最終話:終わらなかった物語、そして君と描く“本当のエンディング”
リリアーナの魔力が静かに収束していく。
闇色だった羽根は光に溶け、空へと舞った。
「……終わった、の?」
彼女が小さくつぶやく。
その声に、私はそっと頷いた。
「ええ。あなたは、“堕天の契約者”にならなかった。
この世界の“役割”に飲まれることを、自分の意思で拒んだのよ」
ゼインが一歩、私たちに近づいた。
「ループは、もう終了する。“物語の強制力”が解除された。
これでもう、誰も“定められた役”を演じなくていい」
空がゆっくりと染まっていく。
この世界そのものが、変わろうとしていた。
──数日後、王国は“シナリオ”から解放された。
リリアーナは特別扱いされることなく、
一人の生徒として穏やかに暮らし始めた。
セシル王子も、王族の責任ではなく“自分の進みたい道”を模索し始めた。
ラズは魔族との懸け橋として、正式に宮廷に迎えられた。
そしてゼインは、管理者としての記憶を失い、ただの生徒として過ごしている。
「ねえ、エリシア」
放課後の庭園で、リリアーナが紅茶を片手に笑った。
「今の私は、もう“ヒロイン”じゃないかもしれないわ」
「ううん、違うわ。あなたは“自分の物語の主人公”よ」
「……じゃあ、あなたは?」
「私は、あなたの隣で“物語を紡ぐ”者。
この世界がどう変わっても、あなたの隣で、ちゃんと物語を続けていく」
リリアーナが微笑み、私の手を取る。
「ありがとう、クラリーチェ……じゃなくて、エリシア」
そして私は思う。
この世界はもう、乙女ゲームじゃない。
攻略対象も、ルートも、破滅フラグも存在しない。
代わりにあるのは、“誰かが選び取った未来”だけ。
なら、私はこの物語の続きを──
リリアーナと一緒に、書いていこう。
どんな未来も、どんな結末も、私たちの手で決められる。
だから──物語は、ここから始まる。
──Fin.
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
『乙女ゲーム世界の“裏設定”を全部知っています』は、
いわゆる“悪役令嬢もの”と“転生・ゲーム世界系”を掛け合わせ、
さらに裏設定・多重ループ・メタ構造などを盛り込んだ意欲作です。
本作で描きたかったのは、
「誰かに用意されたシナリオ」から抜け出し、
「自分の意思で“物語”を選ぶ強さ」。
クラリーチェ(エリシア)は、プレイヤーの知識を持ちつつも、
最後は“ヒロイン”と向き合い、共に結末を創っていく姿にこだわりました。
また、もし読者の皆さんがこの作品に共鳴していただけたなら──
私たちが生きる世界もまた、誰かに用意されたシナリオではなく、
“自分の選択”で書き変えていける、そう信じていただけたら嬉しいです。
また次の物語でも、皆様と出会えますように。
ありがとうございました!




