(22)行き当たりばったりの旅~その3~
2人は七日浜駅を15時26分に出発するEV-N40系という「蓄電池電車」方式の2両編成のワンマン列車に乗り込み発車を待っていた。このワンマン列車は行きしに乗ってきた快速で通ってきた路線をそのまま星浜のほうへ戻っていくわけではなくまた別の路線へ向かって走る列車なのは明らかで、たとえその路線が行き止まりで引き返してきても星浜市の村瀬駅に終電までにたどり着けばいいのだからとにかく「面白そう」と見つけた列車にも乗ってみることにする。このワンマン列車の運転時間帯からしてまだ、4月ももう3週間目だから下校の時間帯にはまだちょっと早いが先に進んでいくにつれて途中から下校時間帯と重なりそうでこの辺から利用率が上がってきそうだ。でも、こんな途中から下校の生徒やら学生やらが乗り込んでくるところに遭遇するところも「行き当たりばったりの旅」の醍醐味の一つであろうか。2人は列車の後ろの車両となる2両目の車両に乗り、やはりボックスシートを陣取って座った向かい側の席にカバンなどの荷物を置いて靴を脱ぎ足を投げ出して座った。いかにも「旅をしている雰囲気の座り方」である。
ワンマン列車の発車数分前になって運転手からの放送が入った。
ワンマン列車の運転手「お待たせいたしております。この列車は週海山線経由で週海山方面、青池行きのワンマン列車でございます。あと3分ほどで発車となります。ご利用のお客様はご乗車になってお待ちください。なお、この列車はワンマン運転の列車ですので車掌は乗務いたしておりません。途中、駅員のいない無人駅では後ろの車両のドアは開きません。無人駅でお降りのお客様は前の車両の一番前のドアから運賃表示機に表示される運賃をご確認していただき運賃をお支払いの上お降りください。切符をお持ちのお客様は切符を運賃箱にお入れの上お降りください。途中、乗務員に御用などがございましたら駅停車中に乗務員にお申し付けください。なお、安全運行のため、走行中ならびに信号場での運転停車中に乗務員へ話しかけることはお断りいたしております」
ワンマン列車の運転手「お待たせいたしました。週海山線経由で週海山方面青池行きのワンマン列車、間もなく発車いたします。ご利用のお客様はご乗車のままでお待ちください。なお、列車発車後、カーブで揺れますのでご注意ください」
15時26分。週海山線経由の青池行きのワンマン列車が発車した。
山崎「青池?あれ、さっき行きしに快速で通ったところで、快速もこの青池に止まりましたね?」
豊田「ということは、行きしとはルートが違うけども星浜のほうへこのまま帰れるんだね?」
山崎「そうなんですよwwよかったね~ww」
豊田「wwwよかった」
2人が帰り道に乗った週海山線は行きしに通ってきた星浜新都心線が青池~七日浜間を直線的に結んでいるルートなのに対してこちらは海沿いをやや遠回りして星浜新都心線へ合流するルートになっているから最終的には接続が良ければ簡単に星浜市のほうまで帰り着くことができる。週海山線自体は電化されていないが、2050年現在使われているEV-N40系という「蓄電池電車」で始発・終着点に当たる駅や所々の中間駅、信号場に車両の床下に積まれているバッテリーに充電するための電化設備が設けられている。EV-N40系が登場するまでの週海山線では完全な気動車によって運転されていたがディーゼルエンジンからの排気ガスによる大気汚染などの環境問題への対策やディーゼルエンジン自体騒音がやかましく騒音対策などから電気車化することとなるものの、電化時の費用低減のために路線全体を電化するのではなく途中主要駅にバッテリーへの充電設備を設けるのみという必要最小限の電化設備で済む「蓄電池電車」方式が採用された。「蓄電池電車」は非電化区間でもバッテリー走行時にブレーキをかけると電力回生ブレーキが動作するが、この回生電力をバッテリーへの充電に充当している。こうすることによってバッテリーの消耗を防いでいる。
☆週海山線☆
七日浜⇒南七日浜⇒福沢⇒鹿野⇒箕原⇒市久保⇒船江⇒柿居⇒九軒⇒週海山⇒東週海山⇒烏島⇒大島内⇒西唐江信号場⇒唐江⇒熊寄⇒青池栄町⇒青池
