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第一話 結婚初日なのに、なんて酷いことを言うの⁉

「シャルロット、俺はこの結婚において君を愛することはない」


 結婚式をつつがなく終えた日の夜。


 寝室で、今から訪れるはずの初夜に緊張しきっていた私に、夫となったクロードは冷たく言い放った。


 さらさらとした金髪の下からのぞく緑色の目が、私を冷たく射る。


「クロード様……?」


 貴族同士の政略結婚だし、そりゃあラブラブな結婚生活になると信じ切っていた訳じゃない。


 だからと言って、結婚初日にこんなことを言い放つなんて、あんまりよ!


 クロードはフォントネル侯爵家の次男にして、王国騎士団の副団長。私は伯爵家の娘。


 どちらも独身を貫き通すには少し世間的が悪いとのことで、親が勝手にまとめた縁談だった。


 実家の親は婚約前にクロードの身辺を調査していたはずだが、そこに愛人の影など無かったはずだ。


 いや、調査の仕方が甘かったのか? 


 それか愛人がいるのではなく、私個人がとてつもなく気に入らないとか?


 クロードが何を考えているのかは全く分からない。


 一体どうして結婚初日にこんなことを言い出すのだろう。


「クロード様、わたくし達はまだお互いのことも良く知りません。結婚生活はこれからではありませんか。長い人生です。少しでも豊かな日々になるように、お互い手を取り合いませんか? 今すぐでなくとも、愛は少しずつ芽生えるかもしれません」


 我ながら大人な対応ができたと思う。


 しかしクロードは鼻でフンと笑った。


「親に決められた結婚でホイホイと嫁いできて、呑気なもんだな。どうせ君は今までロクに人を愛したこともないのだろう? 愛のない日々など、ただ苦痛なだけだ。わざわざ顔を合わせる必要もない。シャルロット、君は最低限の社交だけをこなしてくれればいい」


 んまー! 嫌な奴!


 親に言われてホイホイと結婚したのはアンタも一緒だろうが! と言いたい気持ちをぐっと押さえる。


 そして結婚式の間じゅう、綺麗な顔だなぁってクロードに見とれていた数時間前の自分を殴りたい。


 こんなにも嫌な奴だと知っていたら結婚なんかしなかったのに!


 王国騎士団の副団長クロード・フォントネルといえば、氷のように冷たい美男子として国内でも有名だった。


 どれだけ美しい令嬢が微笑みかけても、その美しい顔はニコリともしない。

 目さえ細めない。

 不愛想の極みであるが、一方でミステリアスな雰囲気もあってステキ。


 それが国内の令嬢たちの評価だった。


 きっと縁談だっていくつも舞い込んできていたに違いない。


 けれど家柄以外に特に取り柄のない私と結婚したのは、今後の結婚生活に文句を言わなさそうだと思ったからだろう。


 私の実家である伯爵家は、フォントネル侯爵家が管理する水路を使って事業を行っている。


 よって、もし侯爵家の機嫌を損ねて水路の使用を制限されれば、たちまち私の実家は行き詰まってしまうのだ。


 だから、私がこの結婚にどれだけ不満を抱き、どれだけ実家に訴えようとも、伯爵家がクロードに異議を申し立てることはない。


 彼もそれをよく分かっている。


「話はそれだけだ。俺は自室に帰る。明日からも夫婦として振舞うのは昼間だけだ。よく覚えておけ」


「あの、クロード様!」


 自室へと歩きだしていたクロードは、嫌そうな顔で振り返る。


「もしかして、他に愛する方がいらっしゃるのでは?」


「君には関係ないだろう」


 やっぱり愛人がいるのね!


 少し目が泳ぐクロードを見て、私は確信した。


「わたし、愛人の方とクロード様の仲を邪魔しようとは思いません! だから、せめて少しは夫婦らしく仲良くしましょうよ」


 最低限の社交だけを共にこなす夫婦だなんて、寂しすぎる。


 ラブラブじゃなくていい。


 せめて一緒にお茶をしたり、観劇をしたり、庭の散歩したり……そんな些細なことでいいから一緒にやりたい。


 こうなったら夜の夫婦生活はなくてもいい。


 跡継ぎが必要な家ではないし、子を成せなくても、まあいいだろう。

 

 ただ、自分の存在を否定され続けるような結婚生活はごめんだ。


「……俺に他に愛する人がいるかどうかは、君には関係ない。放っておいてくれ。君の実家の伯爵家に悪いようにはしないから」


 クロードはそう言い残すと、さっさと自室に帰ってしまった。


 だだっ広い夫婦の寝室にポツンと残された私は、ひとりベッドの上で肩を落とす他なかった。


 これからは毎晩この広いベッドで独り寝るのか……。


 ピンと張られたシーツが、必要以上に冷たく感じた。


 お前を愛することはないと宣言された結婚生活。きっと子を成すこともないであろう結婚生活。


 一体自分はなんのために嫁いできたのだろうと空しくなる。


 実家のため? クロードの世間体のため?


 私は自分自身の価値が分からなくなり、あやうく心を病むところだった。


 そう、心の支えになる趣味がなければ、きっと心を病んでいた。


 でも私には趣味がある。生きがいがある。


 ——よーし、今後の人生は趣味のボーイズラブ小説の執筆に励もうっと!


ブクマ、星を頂けると励みになります!


本日は第三話まで更新します!

明日以降は毎日17時10分更新です。

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― 新着の感想 ―
Xから来ました。 放っておいてくれ。 とか 伯爵家に悪いようにはしないから とかいうあたり、後ろめたさはあるんだなと思いました。 あらすじを読んでいるのでクロードの行動の理由はわかるのですが、 この…
Xから来ました。斬新なジャンルでスルスル読み進めてしまいます。面白いです!
Xから来ました!普段全く見ないジャンルなので、求めているような感想は書けませんけど、キャラが立っていて面白かったです! 連載頑張ってください!
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