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企画回:カメラ目線で死ぬやつ


C-7区画は、最初から人を下に落とす気で作られていた。


横穴と聞いていた。だから平たい通路を想像した。違った。縦にも横にも歪んだ空間だった。坑道の途中を無理やり削って広げたような、用途不明の広さ。右は壁。左は段差。段差の下に、さらに段差。落ちたら骨が折れる。折れたまま、誰にも見えない底で動けなくなる。そういう高さだった。即死のほうがまだ優しい。


天井は低い。反射鉱石は少ない。代わりに、壁面に古い金属の足場が打ち込まれている。錆びてはいない。でも信用もできない。踏むと鳴る。鳴る床に命を預ける気にはなれない。


靴底のゴムに、岩肌の粉がまとわりつく。滑るんじゃない。噛み合わない。踏んだ感触が一拍遅れて返ってくる。自分の足が自分のものじゃないみたいだ。


白石が昨日言っていた。足場が悪い、と。


正しかった。正しすぎて、腹が立つくらいだった。


配信の待機画面が、もう開いている。画面の隅に企画用の投票枠。その下をコメントが流れ始める。


『来た』

『神カメラ検証回』

『死ぬなよ』

『死なせる気満々のタイトルやめろ』

『労災申請フォーム、投票所の隣に置いとけ』


笑っている。笑っているけど本気だ。画面の向こうの人間は、本気で見たがっている。見たいから押す。押した先で何が起きるかは、こっちが引き受ける。いつもそうだ。いつだってそうだった。


白石が振り返らずに言う。


「始まるぞ」


ミラが短く返す。


「ええ」


俺はカメラを握り直した。右肩がまだ鳴っている。前腕の縫い目が、心臓と同じリズムで脈を打っている。昨日より痛くない。痛くないんじゃない。昨日ほど驚かなくなっただけだ。痛みに驚かなくなることが、怖い。驚いているうちはまだ正常だった。正常が一枚ずつ剥がれていく感覚を、誰にも言えないまま飲み込んでいる。


---


配信が開いた。


ミラの背中を正面フレームに入れる。C-7の入口。低い天井。狭い足場。下に続く黒い段差。画面は暗いが、鉱層ほど不愉快じゃない。補助灯を弱く当てる。硬い光にならないように、角度だけを少しずらした。鉱層で覚えた。あのとき腕が痺れるまで角度を変え続けたことが、今ここで手が迷わない理由になっている。経験が体に残るのは、痛みだけじゃない。


コメントが一気に流れ出す。


『うわ狭っ』

『これ絶対落ちるやつ』

『天井低いな』

『ミラ様いつもより近い』

『カメラマンの距離感こわい』


画面の右下に、最初の投票が出た。


『最初の画角を選んでください』

『足場下から見上げ/壁際の追尾/中央固定』


数字がリアルタイムで伸びていく。見上げ。追尾。固定。三つの選択肢が視聴者の指で揺れている。


白石が組み直した三択だ。本当に死ぬやつは最初から消してある。それでも、残った三つは全部嫌だった。どれを選んでも、何かを差し出さなきゃいけない。安全か、画か、体力か。全部は手に入らない。


《空間把握》を薄く開く。


足場の揺れ。壁の凹み。古い金属プレートの反り。――そして、壁面の隙間に、いた。


灰色の細い影。壁に溶けているような小型の寄生型。岩の色と外殻の色がほとんど同じで、目で見ても分からない。《空間把握》の白い線だけが、生き物の輪郭をなぞっていた。軽い。速い。人間じゃなく、まず機材へ飛ぶタイプ。光るもの。揺れるもの。記録するもの。そういうものを最初に壊しに来る。


カメラを持つ手が、無意識に強くなった。


「中央固定」


口から出ていた。考えてから言ったんじゃない。体が選んでいた。追尾だとカメラに寄られる。見上げは上から落ちてくる。固定で位置を割ってからのほうがいい。理屈は後から来た。