列車は七日浜駅を出てしばらくは複線の星浜新都心線と並走するルートを走るが、最初の駅の手前で星浜新都心線の複線が右手へ分かれていくようにして週海山線の線路のみが単線で直進し南七日浜駅に着く。南七日浜駅を出ると線路は急に左へカーブしてここから再度、星浜新都心線と合流する青池駅までは平すら海沿いを走行していく。平均駅間距離は2km台前半で駅の数からして距離的にもそこそこのものだが、単線なので途中、列車の交換待ちや時間調整とかで実際の所要時間はかなり長い。それでも、海沿いを走っていることが多いので晴れた天気のいい日に週海山線に乗れば青池から七日浜までトンネルが連続していてなかなか景色が楽しめない星浜新都心線以上にもっとたくさん海を眺めていることもできる。
豊田「楽しみだね~。この2両編成の電車のいくところ?」
山崎「途中、通るところが違っても最後には行きし乗ってきた快速でも通った青池に出られるから、これでもう星浜まで帰るの簡単ですよね」
豊田「左のほう見てみて。海が見えてるわ~」
山崎「あ、ほんとだ。海が見えてますね。じゃあ、窓から海の見える左側の席に移りましょうか?」
豊田「そうですね~。左側に座りましょうww」
2人は出発時、右側のボックス席に座っていたが、海が見えるので眺めの良い左側のボックス席に移動し、豊田が窓際に、山崎が通路側の席に座り、2人とも靴を脱いで足を向かい側の席へ投げ出した。左側の車窓から見える海はこの日、あいにく曇っているので水も空も色がほとんど同じだ。
豊田「今日は曇ってるのがちょっと残念だったけど、もし晴れてたらきっと最高の海の景色なんだろうね?」
山崎「そうですよ」
豊田「やっぱり行きしのトンネルばっかりの快速もいいけども、こうやって海の景色がいいこっちに乗るのもありだね?」
山崎「はい、そうですよね~ww」
豊田は向かい側の席に投げ出している足の右足をやはり向かい側の席に投げ出している山崎の両足の間に挟み込むように組んだ。
豊田「ww山崎さん・・・愛してるよ・・・」
山崎「豊田さん、私も豊田さんのことが好きで愛してますよ・・・」
豊田「山崎さんの素足に触られると気持ちがいいね~」
「山崎さん大好き・・・」
山崎「それはどうもありがとうございますね~。私っていうか豊田さんにとっての『彼氏の素足』って気持ちいでしょww」
豊田「山崎さんの足のことを『彼氏の素足』って言ってくれるなんて山崎さんを彼氏にしてる私としてもとっても嬉しいわ~ww」
「ww山崎さん大好き・・・いつまでも一緒にいたいよ」
週海山線のワンマン列車は七日浜を出発してから約30分強が経過し16時を過ぎてくると沿線の学校帰りの生徒や学生が乗り込んでくる。学校帰りの生徒や学生は「今日も1日が終わった」と気持ちが緩んでいるのか学校が終わったら列車内でもワイワイと周りの仲間たちとやりあっている。これから青池に着くまでにさらに学校帰りの生徒や学生が乗ってくると2両編成では乗り切れなくなってくるようだ。2人は座っている向かい側の席に投げ出していた足を戻して靴を履き、荷物も自分で抱えて多くの人が座れるようにした。
週海山の2つ手前の駅で2両目の車両に乗ってきた学校帰りの3人組の女子高生が偶然、2人の座っているボックス席の向かい側の席に座った。あと1人の女子高生は山崎たちが座っているボックス席の横に立った。
女子高生A「キャ~ww、向かいの席に座ってる男性カッコよくてイケメンじゃない」
女子高生B「イケメンなお兄ちゃん。今日は隣にいる可愛いお姉ちゃんと一緒に電車の旅ですか~www」
女子高生C「カッコいいイケメンなお兄ちゃんと・・・お話ししたい・・・恥ずかしい・・・」
山崎「wwはい、こんにちは。今、私たち2人はこの電車に乗って星浜へ帰ろうとしてるんですよ。君たち学校帰りですよねww」
女子高性A「はいww」
女子高生B「wwはい、そうですよ」
女子高生C「そうですよ、今学校から帰ってる途中なのww」
女子高生A「え、星浜?それどこですか?」
女子高生B「星浜って高層ビルがたくさん建ってるビルの街ですよね?」
山崎「はい、そうですよ。私たち、その星浜に住んでるんですよ」
豊田「初めまして。私は隣にいるイケメンな男性の彼女です」
女子高生A「私、一度、こんなカッコいいイケメンな男の子とお話してみたかったの」
「お兄ちゃんって今いくつ?」
山崎「はい、私は今まだ29ですが、この6月で30歳になるんですよww」
女子高生A「お兄ちゃんの好きなこととかは?」
山崎「私は鉄道に詳しいのでこうやって何も考えずにただ単に電車に乗って旅をしたり、ネットで小説を投稿できるサイトへ投稿したり、オシャレとかでしょうかww」
