(21)行き当たりばったりの旅~その2~
2人はJR星浜駅から12時ちょっと過ぎの時刻に出発する快速に乗り込んだ。車両は室内の座席が転換式クロスシートで2階建てのグリーン車もある近郊形のN111系と称する車両だ。この快速は星浜新都心線を南下していく列車で途中、仙橋、村瀬、山尾田、新山尾田、上滝、下浜、大長谷、青池、川森と停車し、川森からは終点の七日浜までの7駅間は各駅に停車していく。始発点の星浜から七日浜までは約100km強ある。
始発駅の星浜駅は駅ビルの3階にある高架駅ながらホームは完全に駅ビル内に覆われているので雰囲気的には地下鉄の駅のようで、駅を出発して間もなく外の明るい景色が見えるがこの日は朝から冷たい雨模様。
2人は車内進行方向右側の座席に豊田を窓側に、山崎が通路側に腰を下ろした。座った場所がたまたまドア付近で、ドア付近の座席には転換して向きを変えられない席もありこの区画では実質ボックス席になる。2人の持っているカバンなどの荷物を座った向かい側の座席に置き山崎は靴を脱いで足を向かいの席へ投げ出して座った。
豊田「山崎さん、何だかほんとに旅してるって感じですよ。この座り方?」
山崎「はい、たまたま向かいの席が空いてたんで思わずやってみましたよwwこうすると気分がリラックスできるんですよね?」
豊田「どれどれ、私もやってみようかな?」
山崎につられて豊田も靴を脱いで向かいの席へ足を投げ出してみた。
豊田「今日はあいにくの雨だけど、雨の降りしきる超高層ビルが林立してる街並みもまたいい景色ですね」
山崎「雨の景色もまた風情があっていいかと思いますよ」
豊田「あれ、また駅ビルに入っちゃうんですね?」
山崎「次の駅に着いたようですね?」
2人の乗った快速は最初の停車駅である仙橋に着いた。星浜駅の隣の駅が仙橋で、星浜駅と同じようにビルの中を線路が貫通している構造で駅自体は地下鉄駅のような感じである。仙橋駅頭上にあるビルは「星浜センタービル」に並ぶ100階を超える超高層の「仙橋シティビル」でこちらは116階建てで、「星浜センタービル」と同様にやはりビルの50階部分のフロアが空中公園になっていてこちらは秋の紅葉が楽しめるようもみじの木が植えられている。この駅で北方面や東方面への線路が分岐している。
2人の乗った快速はこれから南のほうへ向かっていくのだ。仙橋を出た時点でもこの日は平日で週明け直後の月曜日ということもあってか客はそう多くは乗って来ず2人が乗った車両には合わせても20~25人そこそこしか乗っていない。
豊田「しばらくは高層ビル群の街並みが続いてて何だか2015年の世界では『まだそこまで』的な雰囲気だった街並みも物凄い発展になってるね?」
山崎「はい、そうですよねww」
「次の駅を出たらスピードがかなり速くなってきてません?」
豊田「はい、確かに速くなってきてるねww」
しばらく走って列車が五之宮を通過した時。
豊田「あれ、右に見えた真っ青な電車は何?」
山崎「私も初めて見ましたよ。真っ青な電車」
山崎はさっき五之宮を通過した時に右側車窓から見えた「真っ青な電車」のことが気になってスマホで調べてみた。そしたらJR星浜新都心線に乗り入れている星浜市営地下鉄のもう一つの路線の地下鉄側の車両であることが分かった。
山崎「今、スマホで『真っ青な電車』のことを調べてみたら地下鉄のもう1つの路線の車両でしたよ」
豊田「この星浜市には電車の中の電気が一瞬消えた黄色い電車の路線のほかにももう地下鉄の路線が1つあったんですか~?」
やがて列車は高層ビル群の街並みから高層マンションが林立している住宅地エリアになる星南区に入り、仙橋を出てから最初の停車駅の村瀬に到着した。