白石が横目で俺を見た。目だけが動いた。体は動かなかった。この人はいつもそうだ。必要な部分だけを動かす。


「理由」


一語。それだけで十分だった。


「動いた瞬間、追尾だとカメラに来ます。見上げは頭上から。固定で一回受けてからのほうが、次が見えます」


ミラは前を向いたままだった。振り返らない。でも、右肩がわずかに落ちた。聞いている。聞いた上で、自分の構えを微調整している。言葉じゃなく体で返事をする人だった。


「なら、それでいく」


投票の数字が止まる前に、運営側が表示を切り替えた。中央固定で確定。コメントがざわつく。


『え、投票負けた?』

『固定なんだ』

『現場判断か』

『まあ死ぬよりはいい』


壁の隙間が裂けた。


一体目が飛んだ。


細い。灰色。前足の爪だけが妙に長い。羽根はないのに、壁を蹴って跳ぶ。跳んでいるんじゃない。弾かれている。壁から壁へ、人間が嫌がる場所だけを正確に選んで飛んでくる。顔の横。カメラの前。レンズの真上。全部が急所だった。


俺はカメラを固定したまま、体だけを半歩下げた。


「右下」


ミラが動く。剣が走る。灰色の殻が割れて、黒い液が足場の下に落ちた。速い。見えてから斬るまでが短すぎて、間に何も挟まらない。


コメントが跳ねた。


『今の早っ』

『指示した? カメラマン声出したよな』

『え、戦ってる?』


白石が低く言う。


「続けろ」


その声が背中に入った。押されたんじゃない。支えられた。


---


最初の区画を抜けるまでに、寄生型は群れで来た。


強くはない。一体ずつなら、ミラの剣で一閃だ。でも、こいつらは人間を殺しに来ていない。カメラを殺しに来ている。


レンズに向かって飛ぶ。補助灯に向かって集まる。ストラップに爪を引っかけようとする。人間の顔には目もくれない。光るもの、揺れるもの、記録するものから順に壊す。


配信の敵として、これ以上なく正確に嫌だった。


投票枠が二回目を出す。


『次の画角を選んでください』

『低所寄り/壁際追尾/上段固定』


数字が走る。コメントが煽る。


『低所いけ低所』

『追尾見たい』

『固定は飽きる』

『でも死ぬな』

『死なない範囲で死ぬ画を出せ』


無茶を、きれいな言葉で言うな。


《空間把握》が、次の足場をなぞる。上段固定は安全だ。安全だが、敵の跳び先とミラの着地点が重ならない。画が死ぬ。低所寄りは危険だ。危険だが、今の壁配置なら少しだけ猶予がある。壁際追尾は論外。寄生型の巣の真横を擦る。


「低所寄り」


白石が聞く。


「持つか」


「短いです。でも撮れます」


「根拠は」


「壁の配置。ミラの進路。あと――勘です」


白石の眉が、ほんの少しだけ動いた。呆れたのか、面白がったのか。どっちでもいい。答えは変わらない。


ミラが言う。


「やるわよ」


その声に迷いがなかった。迷いがないことが、逆に怖い。この人はいつも、俺が怖がっているものの真ん中に立つ。そして、そこが当然だという顔をする。


投票結果は低所寄りで決まった。視聴者の希望と現場の判断が、珍しく一致した。一致したことが逆に不安だった。望まれている方向に自分が行くとき、それが正しいのか流されているのか、区別がつかなくなる。


俺は足場を一段下げた。


低い。ミラの膝下と、足場の先と、その向こうの暗い落差が同じフレームに入る。下から寄る。距離を詰める。でも詰めすぎない。白石に言われた三歩を、頭の中で何度も測り直す。毎秒変わる。毎秒選べと言われた。その言葉が、足の裏に貼りついている。


