20話 竜人の中でも特異種よ・・・前例がないのよ
部屋につきベットに横になって休んでいるとすごい勢いで来る足音が近づいてきて、その勢いそのままに部屋に飛び込んできた。グローリエはクロークが体調不良で自分をよんでいると聞いたとき悲鳴を上げた。少しのことでは治療に来ないクロークが自分をよんでいることに、治療箱をひっつかむと治療院を飛び出していた。
「・・・そのように慌ててこなくても」
しんどそうに起き上がるクロークにはっと治癒者としての自分を思い出すと心を落ち着かせた。はらはらとヘイルダム以下4人が見守っている中始まった。
「閣下、さっそく診察しても」
「頼む」
グローリエは差し出された手を包み込むとクロークの状態を診察し始めた。クロークは淡い光に包まれたグローリエを見つめていたが、徐々に光がなくなっていくのになんだと思いながら意識を失った。前に倒れてくる体をすぐに支えた。
「閣下!」
治療の邪魔をしないように隅にいたヘイルダムが飛び出してきた。4人はなぜか腰がぬけてへたり込んでいた。
「気を失われているだけよ・・・」
つとめて冷静にそういうグローリエだが自分の声も震えていることはわかった。しっかりしなさい!治癒者でしょと自分に言い聞かせる。支えていた体を寝かせ、もう一度診察を開始した。診察を終えたグローリエは難しい顔をしていた。ヘイルダムは言い知れない不安を味わいながら治療を始めたグローリエの背中を静かに見つめることしかできなかった。
「これで一旦様子をみましょう。わたしもしばらくここに常駐するわ」
「閣下は」
「・・・正直わからないわ・・・ものすごい勢いで生命力が削られているのよ」
グローリエの言葉をヘイルダムは一瞬理解ができなかった。生命力がなくなれば死を意味する、それがどんどん削られているということはとヘイルダムは静かに眠るクロークを見た。
「なんとかならないのか」
「いまは保護魔術で閣下を守っているわ・・・でも根本的な解決にはならない。
そもそもこれが本当に外的要因かもわからないのよ」
「どういうことだ」
「閣下は竜人の中でも特異種よ・・・前例がないのよ」