女子高生B「お兄ちゃんの隣に座ってるかわいいお姉ちゃんとはどうやって出会ったんでしょうか?」
山崎「それがね・・・謎なんですよね・・・豊田さん?」
豊田「はい、私が隣にる男性とどうやって出会えたのかがちょっと謎なんですよね・・・ww」
「ま、いちお・・・出会いの場を提供するパーティーで隣にいる男性と出会えたんですよ・・・」
山崎「女子高生Bさん、私は隣に座ってるお姉ちゃんが言ってる通りに出会いの場を提供するパーティーで出会えたんですよww」
豊田「ちなみに、私はこう可愛く見えるけども、実はもう40歳なんですよ」
女子高生A「お姉ちゃん、とっても40には見えないよ」
女子高生B「ほんとにもう40歳?」
女子高生C「40歳?マジ?もっと若く見えるんだけど~」
山崎「どうでしょ?私たち2人はカッコいいイケメンとかわいいお姉ちゃんの素敵なカップルでしょ?」
女子高生A「キャ~、素敵~。私も早く彼氏と出会えたらな~」
女子高生B「素敵~。ラブラブな2人」
女子高生C「早く彼氏がほしいな・・・羨ましいな~」
山崎「そうだ!今日、私たち2人が『行き当たりばったりの旅』でこの電車に乗って君たちと一緒になったんだから、記念撮影しませんか?」
「写真は私のスマホで撮りますが、撮った写真をネットのメールで君たちに送りたいんで君たちのメールアドレスを交換してもらいたいんですが・・・」
豊田「3人組の女子高生たちと一緒に過ごした記念の写真、いいと思うよ。じゃあ、撮りましょうか?」
山崎は女子高生3人組のメールアドレスをスマホに登録し、山崎のスマホのメールアドレスを女子高生3人組にそれぞれ教えた。そして、女子高生3人組に写真を撮ってもらうためにカメラとなるスマホを女子高生3人組に貸した。
女子高生A「じゃあ、まずは私から旅してる2人のカップルとB、Cを撮りますね」
「ハイ、チーズ」
山崎「あ~、いい感じに撮れてますよ」
豊田「よく撮れてるよ。これ」
女子高生C「次は私がA、Bとカップルを撮るよ」
女子高生B「最後に私も撮りますよ」
女子高生3人組はこのワンマン列車の終点である青池まで一緒に乗っていてくれた。どうやら女子高生3人組もまた青池から星浜新都心線に乗り換えた沿線に住んでいる人らしい。
列車は途中の週海山駅で進行方向後ろ側に2両を増結して4両編成になった。2人が乗っている車両は前から2両目の車両だから「自分よりも後ろにさらに車両が連結された」感じになった。列車交換待ちを兼ねて増結作業を行ったために10分間停車ののち、青池に向けて列車は再び出発した。4両編成に増結されてからも運転は引き続きワンマン運転だが、4両編成で運転される時は途中の駅でもすべてのドアから乗り降りが可能になり運転手は列車運転を行いつつ駅でのドア開閉も行うという地下鉄などでよくみられる方式のワンマン運転になる。
週海山を過ぎると晴れ間が出てきて空は明るくなり太陽の光も見えてきた。
豊田「ようやく晴れてきたか・・・」
「朝はあれだけ寒い冬の雨だったのにね・・・」
山崎「1日ってほんとに天気が変わって不思議な1日だったこともあるんですよね~?」
七日浜から乗ってきて約1時間45分で終点の青池に到着した。週海山の2つ手前の駅から乗ってきた女子高生3人組とともにボックス席での楽しい会話も終点に着いたら終わり。週海山線のワンマン列車を降りてから
山崎「今日はまさか、この電車の中で君たちにばったり出会うとは思いもよらなかったですよ。こんな偶然な出会いは求めていてもまずやってきませんからww何も考えずに適当に電車に乗ってたら偶然やってくるか来ないかな感じなんですよね~ww」
豊田「私も電車に乗ってるだけでまさかこんなに会話が盛り上がってくることがあったの生まれて初めてだよ。とても素晴らしい、そしてもう一生やってこないと思われる素敵な思い出となりました」
女子高生A「今日はカッコいいイケメンな男性と可愛い女性のカップルに偶然出会えてそこから話が弾んでいったんですから、最高の学校帰りでしたよwww」
女子高生B「今日の2人で電車に乗って旅するの楽しかった?これからも2人で電車に乗っていろいろと旅を楽しんできてね」
女子高生C「今日の帰りに乗った電車で偶然見つけたイケメンな男性と最初はお話しするのがちょっと恥ずかしかったけども、しばらくしたら自然と会話に乗れてきてイケメンな男性とその隣にいた可愛い女性といろいろとお話しできてとってもいい思い出になったよ。お兄ちゃん、ありがとうねww」