ミラが前に出る。


寄生型が二体、壁から同時に離れた。右。左上。


「上、二」


声が出る。短く。それだけでミラの体が反応する。言葉が届いてから動くんじゃない。声の方向で、もう体が切り替わっている。


ミラが一体目を斬る。二体目は避けない。足場を蹴って、逆に寄った。刃の白い軌跡が、狭い空間の中で一度だけ膨らむ。


寄生型の殻が、俺のレンズのすぐ脇を通って落ちた。


近い。近すぎる。黒い液の飛沫が、頬をかすめた。温かくはない。冷たくもない。ただ、生き物の中身が顔に触れたという事実だけが残った。


でも画は生きている。ミラの足場。飛び出した敵。斬る瞬間。全部が一枚に入っている。


コメント欄が壊れた。


『うわっ』

『近い近い近い近い』

『今のやば』

『足場込みで見えるの良すぎ』

『カメラマンどこに立ってんだよ』


どこに立っているか。


安全な場所じゃない。死ぬ場所でもない。画が生きて、まだ帰れる場所。その一点を毎秒探している。正解はない。正解がないまま、不正解を一つずつ避け続ける。それが今の俺のやり方だった。


---


三回目の投票で、視聴者が一斉に壁際追尾を押した。


『追尾見たい』

『壁沿いのスピード感ほしい』

『固定は分かった 次行こう』

『神カメラならいけるだろ』


いけるだろ。


画面の向こうから言うのは簡単だ。壁際は寄生型の巣の真横だ。追尾は足場を自分から捨てる動きに近い。「いける」と「死なない」の間には、誰にも見えない溝がある。


《空間把握》を開いた。壁面の空洞。寄生型の密度。足場のたわみ。ミラの次の進路。全部を重ねて、一つだけ道を探す。


できる。ただし、そのままでは無理だ。


俺は黙って、壁から二歩外れた位置へ動いた。


レンズの角度を下げる。壁のすぐ脇を走っているように見える。実際には、寄生型の跳び先からわずかに外れている。画面では壁際。現実では二歩外。その差を、視聴者は気づかない。


白石が俺の足元を見た。それから壁を見た。そして、レンズの角度を見た。


三つを見て、全部を理解した顔だった。


「……採用」


投票枠の表示が切り替わる。


『壁際追尾(安全補正)』


コメントが荒れた。


『安全補正って何だよ』

『運営びびった?』

『むしろ正直で好感ある』

『死なない範囲で盛れ』


盛る。


この言葉が、最近少しだけ分かってきた。派手にすることじゃない。危険の見せ方を選ぶことだ。全部を見せる必要はない。見せる部分と隠す部分を決めること。その選択自体が、画を作るということだった。


ミラが走る。


狭い足場。低い天井。壁を這う灰色の影。追う。でも追いすぎない。ミラの背中を真正面に据えず、肩越しに少し残す。次に何が来るか分かるぶんの余白を、画面の右端に残す。


寄生型が飛んだ。


「前、低い」


ミラが沈む。爪が頭上を抜ける。髪が一筋だけ揺れた。剣が下から上へ走る。灰色の殻が、白い軌跡の中で割れた。


その瞬間、コメントが止まった。


止まって――一拍のあとに、爆発する。


『えっ』

『今の何』

『しゃがませた?』

『カメラマン普通に戦闘してるだろ』

『#戦況カメラ』


戦況カメラ。


知らない言葉だった。でも意味は分かった。近いからすごいんじゃない。何が起きたかが分かるから、目が離せない。そういう画のことを、画面の向こうの人間がそう名付けた。俺が名乗ったんじゃない。向こうが決めた。名前は、いつも向こうから来る。


---


C-7の中腹で、本当に危ない場面があった。


足場の金属プレートが、ミラの着地で鳴った。嫌な音。高くて、短くて、続きがない音。何かが限界を超えたときだけ出す音だった。


《空間把握》が白い線を引いた。プレートの歪み。支柱の角度。次の一歩の荷重。全部が赤く点滅していた。


「止ま――」


最後まで言えなかった。


プレートが外れた。


ミラの右足が沈む。体が左へ流れる。黒いジャケットの裾が広がって、その下に暗い空間が口を開けていた。落ちたら、骨が折れる。折れたまま暗闇の底で、上を見上げることになる。助けが来るまでの時間を、痛みと一緒に数えることになる。