豊田「あれ?、『村瀬』って私たちが住んでるマンションのある地区ですよね?」
山崎「はい、そうなんすよ。私たちの住んでるところからもちょっと歩けばこの駅からJRに乗れるんですよね~。星南区役所もこの駅の近くにありますよ」
豊田「あ、そろそろ12時をかなり過ぎてますんでお昼食べませんか?」
山崎「はい、そろそろ食べましょうか?」
2人は快速に乗る前に駅のコンビニで調達しておいたものを食べ始めた。食べながら
豊田「いよいよ未体験エリアへ突入ですね」
山崎「はい、私もこの辺はまだ来たことがありませんでしたからこの快速に乗り始めた時からすでに未体験エリアに入ってますよねww」
相変わらず朝から降り続けている雨は一向に止む気配が見られない。すでに星浜駅からかなり走ったところだった。この辺まで来ると1時間当たりの列車本数がやや少なくなってきているが、まだ乗り始めてから1時間は経っていない。それだけこの快速は線形が良好なところでは常に130km/h運転をしていたことが伺える。右側の窓からは海が見えた。線路と海の間にはもう一つ、片側2車線の道路も通っている。
豊田「あ~、海が見えた!」
山崎「いよいよ海が見えてきましたね。私はこの2050年の世界にきて海を見たの2週間前の月曜日にお花見に出かけた『星浜センタービル』にある『空中公園』から見た時以来、2回目ですね」
豊田「でも、今日はあいにくのお天気で空が灰色で海の水平線がどこなのかがわからないわ~?」
山崎「何だか海と空が一つに合体した感じですね?」
「ここ、天気のいい晴れた日に通ったらきっと素晴らしい海の景色が楽しめていたかもしれませんね?」
豊田「はい、そうですね」
「真夏の晴れた天気のいい日にここで見る海はきっと水が真っ青に見えることでしょうね?」
「山崎さん、今日はどこまで行きましょうかね?」
山崎「そうですね~、とにかく今日中にマンションまで戻れる範囲内だったら今、乗ってる線の奥のほうまででも行けそうかもしれませんね?」
豊田「ということは今、乗ってる快速の終点よりもさらに先のほうまで?」
山崎「今、乗ってる快速は七日浜が終点ですから、終点についてからまた考えて決めてもいいかもしれませんよ?」
豊田「それもいいね」
2人がこう会話をしているうちに快速は川森を過ぎていた。川森からは快速は終点の七日浜まで各駅に停まっていく。この間、7駅間あるが駅の間隔が長く実際にはそれのみでもかなりの距離がある。川森を過ぎると線路は海沿いから山の中へと向きを変え今度はトンネルが連続した路線になる。
豊田「今のトンネル、ちょっと長めなようですね?」
山崎「はい、私、初めて地下鉄以外でトンネルを電車で通りましたよ」
豊田「左のほう見て。トンネルの壁に広告の動画が表示されているよ」
山崎「ほんとですね。確かにとある企業の広告の動画ですね?これは。実はこれ、トンネルの壁には動画のコマを1コマずつ並べてあって走っている電車の窓から見ると『パラパラ漫画』のように連続した動画のように見えるんですよ」
豊田「なるほどね。そうなのか~」
「トンネルを出たらいきなり山の中に入っちゃったね~?」
山崎「はい、そうですね~。今度は山やトンネルを抜けてまた新たな街へ向かってるんでしょうね~?」
やがて2人の乗った快速は13時半前に終点の七日浜に到着した。星浜から乗り始めてから1時間20分そこそこでこんなにのんびりとした駅からほど近いところに海と港がある雰囲気の街に到着できた。終点だからとにかく降りないことには始まらず快速を降りて「何か面白いものはないか?」ととりあえずは駅の改札を出てみた。2人は手をつなぎ、駅の近くを歩いてみた。さすが、海に近い地域ということがあってか駅前から潮の香りが漂ってくる。星浜市では雨が降っていたが、2人が今、来た七日浜では傘はいらない曇りだった。駅から歩き始めてしばらく行くと道沿いの左側に素敵なログハウス風の建物があったので入ってみた。