山崎「こちらこそねwwあと、さっき、君たちと一緒に撮った写真を君たちのアドレスにメールして送るから楽しみにしててくださいね」
豊田「今日はいろいろとありがとうね」
山崎「じゃあ、君たち、私たちはここで失礼しますが気をつけて帰ってください」
女子高生A「ここでイケメンなお兄ちゃんとお別れするのが名残惜しいけども、また機会があったら会いたいですよ。今日はどうもありがとうございました」
女子高生B「また、イケメンなお兄ちゃんに会いたいな~」
女子高生C「またどこかでイケメンなお兄ちゃんに会えるように・・・じゃあ、ここから家へ帰りますよ」
こうした会話ののち、山崎と豊田の2人は星浜行きの快速が来るのを待って乗った。帰り道は青池から先も晴れ間が見えてきている。乗った時間が17時半前で星浜新都心方面向きの列車だから快速の車内はほぼガラガラだ。2人は海が見える左側の席に座った。
豊田「行きしは雨で空と水の境目がわからなかった海も晴れて来たらまた違った見え方になるね?」
山崎「夕焼けのオレンジ色の空と濃い目のブルーの水の境目がはっきりと見えますね?」
豊田「ところで・・・山崎さん・・・」
山崎「どうしたの?」
豊田「私、こないだお花見に行った『星浜センタービル』の50階にある『空中公園』から今度は夜の夜景が見たいの・・・山崎さん、今日もまた一緒に『空中公園』に行きたいわ~」
山崎「そうですね~。また、『星浜センタービル』50階の『空中公園』に行きましょうか?」
豊田「やった~。今日も大好きな山崎さんに夜景を見に連れてってもらえる~。嬉し~」
2人は快速で星浜駅に着き、ここから地下鉄で「星浜センタービル」に向かった。地下鉄は夕方のラッシュの時間帯で混んでいたが2駅間のみだったのでそれほどには気にならなかった。
「星浜センタービル」の50階にある「空中公園」に到着した2人は街の北の方が見える場所に行ってみた。「星浜センタービル」の北側には116階建てで秋の紅葉の時期にモミジが色付く「仙橋シティビル」がある。昼間、JRの快速で最初に停車した仙橋駅もこのビルの中にある。2人が「空中公園」に着いたのが18時半を過ぎた時間で4月下旬頃になるとこの時間帯には日が沈んでいるから夜景が徐々にきれいになり始める。2人は手をつなぎ夜景を眺め始めた。
豊田「わあ~、高層ビルが建ち並んでる街の夜景、とってもきれいだわ~。何だか、香港とかニューヨークの高層ビルがたくさん建ってる都会みたいだわ~」
山崎「はい、そうですよね~」
「高層ビル群の都会の夜景はとってもロマンチックでいいですよね~」
豊田「はい。一度、この場所から大好きで愛してる山崎さんと一緒に星浜市の夜景を見てみたかったの」
「あれ?、今いるところのちょっと目の先にもかなり高い高層ビルが建ってるよ?どれどれ、ビルの下のほうを見てみると何やら線路が通ってますね?」
山崎「この線路、さっきも快速で通ったところだと思いますよ?」
豊田「下の線路に電車が通ってるのが見えるわ~?」
山崎「ほんとだ。確かに電車が通ってるのが見えますよ。しかも、この電車、2階建ての車両も付いてるからさっき乗って来たのと同じ快速ですよね?ww」
「豊田さん、今度はこのビルの西側のほうが見える場所に移動してみませんか?」
豊田「はい、行こう」
2人は「空中公園」から街の西のほうが見える場所へ移動した。
豊田「ここから西のほうを見てみると海が見えてその先にもまた陸地があるのがわかりますね?」
山崎「確かに西のほうには海がありますね?船が停留されてるのが見えるからね?海の向こうにもちょっと先に街並みが見えますね?」
豊田「夜景と海の組み合わせ・・・横浜とか神戸とか函館とか・・・?」
山崎「港街の夜景って東京や大阪以上にロマンチックでいいですよね~?海の水も月の明かりに照らされますからね~?」
豊田「夜景を見てたら何だか山崎さんに抱かれたくなってきたよ・・・山崎さん・・・私のことハグしてぇ・・・」
山崎「はい、こんな感じに?」
豊田「はい・・・」
「あ~、夜景をバックに大好きな山崎さんに抱きしめられてると私の気持ちが落ち着いてきて安心してくるよ・・・」
「山崎さん大好き・・・愛してるよ・・・ww」
山崎「私も豊田さんのことが大好きです。愛してますよ」
豊田「山崎さん・・・温かい・・・」