カメラが先に動いた。


考える前に。判断する前に。白石に言われた「見てから撮れ」を裏切る速さで、体がフレームを決めていた。


俺は寄らなかった。引いた。


ミラの体。外れた足場。横に残っている鎖。下の段差。全部を一枚に入れた。一枚で全部が分かる画。何が起きて、何が残っていて、何をすれば助かるか。それが見える画。


「左、鎖」


声と同時に、ミラの左手が鎖を掴んだ。体が半回転する。遠心力で髪が広がる。右手の剣が壁に刺さった。火花が散って、金属の悲鳴が通路に響いた。


止まった。


鎖と剣で、空中に釘付けになったミラが、暗い段差の上でぶら下がっている。呼吸が一つ。二つ。三つ目で、ミラの足がプレートの残骸に触れた。


コメント欄が、さっきまでと全く違う速さで流れた。


『うわああああ』

『今ガチで危なかっただろ』

『引いたの正解すぎる』

『全部見えた 状況分かった』

『これが戦況カメラか……』


白石が、初めて口角を動かした。笑ったんじゃない。認めた顔だった。


「今のはいい引きだ」


褒められている。そう気づくまでに一拍かかった。体はまだ震えていた。膝の裏が冷たかった。ミラが落ちていたら、という映像が、まだ頭の裏で再生されていた。落ちなかった。落ちなかったのに、落ちた世界線の映像がファインダーの奥にこびりついて消えない。


ミラが鎖を掴んだまま、こちらを見た。


「助かった」


短い。息の隙間に入り込むような声量だった。幻だと思ってもおかしくない。でも確かに聞こえた。


心臓が変な打ち方をした。喉の奥まで上がってきて、そこで止まった。カメラを落としそうになった。指が白くなるまで握り直した。


白石がぼそっと言う。


「今ので調子に乗るな」


「乗ってないです」


「顔が乗ってる」


顔に出るな。深層でミラに言われたことと同じだった。嬉しさも恐怖も、全部が画面のノイズになる。カメラマンの顔は映らない。映らないくせに、ファインダー越しの画に滲む。感情がレンズを歪ませる。


---


終盤は、投票が静かになった。


視聴者も変わっていた。序盤の「やらせてみたい」が消えて、「見届けたい」に変わっている。コメントの文体が違う。煽りが減って、祈りに近い言葉が混じり始めている。


『固定でいい』

『状況が見えるやつ』

『無茶させるな』

『でも寄れるなら寄って』

『無茶させるな でも寄って』


矛盾している。矛盾しているまま、画面を閉じない。その矛盾を切り捨てるんじゃなく、そのまま扱うのが現場だと、少しだけ分かった。白石は最初からそれをやっていた。選択肢を三つに絞ること。死ぬやつを消して、痛いやつだけを残すこと。その線引きを、毎回引き直すこと。


