あの時、父が俊則さんを辞めさせると言っていたので不安でした」

「いえ、レイラさんが落ち着かれて良かったです。勤怠の件はリョウさんが口添えをして下さいました。おかげでまだレイラさんの運転手ができそうです」

「そうなんですか」

　兄、リョウからの愛情を感じるとともに、レイラが両親からの愛情不足で育ったのではないかと推測した。

（ゲームでは成績トップであり桜花会に所属している事から教師を含むほどんどの人間がレイラを慕っていたんだろうな。だが、まゆタソが現れた事によりすべてが崩れたレイラはどうしていいかわからなくなったとか？　それがまゆタソに強くあたった理由？）

　今まで環境をふまえてゲームの内容を想像した。

「レイラさん、そろそろ到着しますよ」

　俊則の声で顔を上げて、窓を見ると桜華の制服を着た生徒がレンガの壁沿いを歩いていくのが見えた。

　車は速度を落として、ガレージに入ってゆっくりと指定の場所に止まった。

　俊則が後部座席の扉を開けると、レイラは礼を言って降りた。

　車は大抵生徒を送ったら戻ってしまうため、止まっている車はいつもまばらである。授業中は一台もないことがある。

　今は登校時間であるため、数台あった。

（常に止まってねぇんだから、止まる場所の指定なんて必要ねぇだろ）

　レイラは大道寺が止める場所の壁に書いてる大道寺の家紋みてげんなりした。

「レイラさん、お時間になります」

　あまりにもじっと壁を見つめていたため、俊則が心配そうに声をかけてきた。

「それでは行ってまいりますわ」

　そう言って、足を進めた。俊則は「行ってらっしゃいませ」と言ってレイラが見えなくなるまで頭を下げていた。

　レイラはガレージを出て、桜のマークがほってある看板までくると、ため息が出た。ガレージは室内でありエアコンが聞いているが、外に出ればまだ残暑が厳しい。

（金かけるならガレージから校内までつなげてほしいなぁ）

　レイラは心の中で悪態を付きながら、横断歩道を渡り、他の生徒と同様にレンガの壁沿いを歩き学校へ向かった。

　正門まで来ると、胸ポケットから学生証を取り出し機械にかざしてそれをまた胸のポケットにしまうと学校へ入った。

　校内に入ったが、白服はおらず黒服の一般生徒が校舎に向かって歩いていた。あいからず、会う生徒全員がレイラに挨拶してくれる。

　中には、遠くからわざわざかけよってくる生徒もいるのでレイラは申し訳ない気持ちになった。

　上履きを履き替えて、廊下にいくと後ろから「おはようございます」と聞き覚えのある声にに名前を呼ばれた。

　レイラは立ち止まり、振り向くと後ろにいたのは彩香であった。