表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い箱の少女はあなたを待つ  作者: 博多っ子
PR
19/19

最終話《黒い箱の少女はあなたを待っていました》

 月は八月になってしまった。白雪がこの世から消えてしまい俺は仕事を休ませてもらっている。俺の暗い顔を見た住職さんは『何かあったら力になるから』と言ってそれ以上は何も言わなかった。


 小屋の近くを流れている小川、その側に白雪のお墓がある。お墓といっても立派な墓ではない。箱娘が握りしめていた白雪の白い砂を瓶にいれ、地中に埋めている。簡易的な墓石は小川の石。白雪が持っていた白い傘は地面に立てている。


 箱娘は残りの白い砂を小さい瓶にいれ、常に持ち歩いていた。


「また、ここにいるのか」

「うん。ここにいないと、白雪が一人になっちゃうから」


 白雪の墓の前にずっといる箱娘。


 あれから箱娘が笑っている姿を一回も見ていない。


 その顔はいつも悲しく。

 その顔はいつも寂しく。

 その顔はいつも暗い顔をしていた。


 俺は、白雪ちゃんとは七月の期間に少し出会っただけだが、箱娘は妹を失ったんだ。


 その辛さは痛いほど分かる。


 俺は箱娘にかける言葉が見つからない。


「ねえ、中原」

「どうした?」

「白雪が死んだ時、私は思い出したの」


 最近、あまり口を開かなかった箱娘が静かに話はじめた。


「私は過去に人をたくさん殺したの」

「……」


 俺は黙ってその話に耳を傾ける。


「人ではなく人形として生まれた私達は人々に迫害され、暴力をうけ、精神が壊れそうだった。そして、私はその行為に限界を感じ、我を忘れて人を殺してしまった。でも、気がついたら中原が目の前にいたの」

「あの時、押し入れで会ったのが出会いだったな」

「『人々を殺した』という記憶がなくなっていた。でも、それは白雪が私の為に記憶を消してくれたと気がついたよ。白雪は全部自分で重荷を背負っていたんだ」

「白雪ちゃんは箱娘の事が大好きだったんだな」


 箱娘は白雪の墓を悲しく見つめている。暖かい夏の風が箱娘の髪を撫で下ろす。


「私は……バカな姉だ。白雪に……何もしていない。私だけが生きている、私だけが忘れている、私だけが……最低だ……」


 箱娘の目から涙が溢れてくる。


 俺はそんな箱娘の顔を見たくなかった。なぜなら、白雪はそれを望んではいないと思ったからだ。


「笑えよ箱娘。泣いてると白雪ちゃんも安心して天国に行けないぞ。白雪ちゃんをもう悲しませるなよ」


 俺のその言葉に箱娘は泣きながら、少し笑った。


「ふふ、中原に会えて……本当によかったです」


 やっと笑った。俺と白雪はその顔が見たかったんだよ。


「お!やっぱり笑ってる顔のほうが何倍も可愛いぜ!」

「ふふふふ。本当?じゃあ私、笑うよ」

「ああ、いっぱい笑って、いっぱい怒って、時にはいっぱい泣け」

「む―――、中原は注文が多いな」


 箱娘は少し照れながら俺に歩み寄ってきた。

 その顔は……もう大丈夫な顔になっている。


「ねえ、中原」


 俺を見上げながら満面な笑顔で箱娘は言った。


「こんな私だけど、中原の隣にいていいですか?」


 何をいまさら言ってるんだ?

 そんなの答えは決まってるだろ!


「当たり前だ。俺も箱娘の隣にずっといるからな。途中でいなくなったりするんじゃねーぞ」


 その答えを聞いた箱娘は俺にゆっくりと抱きついてくる。


 それは……満面な笑みで。

 それは……喜びの顔で。

 それは……とっても、幸せな表情で。


「白雪。これからも私達はここにいるからね。一人じゃないから、一緒に笑っていこう」


 俺と箱娘は一緒に空を見上げた。


 木々が風で揺れる音。

 近くの小川が流れる音。


 それは……とっても美しい音色のよう。


 この音を白雪も空から聞いてごらん。


 きっと、いつでも笑ってられるから。



「気持ちいいね中原」

「そうだな。よし、家に戻るか」

「うん。あ、そうだ。これだけ中原に言っておきたいんだ」


 そう言うと、箱娘はクルリと回転しながら俺を見た。


「黒い箱の少女はあなたを待っていました」


 そう言うと箱娘は、また俺に抱きついてきた。


 ―――


 ――


 ―


 そう、これはたった少しの夏の間に出会った……二人の少女の物語でした。


 私は中原と会えて幸せです。


 こんなにも心が落ち着くなんて。

 こんなにも心が安らぐなんて。

 こんなにも心が救われるなんて。


 ねえ、白雪。今度もし、会う時があるのだとしたら、私はあなたの幸せを願います。


 いっぱい笑いましょう。いっぱい泣きましょう。いっぱい怒りましょう。


 そうやって、一緒に遊ぶことが私の最後の願いです。








『黒い箱の少女はあなたを待つ』終



挿絵(By みてみん)




『黒い箱の少女はあなたを待つ』完結しました。


まだまだ、書きたいことはあったんですが、これで一応、最終話です。


もしかしたら、続編を書くかもしれないのでその時は暇潰しに見て下さいね!


では、読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