最後の小部屋。寄生型の巣が天井に密集していた。数は多い。でも動線は単純だ。


白石が小さく言う。


「どこで締める」


俺は小部屋を見た。


ミラの位置。巣の配置。足場の高さ。コメントの温度。次の編集点までの距離。全部を重ねる。重ねた上に、一つだけ答えを置く。


「斜め下です」


白石が目だけで問う。


「正面が一番派手です。でも正面だと敵が重なって、数が消える。斜め下なら敵の数が見えて、その中をミラが前に出るのが分かります」


何が起きたかが分かる画。戦況カメラ。さっき画面の向こうが名付けた言葉を、今度は自分の足で実行する。


白石が頷いた。一回だけ。それで十分だった。


俺は斜め下へ入った。危険域の一歩手前。画が生きて、まだ帰れる位置。その一点。


ミラが剣を抜いた。


白い冷気が走る。低い天井。灰色の群れ。巣が一斉に裂けた。


寄生型が落ちる。飛ぶ。跳ねる。灰色の雨みたいに降ってくる。数がフレームに乗る。一匹ずつは小さい。でも重なると、天井が生き物になったみたいに見える。


「右上。下、来る」


ミラが斬る。避ける。踏む。また斬る。


俺は引かない。寄らない。斜め下で固定したまま、ミラの動線だけを追う。敵が減っていく。ミラが前に出ていく。剣の白い軌跡が、灰色の群れを切り拓いている。


最後の一体が、ミラの真上から落ちた。


「上」


一語。


ミラの剣が逆手に返る。天井すれすれ。白い軌跡が短く光った。灰色の殻が割れて、黒が落ちる。ミラの頬を黒い飛沫がかすめた。ミラは拭わなかった。


終わった。


静寂が一瞬だけ空間を満たした。天井から落ちてくるものが、もうない。灰色の殻の破片だけが、足場の上で転がる乾いた音を立てている。


コメント欄が決壊した。


『やば』

『神』

『映画だろこれ』

『斜め下固定で正解だわ 全部見えた』

『#戦況カメラ』


ミラが剣を払った。黒い液が足場に線を描く。呼吸は乱れていない。でも、右肩がほんの少しだけ上下していた。配信だと見えない。ファインダー越しでようやく分かる程度。


俺はそこを撮らなかった。


カメラを半歩下げて、足場と、砕けた殻の残骸を映した。


理由は分からない。判断じゃなかった。画の都合でもなかった。ただ――あの呼吸は、ミラのものだった。画面の向こうに渡していいものじゃなかった。


ミラが気づいたかどうかは分からない。ただ、次に歩き出すとき、半拍だけ遅れた。その半拍の中に何があったのか、俺にはまだ分からない。カメラを持っているのに、分からないことがある。分からないまま、撮り続けることがある。


---


帰り道。C-7の出口近く。


白石がクリップボードを閉じた。パチン、と硬い音が通路に響いた。


「企画としては合格」


それだけ言って、少し間を置く。


「お前はまだ甘いが」


甘い。そうだろう。白石にとっては全部が甘い。予測で撮ったことも、声を出しすぎたことも、調子に乗った顔も。全部見えている。全部分かっている。その上で――


「甘いなりに、死なない線を見てる」


その言葉が、胸の中の変なところに落ちた。褒められたのか、釘を刺されたのか、分からない場所。嬉しいとも苦しいとも違う場所。ただ重くて、動かなかった。


ミラが前を向いたまま言う。


「調子に乗るな」


来た。


でもその声は、いつもの切断じゃなかった。刃の先が丸い。続きがある声だった。


「……明日から訓練」


足が止まった。


「寄る。逃げない。落ちない。全部やるわよ」


訓練。コメント欄じゃない。スポンサーでもない。運営の企画でもない。ミラが、俺に向けて言っている。俺個人に。


最悪だった。


最悪なのに、胸の奥で何かが鳴った。嬉しさじゃない。覚悟が固まる直前の音だった。


白石がモニターを一瞥した。


『#カメラマン誰』


タグが、まだ増えている。


白石が鼻で笑った。


「面倒になるな」


本当にそう思った。画面の向こうの人間が、裏方の輪郭を見始めている。名前のないままじゃ、いられなくなる。佐久間透という名前が、画面の向こうに引きずり出される日が来る。そう遠くない。


C-7の暗い出口の先に、白い光が見えていた。朝よりも強い光。時間が進んでいる。地下にいる間に、地上は勝手に動いていた。


俺はカメラを持ち直した。右肩が鳴る。前腕の縫い目が脈を打つ。でも手は離さない。


明日から訓練。つまり今日までは、まだ企画だった。


本番は、これからだ。


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