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眠れる王女と、眠れぬ王子  作者: 八知 美鶴
77/102

77話

「さて……と」

 懐から携帯用の燭台に火を灯すと、カルは周囲を照らしながら慎重に歩き始めた。

 荒削りの壁は狭く、中腰で歩く程度の高さだった。

 空気はかび臭く、長い間誰も通ってないことがわかる。

 天井は低く、中腰でなければ進めず、しかも人一人分の幅しかない。

 口元に布を当てながら、カルは用心深く歩を進める。

「ずいぶん先が長いわね……」

 どこまで続いているのわからないのはもちろんだが、万が一行き止まりだった場合、もう一度あの部屋に戻らなくてはならない。

 できることならどこかに繋がっていることを願いながら、ゆっくりと先に進んでいく。

 が、行き止まりにぶつかり、愕然とする。

「……嘘でしょう」

 今、あの部屋に戻るのはまずい。

 だからといってこんな場所で餓死するのはご免である。

 カルはこれも仕掛けの一部ではないかと、燭台で壁を照らしながら手探りでさがす。

 と、天井の一部が妙に出っ張っている部分に気づいた。

 カルは力一杯押すと、壁が少しだけ動いた。

 だがそれ以上いくら押しても壁が開く気配がなく、カルは仕方なく開きかけた壁を強く押した。

 と、壁はくるりと回り、カルは危うく下に落ちそうになってしまった。

「あ…あぶなかった……」

 なんとか身体を起し、燭台で辺りを照らすと、やや広い空間にでた。

 左右に道が分かれており、天井は高く壁も滑らかでがっしりとしている。

 どうやらカルが出てきた場所は抜け道だったらしく、床まで一メートルほどの段差があった。

「…ずいぶん古いけど……もしかしてセリアもここを通ったのかしら?」

 恐らく緊急時に使う通路なのだろうと考え、カルは用心しながら左右を確認する。

「ここ最近……誰かが使ったあとはないわね…」

 だが用心にこしたことはないと、カルは慎重に通路に降り立つ。

 そして壁をもう一度回転させると、ガチッとはまる音と同時にもどる。

 すると、そこには最初から扉などなかったかのように、壁の一部になる。

 念のためもう一度押してみたが今度はびくともせず、仕掛けも探してみたが見つからなかった。

 どうやら一方通行らしく、一度閉めたら開けられない構造になっているらしい。

「とりあえずここまでこれたけど、問題はここから先ね…」

 どちらに進めばいいのか悩むカルだが、右側通路奥から微かに光ったような気がした。

「?」

 気になって燭台を向けてみるが、暗い闇が広がっているだけだった。

 錯覚かと思い燭台を遠ざけると、また右奥から微かに光が見えた。

「どういうこと…?」

 もう一度燭台を向けてみると、光は消えてしまう。

「もしかして」…」

 燭台を吹き消すと、やはり右側の通路側だけ、淡い光が見える。

 まるで、カルの目指す先はこちらだとばかりに。

「まさかセリアが呼んでいるの……?」

 否定しかけて、カルは頭を振る。

 レイールが現れたというのなら、セリアが現れてもおかしくはない。

 ただ……目的が何なのかは未だにわからないが。

 だがレイールに乗っ取られた姫様を助けるためならば、ご先祖の亡霊と対峙するくらいたいしたことではない。

 むしろその亡霊から姫様を助ける手がかりを聞き出してみせる。

 そう意気込み、カルは通路を歩き出した。

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