豊田「あ、山崎さん。この道の左手に何だか素敵な雰囲気のログハウスの建物があるね~?入ってみようか?」
山崎「はい、入ってみましょう」
2人が入ったログハウス風の建物の中はカフェでありながら七日浜で穫れた新鮮な魚を使った料理も出すというユニークな店だった。店内の店員もイケメンな男性と可愛い女性が合わせて4人という明るい雰囲気の店だ。この店にも各テーブルにメニュー表示とタッチ注文ができるタブレット上の端末画面が置かれている。
イケメン店員「いらっしゃいませ、2名様ですね」
「こちらのお席へどうぞ」
2人はイケメンな店員に案内されたテーブル席に座った。メニューが表示される端末画面を見て「旬のお刺身とキムチの和え物」が出てきて2人は一瞬、不思議に思い2人ともご飯とこの「旬のお刺身とキムチの和え物」、ドリンクとしてスイートグリーンティーを注文した。
豊田「『旬のお刺身とキムチの和え物』ってきっと『あれ』ですよね?簡単に切った生で食べられるお魚をキムチで和えたものですよね?」
山崎「キムチ味のお刺身もまたおいしそうですよね~?」
豊田「はい、そうですね~」
「もう一つ、『スイートグリーンティー』はお抹茶に砂糖を混ぜて甘くしたものなんでしょうかね~?」
山崎「ですかね~ww?」
「ところで、話が変わるんですが、今日は星浜市では朝から雨が降ってるんで鬱陶しいように思えるんですが、ただ一つの『あること』は楽しみでしたね?」
豊田「そのただ一つの『楽しみ』って?」
山崎「wwか・・か『傘』でしょうか?」
豊田「『雨の日』、『2人で』、『傘』・・・wwwはい。相合傘!」
山崎「はい、そうですよね~ww」
そうこう会話しているうちに2人が注文したものがテーブルに届いた。今回は2人とも同じものを注文したので届くタイミングにズレがなかった。
食べながら
豊田「さっきも乗ってた快速の中で乗る前に駅のコンビニで買った軽く食べられるものを食べたけども、あれだけではちょっと足りなかったし、何よりも快速の終点までやってきたんだから何かおいしい発見でもしてさらに食べてもいいよね~ww」
「もうあとちょっとで2時近くだけど、遠くまでやってきたからにはおいしいものを食べていかないとねww」
山崎「そうですよ。ただ単に電車に乗ってるだけだと電車賃が消えていくだけですから、ぜひとも終点の駅とか途中の駅で改札を出て駅の周辺を探索してもいいものなんですよ」
「ここ、七日浜は駅に降り立った時から潮の香りが漂ってきて、どうやら『海に近い街』のようですね?こうやってこの街の港で穫れた新鮮な魚を料理して出してるんですから」
豊田「はい、そうですよね~ww」
「ところで、このお魚、何っていうお魚でしょうかね~?」
豊田は注文した料理に使われている魚のことが気になって店員を呼んだ。
豊田「今、注文した『旬のお刺身とキムチの和え物』に使われてるお魚は何でしょうか?」
可愛い女性店員「今の季節は鰆が旬ですのでこのキムチの和え物に使ってるお魚は鰆ともう一つ、鯵ですね」
豊田「そうですか~。どうもありがとうございました」
山崎「『サワラ』って漢字で書くと『魚片に春』って書きますからね~wwwつまり『サワラ』は春が一番の旬なんですよ」
豊田「なるほどね~。生のお刺身とキムチを和えてもすっごくおいしいわ~」
「ドリンクのスイートグリーンティーも冷たくておいしいわ~」
そこへイケメンな店員がやってきてこう話してきた。
イケメン店員「このお姉さんが飲んでる『スイートグリーンティー』は普通の緑茶に砂糖を加えて甘くしたものなんですよ」
豊田「そうなんだ~。でも、緑茶を砂糖やシロップで甘くしてもイケるわね~ww」
イケメン店員「それはそれは。どうもありがとうございます。可愛いお姉さん。またこのお店に向かいに座られてるお兄さんと一緒に来てくださいね」
豊田「私のことを『可愛いお姉さん』と仰っていただけてとても私、嬉しいです」
山崎「私もまた時間を見つけてこのお店にまた来たいです」
「『スイートグリーンティー』私もこれはおいしいですよww普通の緑茶を砂糖で甘くしてもおいしいですよね」
食べ終わり、会計をして店を出たのが14時40分頃。店を出たら2人はまた駅へ向けて歩き出した。駅までは歩いて10分もかからない距離だ。駅に着いてからそのまま来た列車で星浜市まで戻るのももったいないこと。ここは「行き当たりばったりの旅」なのだから時間が許す限りはいろいろな列車にも乗ってみたいものだ。
2人が七日浜の駅に戻り、駅舎内にある改札口を通って一番手前側のホームの中ほどにちょこんと2両編成のワンマン運転の列車が止まっている。2人はこのワンマン列車が気になって乗ってみることにした。このワンマン列車の七日浜駅の発車時刻は15時26分。2人が駅に着いたのはまだ14時50分頃だったからこのワンマン列車の発車時刻まではまだ約35分もある。でも、この時間を利用してこの列車に乗っている途中に、口寂しくなってきた時に口にできるものを調達したり、スマホでこの列車のことについてを調べることができる。
山崎「改札入ってすぐのところに何やらのどかな雰囲気の2両編成の電車がいますね?ちょっと乗ってみませんか?」
豊田「はい、いいですよ。乗りましょう」
「でも、この2両編成の電車、発車時間が3時26分だからまだ時間まで十分に時間があるよ。ちょっと乗ってって口寂しくなってきた時に食べられるものでもコンビニで買ってきましょうか?」
山崎「はい。まだ3時ですからね。発車まではまだ20分以上もあるから」
2人は駅の改札内にあるコンビニに軽くつまめるものを買いに行った。山崎は500mlサイズのペットボトル飲料2本と板チョコ2枚、ガムを1箱を、豊田はやはり500mlサイズのペットボトル飲料2本とポケットサイズの大きさのクッキーを2個をそれぞれ買った。
コンビニで軽くつまめるものを買ったら2人はワンマン列車に乗り込んだ。このワンマン列車は七日浜などの始発・終着駅や途中の駅員がいる駅では列車の全部のドアが開くが、それ以外の無人駅では先頭車両の前よりのドアからしか降りることができない。乗り方としては整理券方式の路線バスなどと同様である。車両はEV-N40系と称する2050年の水準での亜幹線向けの車両では当たり前となっている「電化区間走行時は直接架線からの電力で走行しつつ、ブレーキ時に電力回生ブレーキで発生した電力を利用して車両の床下に取り付けられているバッテリーへの充電も行い、電化されている駅構内ではパンタグラフを上げてバッテリーに充電をして走行」する、いわゆる「蓄電池電車」と呼ばれるもので「蓄電池電車」が開発された当時と比べたら技術の進歩により、よりバッテリーの小型化と長時間の耐久性に優れるようになり長時間にわたって架線からのバッテリーへの充電を行わなくても長距離を走行可能なよう性能が向上している。車体は軽量なステンレス製の片側3ドアでローカル線を走行することを想定し、かつ長距離運用に伴う長時間乗車に備えて室内はドア間に2ボックスずつのボックスシートとロングシートを併用した「セミクロスシート」で車イスでも使用可能なトイレもある。




